アソシエイトの葛西です。
世界を含めてフードテックが盛り上がりを見せています。
今回はなぜフードテックが盛り上がっているのか?の背景を含めまとめてみました。
まずは年間の投資金額推移のグラフです。
1$=104円計算
2012年は$2.9Billionだった投資が2019年には$19.8Billionと日本円で約2兆円もの投資が行われ、約7倍もの投資金額が増加しています。
投資金額は年々順調に増加しており、2020-2025年の間もこれまで以上に盛り上がりを見せると期待しています。
ではなぜ世界を含め、フードテックへの投資が盛り上がっているかというと、3つの大きな問題があるからです。
1.人口の増加による食料供給の限界
2.家畜のメタンガス排出量増加による環境破壊
3.肥満による健康コストの増大
1.人口の増加による食料供給の限界
青い太線は1950年から2020年の期間における推計値であり、赤い太線は2020年から2100年までの中位推計値である。将来人口の推計値における不確実性は、予測区間の上限・下限によって示されており、オレンジ色が80%予測区間、黄色が95%予測区間の幅をそれぞれ示している。この推計によると、世界人口は、2030年には、おそらく(95%の確率で)85~86億人、2050年には94億~101億人、そして2100年には94億~127億人に達すると予測される。
世界人口推計2019年版 データブックレット
全世界で人口の増加がしており、2020年の世界人口は77億9500万人いると言われています。
1960年に30億人の人口だったので、60年間で2倍以上になっており近年急激な人口増加が問題となっています。
2050年の予測が94億~101億人なので、30年間で1.2~3倍の増加をすることが予測されています。
日本で見ると人口の減少が問題となっていますが、世界で見ると人口は増加の一途を辿っています。
また人口の増加に伴い、食糧需給の問題も連動して発生しています。
2050年には58億トンもの食糧需要が必要になる見通しで、2010年と比べると1.7倍もの食糧が必要になります。
また畜産物も2010年の7.38億トンから2050年には13.98億トンも必要になってきます。
しかし、畜産物の飼育には大きな問題があり、ここをどう解決していくかが重要になってます。
2.家畜のメタンガス排出量増加による環境破壊
次にメタンガスの発生源ですが、エネルギーが全体の過半数を占めるものの、第2位に農業がランクインしており、全体の30%を占めています。
また農業の内訳を見ると、消化管内発酵が大部分を占めています。実は牛などの家畜によるゲップが環境に問題に大きく影響しています。
日本では大きな話題となっていませんが、海外ではこの問題を解決するべく多くのスタートアップができています。
なぜ、メタンガスの抑制が必要かというと環境保全の観点からで、世界でも2015年12月にフランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)でパリ協定が成立しています。
パリ協定の内容をまとめると以下の内容で
・世界共通の長期目標として2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること。
2020年以降の枠組み:パリ協定
・主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。
・全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し,レビューを受けること。
・適応の長期目標の設定,各国の適応計画プロセスや行動の実施,適応報告書の提出と定期的更新。
・イノベーションの重要性の位置付け。
・5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)。
温暖化を防ぐべく150ヶ国以上が参加し、相互にレビューをしながら達成に向けて取り組み、その中でもメタンガスの抑制が重要な項目として挙げられています。
これからの世界は人口増加に食糧需給の問題を抱えながら、環境への配慮をしなければいけません。
日本でも魚から肉中心の生活に変化しており、2010年を境に魚介類と肉類の消費が逆転しています。
家庭での魚介類の消費が落ち込んだ理由は様々あると思いますが、下記の表を見ると調理が簡単な刺身類の購入量が増え、骨をとったり下ごしらえが必要な魚介類の購入量が減っていることから魚料理は肉料理に比べ、手間がかかることが大きな要因だと言えます。
欧米を中心とした肉食文化も畜産物の需要の拡大の要因と言え、このまま肉食中心の食生活をするべきなのかと疑問の声も上がっています。
3.肥満による健康コストの増大
