今回は、架電業務を生成AIで完全自動化するサービス「nocall.ai」を提供するnocall株式会社の林さんをお迎えしました!
人手に依存していた時代から、AIが架電対応を担う時代へ。
nocall.aiの開発背景や架電領域に特化した理由、導入現場での活用実態を深掘りしながら、音声AIの進化と今後の事業戦略をどのように考えているかについても語っていただきました!
◼︎ゲストプロフィール
林 正悟氏(nocall株式会社 代表取締役CEO)
広島県福山市出身。大学から渡米し、卒業後、日本初全寮制小学生向けインターである神石インターナショナルスクールの設立に従事。その後、大型インター計7校の設立を支援。
2020年より同社を設立し、AI教育プラットフォームTomoCodeを運営。2023年に事業をピボットし、生成AI電話サービスnocall.aiを提供開始。
なぜ架電から始めたのか
——まず、nocall.aiがどのようなプロダクトなのか教えてください。
nocall.aiは、生成AIが人に電話をかける架電特化のサービスです。
相手の発話を理解し、返答するまでのレスポンスをできるだけ短くしながら、人間のように自然に話すことを重視しています。自然さや流暢さという点では、国内でもかなり高い水準まで持ってこられていると思います。
——電話の中でも、なぜ受電ではなく架電から始めたのでしょうか。
理由は大きく二つあります。
一つは、架電の方がAI主導で会話を進めやすいことです。例えば車検の案内のように、会話の分岐が比較的少ない業務では、AIが主導権を握れるので動作が安定しやすい。受電だと相手主導で質問が広がりやすく、ハルシネーションのリスクも高まります。
もう一つは、企業にとって導入理由を作りやすかったことです。
架電であれば、これまで十分にアプローチできていなかったリストに電話できるため、売上を増やす文脈で提案できます。単なる効率化ではなく、売上につながる可能性がある点は大きいと考えました。
——実際の導入現場でも、その仮説通りだったのでしょうか。
そこは少し違いました。
実際には「今まで触れていなかったリストにアプローチしたい」という理由で導入いただくケースは一部で、多くはすでに人が担っていた電話業務の置き換えでした。人手不足の中で、電話に割く人員を別業務に回したいというニーズが強く、結果として人件費との比較で導入されるケースが多いですね。
AIスタートアップは想像より早く伸びない
——事業を進める中で当初の想定とずれた点はありましたか。
正直、もっと早く伸びると思っていました。
海外ではAIスタートアップが非常に速いペースで成長しているように見えますし、自分たちもそういう軌道に乗れるのではないかと考えていた時期はありました。
——どこにギャップがあったのでしょうか。
日本では、特に大企業に導入してもらう場合、リーガルチェックやPoCがかなり重いんです。
しかも、うちのような電話領域は業務への組み込み方も含めて丁寧に見られるので、売上が立つまでには一定の時間がかかります。プロダクトが良ければすぐ伸びる、というほど単純ではありませんでした。
——それでも今の戦略を続ける理由はどこにありますか。
日本でやる以上、その現実は受け入れてやり切るしかないと思っています。
AIだから一気に何倍にも伸びるというより、足元の導入実績を積み上げることの方が重要です。特にBtoBでは、プロダクトの良さだけでなく、企業が安心して導入できる材料を増やしていく必要があります。
ホリゾンタルを目指しつつ、まずは業界を絞る──成長を加速させる実績の作り方
——今後の成長戦略について教えてください。
プロダクトのビジョンとしては、バーティカル(業界特化)よりもホリゾンタル(業界横断)でいきたいと考えています。
「ECサイトに決済を入れるならStripeを使う」という感覚で、「電話を組み込みたいならnocall.aiのAPIをつなげばよい」という状態を作りたい。そこが目指す姿です。
——一方で、現時点では人材・自動車・督促といった領域に絞っているように見えます。
事業成長のスピードを上げるには、やはり具体的な導入事例が必要です。
「この業界ではこう使われていて、人間と比べてこの数字が出ています」と示せると、同じ業界の企業に提案しやすくなります。業界を絞っているのは、ワークフローを狭めるためというより、事例の解像度を高めるためという意味合いが大きいです。
——バーティカルのプレイヤーが入り込む余地はどこにあるのでしょうか。
電話だけで業務が完結するわけではないのがポイントだと思います。
例えば督促回収であれば、メール、郵送、電話と複数の接点があり、それをどういう順序や頻度で回すかというロジックがあります。ホリゾンタルのプレイヤーがすべての業界についてそこまで深く作り込むのは難しいので、前後のワークフローまで含めて最適化するバーティカルの余地は残ると思っています。
差別化は永遠ではない──AIネイティブ企業が次に備えるべきこと
——今後の競争環境については、どのように見ていますか。
プロダクトそのものによる競争優位性は、今後かなり薄れていくという危機感があります。
今は商談の際に競合が出てきたとしてもプロダクトとしてはnocall.aiの方が高く評価していただけることが多いのですが、これはずっと続くものではないと思っています。LLMの進化で開発効率が上がっていて、かなり短期間で似たものを作れるようになっていくはずです。
——それでも、この一年はまだ勝負できるという感覚でしょうか。
今年いっぱいくらいは、まだ差を広げられると思っています。
うちはAIネイティブなチームなので、その進化を自分たちの開発にも掛け算できます。ただ、来年以降は別のゲームが始まる可能性が高い。その前提で、今のうちに次の差別化を仕込まなければいけないと考えています。
——この一年を振り返って、PMFに向けた学びはありましたか。
初期に「お金をもらうこと」にこだわりすぎたのは反省です。
もちろん、無料導入では本当の需要は見えにくいという考え方はあります。ただ、立ち上がりの段階では、それ以上に導入事例を作ることが大事でした。まず使ってもらい、人間とAIのROIを比較してもらい、効果を実感してもらう。その順番でよかったと思っています。
お金をいただくことよりも、忙しい現場で使ってもらい、検証してもらうこと自体に価値がありました。その上で成果が出たら課金する、という進め方の方が適していたと思います。
今回の内容はポッドキャストでも配信しておりますので、詳細の内容を知りたい方はぜひ音声でもお聞きください!



