こんにちは、KVPインターンのたかはしゆうじ( @jyouj__ )です。
今回は最近気になっている海外スタートアップ「Greenlight」について深堀りをしようと思います。
Greenlightは子ども向けのデビットカードを提供するアメリカのフィンテック企業です。今年の9月末にユニコーンとなりました。
それでは、サービス内容や沿革について見ていきましょう!
(※画像は何も書かれていなければ基本的にはそれぞれの会社HPから)
目次
- Greenlightのサービス内容
- Greenlightの歩み
- Greenlightの競合サービス
- その他の金融教育系スタートアップ
Greenlightのサービス内容
Greenlightのサービス内容はざっくり言うと、“親が管理できる子ども向けデビットカード”です。ファミリー全体の使用に特化したUXになっています。
親はGreenlightのスマホアプリを通じて、子どものカードにお金をチャージすることができます。このとき、即座に送金が反映されます。また、毎月入金するお小遣いを自動化する設定もできます。
Greenlightの大きな特徴は二つです。
一つ目は、親が細かく管理できることです。子どもがお金を使ったらリアルタイムで通知を受け取ったり、買い物できるお店を設定したりできます。
また、ATMでの使用の可否や引き落とせる金額の上限も設定することができます。カードが紛失や盗難されたときはアプリから即座にそのカードを無効にすることができます。これは、子どもはよくモノをなくすので重宝する機能になるかもしれません。
もう一つは、子どもに主体的な金融教育を行えることです。アメリカやイギリスでは子どもに金融教育を行うことが当たり前となっています。お金の流れといった金融の知識から貯蓄や投資といった資産運用に至るまで、子どもは独り立ちするまでに身につけます。
アメリカで特に主流の金融教育は「パーソナルファイナンス」と呼ばれるものです。パーソナルファイナンスとは、個人や家計に関するお金の管理のことです。結婚や出産といった自分の人生のライフプランを達成するためにお金を貯蓄したり、投資したりして資産を運用します。
Greenlightでは親の透明で安全な管理のもと、子どもは主体的に金融リテラシーを身につけます。
Greenlight上で家事のタスクを子どもにアプリ内で割当て、それに対しての報酬金額を設定することができます。勤労によって、子どもはお金を稼ぐことの大切さを学びます。
また、アプリ内で貯蓄目標を設定することで、限られたお小遣いしかない子どもたちは節約する大切さを学ぶようになります。貯蓄における利子率を親が設定することができ、金利は親のアカウントから子どもに渡されます。銀行機能を擬似体験できるのです。
手に入れ、貯蓄したお金は親の管理のもと運用できます。商品の購入以外にも子どもたちの判断で慈善団体の寄付に充てることができます。
また、今後は投資機能をリリースすることが発表されています。子どもたちは自分の投資したい企業の株を親に提案し、親が承認すると取引が成立します。これで、Greenlightは金融知識全般をカバーできるようになります。
その他にも便利な機能があります。
Greenlightカードユーザーの子どもはApple PayとGoogle Payに支払い機能を追加することができます。これによって、子どもたちはUberの乗車料金を支払うことも可能になります。
利用料金は最初の一ヶ月は無料で、その翌月からは月額4.99ドルです。この料金の中には上記のような機能に加えて、最大5人までの子ども用デビットカードの発行といった特典がついてきます。
利用できる最小年齢と最小残高に制限はありません。手っ取り早く始めることができます。
このように痒いところに手の届く細かい機能をカバーすることで、Greenlightは現在、200万人以上の親子に愛用されています。
Greenlightの歩み
会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2014年
サービスリリース: 2017年
累計調達額: 約3億ドル(約310億円)
評価額: 約12億ドル(約1240億円)
さて今度は話題を変えて、Greenlightがユニコーンになるまでの軌跡を辿っていきましょう。
GreenlightはTimothy SheehanとJohnson Cookによって2014年に設立されました。ジョージア工科大学のスタートアップインキュベーター「The Advanced Technology Development Center」(ATDC、先端技術開発センター)出身です。そのため、本社はジョージア州アトランタの同センター内にあります。
