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#17 AIネイティブ税理士事務所の挑戦——PMFは当たり前。「利益率」と「スケーラビリティ」をどう両立するか

2026.4.22

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今回は、AIネイティブな税理士事務所を展開する株式会社CFOneの代表の木村氏をお迎えしました!

従来は人手で回していた会計業務をプロダクト化し、低価格かつ高品質で提供する同社。その背景には、業務フローの再設計とデータ構造の見直しがある。
AI時代において、専門サービスはどのようにスケールするのかを探っていきたいと思います!

◼︎ゲストプロフィール

木村 優太氏(株式会社CFOne 代表取締役CEO)

1995年生まれ。大学卒業のタイミングで「雇われたくない」という思いから起業を志す。大学院進学を選択し、25歳で税理士試験に合格(20代税理士は全国のわずか0.6%)。クラウド会計ソフト『freee』導入実績全国1位の税理士事務所で実務経験を積み、「freee Master of the Year」を受賞。28歳で独立開業。2023年8月に株式会社CFOne(旧称:株式会社Taxsy)を創業。

税理士事務所をプロダクト化する——AIが担う業務の中核

——事業概要とサービスの特徴を教えてください
税理士×AIという領域で、従来は人手でスケールしていた税理士事務所を、プロダクトベースでスケールさせる事業を展開しています。ユーザーから見ると税務を丸ごと任せている感覚ですが、内部ではAIで効率化し、アウトプットとして価値を提供しています。

——AIは具体的にどの業務に効いているのでしょうか?
主に文章理解です。顧客の情報や税法の条文など、難解な内容を読み解き、誰でも理解できる形に変換できます。また、記帳や税務相談もルールを組み込めば正確に処理できるため、人手に依存せず大量処理が可能です。

——記帳業務はなぜ難しいのでしょうか?
単に会計ソフトに入力するだけではなく、税務ルールに沿った処理が必要です。例えば10万円以上の支出を資産計上するか費用処理するかなど、専門知識がないと判断できない領域が多く、経験者との差が出やすい業務です。

——その知識はどのようにAIに反映しているのですか?
過去に自分たちで運用していた税理士事務所の業務フローをベースに、AIが理解できる形に再設計してプロダクトに組み込んでいます。単なるルール移植ではなく、エンジニアが構造化して最適化しています。

差別化は「体験全体」にある——単なる自動化ではない価値

——ルール化できるなら参入障壁は低いのでは?
単にルールを学習させるだけでは不十分で、どこまでAIに任せ、どこを人が判断するかの設計が重要です。このチューニングは実務経験がないと難しい領域です。

——AIを使いこなす既存税理士との差はどこにありますか?
記帳単体では大きな差は出ません。税務は年間を通じた対応やリマインドなどが重要で、顧客ごとに異なる手続きを漏れなく管理する必要があります。ここはドメイン知識がないと設計できません。

——AIネイティブである強みはどこにありますか?
価格と品質の両立です。人手中心のサービスが30万円かかるところを10万円で提供できる可能性があります。また、情報の蓄積や引き継ぎもAIの方が正確で、継続的なサービス品質を担保できます。

——既存事務所が後からAIを導入するのは難しいのでしょうか?
部分的な導入では効果が薄く、業務フロー全体をAI前提で設計し直す必要があります。契約や組織、従業員の抵抗などもあり、ゼロベースでの再構築でないと大きなインパクトは出にくいです。

SMBにフォーカスする理由——価格と責任のミスマッチを解く

——ターゲット顧客はどこに設定していますか?
これまで税理士を高くて付けられなかった層や、自力で対応して不安を感じている層です。また既存顧客の中でも価格やサービスに不満がある人も対象です。

——なぜ大企業ではなくSMBなのでしょうか?
中小規模の税務はAIで効率化できる余地が大きい一方、大企業は複雑で人依存が強く、AIの効果が限定的です。また副業や法人化の増加で市場自体も拡大しています。

——なぜ税理士サービスはなぜ小規模事業者に割高になりがちですか?
作業量ではなく責任に対して価格が設定されているためです。小規模だと顧客に対して取る責任が相対的に小さいためする付加価値が小さい一方、作業は発生するため、価格を大きく下げにくい構造があります。

——AIはこの構造をどう変えますか?
作業を自動化しつつ、責任の担保も型化できることで、これまで採算が合わなかった層にもサービス提供が可能になります。結果として価格と価値のミスマッチを解消できます。

「PMFではなく利益率とスケール性」——AI時代の事業成長の指標

——手応えはどこに感じていますか?
需要自体は明確で、集客すれば高い成約率になります。ただ重要なのは、低価格でも利益が出る構造を作れるか、そしてスケーラブルかどうかです。

——スケーラビリティの兆しは見えていますか?
業務を細分化することで未経験者でも短期間で対応できるようになっています。実際に未経験者が1ヶ月以内に50件程度を処理できるようになりました。

——今後のKPIは何になりますか?
未経験者でどこまで回せるか、そしてAI化率をどれだけ高められるかです。従来のSaaSとは異なり、サービスとして業務を完結させること自体が重要になります。

——PMFの捉え方も変わるのでしょうか?
この領域ではPMFというより「サービスマーケットフィット」に近いです。需要は前提として存在し、いかに効率的かつ利益を保ちながら提供できるかが本質になります。


いかがでしたでしょうか?

今回の内容はポッドキャストでも配信しておりますので、詳細の内容を知りたい方はぜひ音声でもお聞きください!

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