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#3-2 開発・営業・顧客体験——AIでつながる三位一体のビジネス設計

2026.2.20

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今回も、インテントセールスSaaS「Sales Marker」を展開する株式会社Sales Marker 取締役CTOの陳さんにお越しいただきました!

前回に引き続き、Sales Markerが“なぜ速く作れて、なぜ使われる形に落ちるのか”を、開発と組織のリアルから深掘りしました!

※本記事は2025年5月29日の収録内容をもとに制作しています。そのため、現在の状況とは一部異なる場合があります。

◼︎ゲストプロフィール

陳晨(株式会社Sales Marker CTO)
アメリカワシントン大学セントルイス校修士課程終了後、LINE株式会社に新卒入社。全社横断ビッグデータプラットフォーム構築プロジェクトに従事後、日本マイクロソフトに転職し、AI&ビッグデータ部門にて世界中のお客様に対しシステム設計から開発、運用までシステム全般をサポート。その後株式会社スタンバイにてリアルタイム分析基盤の構築をリードする。テクノロジーの力で社会課題の解決に貢献すべく、株式会社Sales Marker(旧:CrossBorder株式会社)を共同創業し、CTOとしてインテントセールスSaaS「Sales Marker」開発のリードおよびグローバルエンジニア組織の立ち上げ・全体指揮を行う。

AIは“全職種の前提”——触っていないなら改善余地がある

——この5年で、働き方はどれくらい変わりましたか
生成AIがなかった時代と比べて、圧倒的に変わりました。今はAIに触らない日はありません。開発だけでなく、セールス、カスタマーサクセス、バックオフィスまで、AIを使えば効率化できる余地は必ずあると思っています。

——「AIは自分には関係ない」という反応もあります
正直、それは思考の怠惰だと思います。AIで代替できる作業は必ずあるので、まずはAIを使ってみてほしい。人員を求める前に、リーダーは「AIでどう効率化するか」「作業をどう代替するか」を考えるべきです。外部サービスを使うのも選択肢です。

——社内への浸透はトップダウンですか、ボトムアップですか
代表がAIを深く触るタイプで、経営陣も含めて新しい取り組みはNotionのデータベースに蓄積し、アップデートがSlackに流れるような状態です。結果として「絶対これを使え」と強く押すより、発信を見た社員が試して、使えそうだと広がっていった感覚です。

ツールは「会社が投資する」——全員が主要モデルと開発支援AIに触れられる状態へ

——具体的に、どんなツールやモデルを使っていますか
全員が少なくとも1〜2個はツールを使っていると思います。いまはCursorとDevinを全社的に使い、レビューではCodeRabbitも使っています。ChatGPTはもちろん、Gemini、Claudeなど主要モデルは全員が有料プランにアクセスできるようにしています。使いたいAIサービスがあれば「何でも言ってください、バジェットはある」というスタンスです。

——開発効率の体感はどれくらい上がりましたか
一定のスクリプトは、AIが8〜9割作ってくれる体感があります。依頼が来たらそのまま投げて、少し整えて走らせれば結果が出る。並列にいろいろ進められるようになりました。AIで代替できない仕事も多いですが、AIを使わなければ「ゼロだった開発」がAIの助けで簡単にできるようになり、時間を生み出してくれた感覚があります。

採用は「プログラマ」ではなく「エンジニア」——橋渡し力とコーチャブルさ

——AI時代、エンジニア採用はどう変わりますか
簡単なものはAIが代替できるので、「言われたものを作るだけ」のプログラマは採用しないと思います。重要なのは、ビジネスとの架け橋、お客様とのコミュニケーション、ユーザーのストーリーを理解して新しいストーリーを発見する力です。開発速度が上がるほど、そこが差分になります。

——ただ、日本ではそのタイプが少ないという課題もあります
採用はかなり難しいです。「できること」から入る提案は多いですが、課題・市場・ユーザーから逆算できないとズレます。ただ、ドメイン理解には数カ月のキャッチアップが必要なので、最初から完璧でなくても「コーチャブルかどうか」を重視します。面接では、興味を持てるか、思考習慣を変えられるかなどを見ています。

——組織はグローバルだと聞きました
エンジニア組織は60人未満で、日本人は5〜6人程度。26カ国ほどのメンバーがいて、日々のコミュニケーション、ミーティング、ドキュメンテーション、開発も含めて基本は英語です。

セールス×AIの核心は「相手を知る」——“意図セールス”とノーCRM構想

——セールス領域へのAIのインパクトをどう見ていますか
エンジニアリングと比べて、セールスは不確定要素が多い。人対人なので、AIでも完全には解消できない課題は残ります。ただ、一部は解決できて、その代表が「相手のことをより知る」ことです。

——具体的には何が可能になりますか
意図データやAIで、相手が何に困っているか、事業計画はどうか、興味関心は何かを調べずとも集約し、トークスクリプトやメッセージ案まで自動化できる。商談中も、相手の感情の変化や外部発信などの情報を踏まえ、会話をサポートできる可能性があります。

——一方で「作ったけど使われない」問題も起きがちです
機能があると良い、売れるはず、という押し売りでは使われません。業務フローを変えるのは痛みが大きいので、日常の流れにAIを溶け込ませ、「意識せずとも勝手に手助けしている」状態を作る必要があります。アーリーは入ってくれても、マジョリティは痛みが勝ちやすい。痛みなく変える設計が難しさであり面白さです。

——その先にあるのが“ノーCRM”構想ですか
従来のCRMは、箱(データベース構造)に人間が合わせて入力する前提でした。つまり、人間がシステムのために働いてしまう状態になりがちです。これからは逆に、システムが人間のために働く世界を作る。将来的にはUIが不要になり、Slackボットのような形になる可能性もある。人間中心で、AIやプロダクトが勝手に前に進めてくれる状態を目指しています。


今回の内容はポッドキャストでも配信しておりますので、詳細の内容を知りたい方はぜひ音声でもお聞きください!

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