創業者のTimothy Sheehanは長年テクノロジーと金融の最前線にいるビジネスマンです。いくつかのテック企業で重要職についていました。例えば、のちにDisneyが買収するスポーツ専門チャンネルESPNのシニアプロデューサーや米Yahoo!社のYahoo! Financeディレクターを歴任しています。
また、連続起業家でもあります。2005年に「Attributor」を共同設立しました。Attributorはデジタルコンテンツの著作権保護のソリューションを提供するスタートアップで、2012年にDigimarcに買収されました。
彼は2007年に「Reachable」というスタートアップも設立しています。営業担当者が購入見込みの顧客と効率よくつながるソリューションを提供していましたが、残念ながら今年3月にクローズしてしまいました。
Greenlight自体が本格始動したのはサービスリリースした2017年です。すぐにシードで750万ドル調達し、登録ユーザーは半年で1万人を超えました。
2018年2月にはシリーズAで1600万ドル調達しました。既存投資家であるカナダのRelay Venturesやアメリカのフィンテック特化VCのTTV Capitalに加え、Amazon Alexa Fundやアメリカ最大の自動車ローン企業Ally Financialが参加しました。
また、この時、AllyやAmazon Alexa Fundをはじめとする投資家とGreenlightは金融教育に関するパートナーシップを結びました。
Greenlightはその後も順調に成長していき、2018年3月には顧客数が10万人を超えました。
2019年9月にはシリーズBで5400万ドル調達しました。このラウンドでは、アメリカのDrive Capitalが主導し、JPモルガンやWells Fargoなどいくつかの金融機関が参加しました。金融業界から大きく注目されるサービスとなったのです。
そして、今年9月にシリーズCで2億1500万ドルを調達し、晴れて評価額約12億ドルのユニコーンとなりました。顧客数は200万人を超え、10ヶ月で評価額は5倍となりました。
既存投資家のTTV CapitalやRelay Venturesに加え、シャオミ・Twitter・グルーポンなどに投資実績がある香港のDST Globalも参加しました。
今年10月には、JPモルガンはGreenlightと提携し、子ども向け銀行口座をリリースしました。
現在、イギリスやオーストラリアをはじめとして、グローバルの金融機関で子ども向け口座の導入が進んでいます。Greenlightはその潮流の中、アメリカの大手金融機関JPモルガンの重要なパートナーの地位に就いたのです。
フィンテック領域の主要プレーヤーに登り詰めたGreenlight。どこまで成長するのか注目です。
Greenlightの競合サービス
Greenlightの競合サービスはグローバルにいくつかあります。それらを見ていきましょう。
1. goHenry
会社概要
拠点: イギリス
設立: 2012年
累計調達額: 1220万ポンド(約16億円)
goHenryは6-18歳向けの親が管理できるプリペイドカードサービスです。イギリスに拠点を置いています。
リアルタイムの通知機能や使用できる店の制限など基本的な機能はGreenlightと同じです。
現在100万人以上が使用しており、Greenlightと同じく急成長しています。
2. RoosterMoney
会社概要
拠点: イギリス
設立: 2015年
累計調達額: 210万ポンド(約2.8億円)
RoosterMoneyはgoHenryと同じくイギリスを拠点にしているフィンテックスタートアップです。
主に子ども向けのお小遣い管理アプリを軸に金融教育に取り組んでいます。子どもたちはアプリを通して、節約や支出を行えます。またIFTTT連携も使うことができます。
無料サービスでもお小遣い管理を通して、金融教育は行えます。ただし、Gleenlightのようなカードを発行し、支払いに利用するには年24.99ポンド払わなければなりません。
3. Mozper
会社概要
拠点: メキシコ
設立: 2019年
累計調達額: 160万ドル(約16.8億円)
Mozperはメキシコ版Greenlightです。
ラテンアメリカでは金融教育を受けている人は30%ほどです。GreenlightやgoHenryの成功を受けてラテンアメリカに同様のサービスをローンチすることでこの格差を是正しようとMozperは考えています。
4. Kard
会社概要
拠点: フランス
設立: 2018年
累計調達額: 600万ユーロ(約7.3億円)
Kardはフランス版のGreenlightです。
ただし、ティーン向けに嬉しい特典が独自にあります。画面が破損した時に100ユーロまでサポートするスマホ保険や2クリックで友達へ送金、購入商品の自動分類などが行えます。
