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【生成AI起業のヒント #14】AI × マーケティング編

2024.8.17

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こんにちは!インターンの川野です!

「生成AI起業のヒント」では、ANOBAKAが注目している海外の生成AIスタートアップを取り上げて、生成AIの活用方法を分析・解説していきます。
生成AI領域で起業を考えられている方にとって事業のヒントとなれば幸いです。

第14弾となる今回は、マーケティング支援のノーコードツールを開発している今年1月に設立されたばかりのスタートアップ・Permar AIを紹介します!

1. 会社概要

・会社名:Permar AI
・設立:2023年
・本社所在地:アメリカ・サンフランシスコ
・最新調達ラウンド:Pre-Seed
・最新ラウンドでの調達額:12万5,000ドル
・主な株主:Launch Accelerator
・カテゴリー:マーケティング、SaaS
・公式ホームページ:www.permar.ai/

Permar AIは、2023年にMatteo Berchier氏とMatthias Strafinger氏の2人によって共同設立されたオーストリア発のスタートアップです。今年の5月には、アメリカのエンジェル投資家として有名なJason Calacanis氏が創設した14週間のアクセラレータープログラム・Launch Acceleratorに採択されました。Launch Acceleratorでは、各回7社のみがPre-Seedの資金調達を受けることができるのですが、第31回においてPermar AIはその7社に選ばれて初回の資金調達に成功しています。

Permar AIの事業ですが、D2CブランドなどのEコマース企業向けにランディングページを自動生成するAIツールを提供しています。複雑なコーディングやデザインの知識などは必要なく、対象の製品やサービスについてテキスト形式でプロンプトを入力するだけで良いので、フロントエンドエンジニアでもUIデザイナーでもないマーケティング担当者でも、簡単に高品質なランディングページを生成することができます。

もう1つPermar AIの大きな特徴となっているのが、ランディングページのコンバージョンレート最適化も自動で行う点です。

ランディングページは、Google検索やデジタル広告などからたどり着くユーザーが最初に目にするページで、訪れたユーザーに対してサービス登録や商品購入、デモ体験の申し込みなど特定の行動(コンバージョン)を意図して設計されています。そして、意図して設計したランディングページのパフォーマンスを測る指標として、ページを訪れたユーザーのうちどれくらいが意図した通りにコンバージョンしているのか(コンバージョンレート)が使われます。

ランディングページの訪問ユーザーは、能動的に検索したり、広告をクリックしたりして流入してくるため、ほとんどが既に自社のプロダクトやサービスに少なからず興味・関心を持っている層です。そのため、ランディングページにおける動線やレイアウト、UIデザイン、コンテンツの構成などを適切に設計することは、コンバージョンレートを高める効果的な施策となります。

最適な動線設計やコンテンツ構成を試すために、従来はフロントエンドエンジニアやSEOディレクターといった職種の人たちが、SEOに最適化されたブログ記事を投稿したり、A/Bテストを実施したりとコンバージョンレートを上げるために色々な工夫をしています。

Permar AIでは、コンバージョンレートを最適化するためにA/Bテストを自動で実行し、顧客にとってより魅力的かつトラフィックを促進するコピーや画像、セクションへランディングページを動的に適応させます。また、Google Search Consoleに接続されているため、リアルタイムでGoogle検索キーワードの表示回数や順位の推移を把握し、キーワードに基づいてブログ記事を自動生成・投稿もしてくれます。

SEO対策もバッチリ

2. 差別化戦略

Permar AIは、競合他社との差別化ポイントとして①D2CなどのEコマース企業に特化していること②コンバージョンレートの最適化に注力していることを掲げています。似たようなサービスのプロバイダーとしてUnbounceやLeadpages、Instapagesなどが存在しますが、どのプレーヤーもリードジェネレーション(見込み顧客の獲得)に重点を置いたテンプレートの生成を強みとしています。

リードジェネレーションに力を入れることでより多くの顧客にアプローチし、潜在顧客の母数を増やすことができるため、市場シェアの拡大やより長期的なビジネスの成長には繋げることができますが、コンバージョンレートが低いと実際に顧客には転換しないためROI(投資対効果)が限定されるというリスクがあります。

一方、実際に獲得したリードを顧客へ転換することを目的としたコンバージョンレートの向上に力を入れることで、マーケティング活動等に投じたリソースに対するリターンが増え、ROIを高めることができます。Permar AIがフォーカスを当てているD2Cブランドは、リソースが限られており効率的な運営が求められているだけでなく、新規リードの獲得よりもコンバージョンレートの方が売上に直接的にヒットするため、この2つは特に重要な指標になります。実際、Permar AIを利用した顧客は平均10%〜12%のコンバージョンレート向上、平均37%のROI向上を実現することができています。

3. 生成AIの活用方法

Permar AIでは、数千もの優れたD2Cブランドのランディングページから学習したAIモデルと機械学習を活用してコンバージョンレートを高める要素を分析し、ランディングページのデザイン生成に反映させています。例えば、ランディングページ上でのユーザーの動線や、クリックなどのアクション、ユーザーのアクセス状況を細かく追跡し、ボタンの配置やテキストの内容、挿入する画像を自動で調整しています。

他にも、ユーザーから入力されたプロンプトや生成したテンプレートに対するフィードバック、ランディングページのパフォーマンス分析などを通じて継続的に学習しており、動的にデザインへ反映させていくことでよりコンバージョンレートを最大化させるようなランディングページを顧客は生成することができるようになります。

4. 考察

今回は、コンバージョンレートを最適化するLPの自動生成ツールを開発するPermar AIというスタートアップを紹介しました。既存のデザインやコードの自動生成ツールに留まらず、コンバージョンレートの向上やSEO最適化といった付加価値がついたツールが徐々に登場してきており、もはや生成AIツールの浸透スピードよりも進化スピードの方が速くなっています。

第12弾の記事でも、デジタルマーケティング領域において生成AIを活用する事例を取り上げましたが、その際にSEO戦略は国ごとに抑えるべきポイントが異なるため、日本において類似のアプローチで挑戦するなら日本のSEOについて特性などをよく理解することが重要であると述べていました。

これは今回の文脈にも当てはめて言えることで、日本においてPermar AIのような生成AIアプリケーションを浸透させるためには、日本のデジタルマーケティングの特徴や消費者行動、商習慣などを正確に把握する必要があります。また、Permar AIはShopifyとの連携を現在進行形で進めていますが、日本においてはBASEやStoresなどのEコマースプラットフォームと連携することができるかどうかも成功の鍵となるでしょう。

執筆者:川野 孝誠


ANOBAKAでは、日本において生成AIビジネスを模索する起業家を支援し、産業育成を実現する目的で投資実行やコミュニティの組成等を行う、生成AI特化のファンドも運用しております。

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