Food and Land Use Coalitionが2019年に出したレポートです。
簡単に図を説明すると、世界のフードシステムの価値が10兆ドルに対して、健康や経済や環境のマイナスコストが12兆ドルでマイナスの影響の方が大きいと言う結果となりました。
また健康コストに注目すると肥満による健康コストが2兆7000億ドルで健康コストの中で一番大きな割合を占めており、ここをどうやって改善するかに注目が集まっています。
食品の廃棄問題や飢餓問題など、食にまつわる問題は多岐に渡りますが、一番インパクトの大きい箇所の改善が求められています。
人口増加による食糧供給が限界を迎え、連動してメタンガスを発生させる畜産物の増加する中、パリ協定に基づく環境保全への動き、また肥満による経済へのマイナスがあるため、それらを解決するフードテックには大きな期待が寄せられています。
次に3つの課題を解決するフードテックのアプローチ方法を一部紹介します。
大きく分けると新規食糧の開拓と既存食糧のリプレイスの2つに分類できると思います。
1.昆虫食による新たな食糧へのチャレンジ(新規食糧の開拓)
2.動物性の肉を植物性へ(既存食糧のリプレイス)
また、肉類への代替案として変わるには3つの問題をクリアする必要があると考えています。
・低価格
・美味しい
・高栄養価
現在、まだまだ価格が肉類と比べると高く、所得関係なく買えるくらいの低価格帯になれば流通が拡大します。
また味も肉類同等以上の美味しさが必要で、栄養価に関してはコオロギなどの一部の昆虫食でクリアしていますが、ここもまだまだ改良の余地があります。
1.昆虫食による新たな食糧へのチャレンジ(新規食糧の開拓)
ASPIRE FOOD GROUPはアメリカの食用昆虫企業でコオロギを原料とした様々な食品を製造・販売をしています。またコオロギから作られたプロテインバーを作るExoを買収し、食用昆虫企業として拡大を広げています。
コオロギは肉類と比べてタンパク質が多く含まれており、100gあたりのタンパク質量が60gと牛と比べて約3倍のタンパク質が含まれています。植物性の代替肉は肉類と同等のタンパク質が含まれていることが多いですが、コオロギは肉類を上回るタンパク質が入っており、新たな食糧源として注目されています。
またコオロギはエサの必要量が牛や豚と比べると少なく、少ない餌で高いタンパク質が取れる魅力的な昆虫なのです。
新しい食糧が拡大する上で管理コストが低いことも重要なポイントで、少ない餌で簡単に飼育できるコオロギは飼育の観点からも選ばれています。
価格とは12個29.9ドルと少し高めで、大量製造やテクノロジーによる飼育のコストの軽減で価格を下げれるかが勝負になってくると思います。
コオロギは新たな食糧として量産しやすく管理しやすいことから注目の昆虫食として挙げられています。
日本では昔からイナゴやハチの幼虫などを食べる食文化が形成されていますが、アメリカやヨーロッパでは昔から根付いている文化ではないので、ブランディング含めしっかりと文化形成をしていく必要があります。
2.動物性の肉を植物性へ(既存食糧のリプレイス)
BEYOND MEATは2019年にNASDAQに上場をした有名代替肉スタートアップです。
BEYOND MEATはアメリカのみならず、中国などにも商品を展開し世界各国で味わうことができます。
Beyond Meatの代替肉バーガーが中国アリババのスーパーに登場
栄養価に関して肉類と同等のタンパク質があり、113gと正確に比べることができませんが20gのたんぱく質が含まれています。競合ではImpossible Foodsなどが挙げられ、同等のタンパク質が含まれていることから脂質やカロリーなどのタンパク質以外の部分でも差別化が必要になってきています。
値段は112gのお肉が6個で71ドルと少し高く、ここもコオロギ同様改善の余地があると言えます。
他の海外のスータトアップが知りたい方はぜひ、下記の記事もお読みください。
人工肉など、次世代フードテック領域で注目の海外スタートアップ3選
ANOBAKAではフレンバシーという会社を支援していて、そもそも日本で正しい知識や情報をまとめ、文化からしっかり作り上げようとするスタートアップです。
フレンバシーはVegewelという、ベジタリアン・グルテンフリー・アレルギーの方向けのレストラン検索サイトを運営しており、Vegewel Style では旬の食材を使ったヘルシーレシピやプラントベースの知識を正しくお届けするWebマガジンを発信しています。
またベジタリアン・グルテンフリー・アレルギーの方向けにECモールを展開し、情報だけではなく商品も購入できるようになっています。
以上、なぜフードテックが盛り上がりを見せるのか?でした!
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