現在、5万人以上の顧客を抱えています。
5. Mitto
会社概要
拠点: スペイン
設立: 2019年
累計調達額: 350万ドル(約3.7億円)
Mittoはスペイン版のGreenlightです。
スペインの大手銀行Banco Sabadellが支援しています。ヨーロッパ内ではKardのライバルとして出現しました。
6. Revolut
会社概要
拠点: イギリス
設立: 2015年
累計調達額: 9.17億ドル(約960億円)
Revolutはイギリスのチャレンジャーバンクです。同社のサービスはイギリスを超えて、他のヨーロッパ諸国やシンガポール、日本にまで勢力を広げようとしています。
Revolutは物理的な支店を持たない銀行です。スマホで簡単にアカウントを開設し、物理及びバーチャルのデビットカードでの支払いや、他の通貨への換金や国際決済をモバイル上で全て行うことができます。他にもシンプルでニッチな機能がたくさんあり、ミレニアム世代をはじめとする多くの顧客に支持されています。
そんなRevolutですが、今年初めに子ども向けのプロダクト「Revolut Junior」を開始しました。
親のRevolutアカウントと紐づいた7~17歳の子どものRevolutアカウントを開設できます。それを親と子どもはGreenlightのように使うことが可能です。
すでにRevolutアカウントを持っている親は子ども向けのデビットカードを選択する際に、Revolut Juniorを選ぶ可能性が高くなります。Greenlightをはじめとする多くの子ども向けチャレンジャーバンクにとって、一番の強敵となるかもしれません。
その他の金融教育系スタートアップ
Greenlightとは違うアプローチで金融教育を行うスタートアップを見ていきましょう。
1. Nude – マイホーム購入のための資産管理サービス
会社概要
拠点: イギリス
設立: 2019年
累計調達額: 540万ポンド(約7.3億円)
まず紹介するのは、Z世代向けの最初のマイホーム購入サポートを目指すイギリスのフィンテック企業「Nude」です。
金融機関の仕組みは複雑で、若者の大多数がファイナンシャルプランナーに頼むことができる状況ではありません。Nudeはこの富とその情報の不均衡を解消したいと考えています。
最初に、場所や節約できる金額に応じて、どれくらいの時間がかかるかを算出します。その後、使った金額などを管理し、マイホーム購入を達成するためのストレスのない提案サポートをしてくれるサービスです。貯金を増やすことのできる政府のサポートや住宅購入プロセスなどの情報も提供します。
現在、少数ユーザーに先行してサービスを公開しており、正式リリースはまだ先にはなります。また、Nudeは住宅ローンを提供するために銀行ライセンスの取得も目指しています。
今後、このマイホーム購入サービスがうまくいけば、Nudeは結婚や出産、旅行などのライフプランに関するサポートにも事業が発展するかもしれません。今後に注目です。
2. Ellevest – 女性向けの投資サービス
会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2014年
累計調達額: 7760万ドル(約80億円)
次に紹介するのは女性が設立した女性のためのフィンテック企業「Ellevest」です。
シティグループ出身のSallie Krawcheckはウォール街の金融商品が女性に対してのものではないことに気付きました。女性は大きなリスクを取る投資よりも目の前の目標達成する機会を重視していることに気がつきました。
さらに、女性は長生きする傾向にあるため人生全体を考慮した金融プラットフォームを欲していました。また、育児休暇や給料面で男性と差があります。
そのため、Ellevestは女性に特化したロボアドバイザーを運用しています。ロボアドバイザーはアルゴリズムによってポートフォリオ構築から資産運用までを自動化する仕組みです。Ellevestのロボアドは女性の経済面での特徴をそのアルゴリズムに組み入れています。
Ellevestには最低入金額がなく、低料金です。ユーザーはいくつかの質問事項を入力した後、Ellevestの提案する目標を選択します。その目標実現のためにEllevestはコーチングなど様々な手段を用いて、女性の投資など資産運用をサポートします。
同社にはエリック・シュミットやビーナス・ウィリアムズといった著名人からPayPalやMastercardといった企業、VCに至るまで出資しています。
今年6月には銀行サービスに参入することが発表されました。どこまでジェンダーの格差を縮めることができるか注目です。
以上、読んで下さりありがとうございました!!
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