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【イベントレポート】最前線スタートアップが語る GenerativeAIスタートアップの可能性

2023.4.25

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ANOBAKAアソシエイトの小田です。

2023年4月18日に行われた『最前線スタートアップが語る GenerativeAIスタートアップの可能性』のイベントレポートをお届けします。

ChatGPTがローンチされ、たった5日間で100万ユーザーを獲得するなど、Generative AIが一気にインターネットの中心となり、米国ではアプリケーションレイヤーを中心とした各領域でGenerativeAIのスタートアップが多く生まれています。

日本においてはまだビジネスの模索段階である本領域において、先行して事業を立ち上げているSOUNDRAW社楠氏・Meltly社髙橋氏と、日米に拠点をおくグローバルファンドであるWiL社パートナーの久保田氏にご登壇いただき「Generative AIスタートアップの可能性」について語っていただきました。

登壇者紹介

~B Dash Camp 2022 Summer in Sapporo Pitch Arena 優勝~
グローバルで急成長中のAI作曲サービス「SOUNDRAW」CEO 楠 太吾 氏

https://soundraw.io/ja

自分だけのキャラと日常を彩るAIイラストアプリ「Dayseum」CEO 髙橋 侑志 氏

https://dayseum-app.studio.site/

日米に拠点をおくグローバルファンド「WiL」パートナー 久保田 雅也 氏

https://wilab.com/

パネルディスカッション

米国のGenerative AI領域の盛り上がりは?

WiL社 久保田氏
現段階では静観している人・既に盛り上がっている人に二極化している状況です。

静観している人は、技術革新が現在進行形であり、サービスが乱立し混沌としている現環境での動き出しは見送っているイメージです。
過去にも技術革新の初期のタイミングで出てきたサービスは後発のサービスに追い抜かれたケースがありました。例えばGoogleも検索エンジンの中ではかなり後発ですし、Facebookも最初のSNSではありませんでした。
また、Generative AI領域のサービスは「データを保有していること」がmoatであると言われています。過去の技術革新の際と異なり、今回はデータを持っている大企業の動きが比較的速いです。そのため、新興のスタートアップが本領域で競争優位に立てるかどうか懐疑的な見方も存在します。

一方、盛り上がってる人はGenerative AIのツールやプロンプトを自分で試し切っており、技術革新の凄さを肌で体感されている方に多い気がします。
ChatGPTでもプロンプト入力次第なので、触ってないと可能性を感じ切れない。あと進化が速いので、日々ニュースを追っていれば可能性を実感できます。
投資家も起業家もGenerative AIは使い倒している人しか見えない景色があって、そういう人は本領域の投資に積極的な印象です。シリコンバレーではミートアップやハッカソンが高頻度で開催されており、コミュニティの熱量を感じます。

また、Y Combinatorが投資したGenerative AIスタートアップにはGAFA出身者が多い印象です。レイオフなどで、ビッグテックから人が流出しているタイミングでGenerative AIの波が到来し、人的資本のスライドも比較的スピーディーに進んだことが本領域のスタートアップが多数生まれた背景の1つだと考えています。

サービス開発で大変だったことは?

SOUNDRAW社 楠氏
当社は、クリエイターや企業が「著作権フリーの曲」を入手・編集することが困難という課題を、コンテンツにあった曲が容易に生成できる「AI作曲」というサービスで解決することを目指すスタートアップです。

サービス開発の過程では「教師データの獲得」に苦労しました。

サービスの立ち上げ期には、インターネット上の素材を集めて学習を回したのですが、アウトプットが安定しませんでした。そこで私たちは、自分達で教師データとなるメロディを作りました。数千の教師データを自前で生成する過程は大変でしたが、それらを活用することでアウトプットが安定するようになりました。自分達で教師データを作ると著作権周りの問題がなくなる点もメリットの1つです。

Meltly社 髙橋氏
サービスは昨年の9月に作り始めました。画像生成の領域は、毎週のように技術の変化が起こっていて、後出しジャンケンでどんどん良いものが出てきてしまいました。Stable Diffusionがオープンソースで個人にも解放されているため、個人が日々ユニークなアウトプットを量産しているような状況でした。そういった変化の激流についていきながら、自分達が「何をやるべきか」「何をやらないべきか」の取捨選択をする行為が大変でした。

サービスを作っていく上で重要なことは?

Meltly社 髙橋氏
ユーザーが一番求めているものを徹底的に深掘りして、自分達が「何をやるべきか」「何をやらないべきか」の取捨選択をすることが重要だと考えています。
毎日様々なモデルが出てくるので、その全てを取り入れることは不可能です。
最終的にユーザーに何を提供するサービスなのか、という部分を明確に定義することが大切だと考えています。

WiL社 久保田氏
自分達がやりたいことを明確に定義することが重要です。
その手段として、必ずしもGenerative AIを使わなくても良い(むしろ使わない方が良い)、チャットボットならルールベースの方がむしろ相応しいサービスもあるかもしれません。Generative AIは手段であって目的ではないので、できることの特性を踏まえて、サービス設計をすべきです。

また、サービスを作るに当たっては「ラストワンマイルを詰め切れるか」という要素も極めて重要です。
LLMを活用することで、サービスの「90%」は時間をかけずに誰でも作れてしまいます。そこからどう競合優位性を作っていけるかは「90%のクオリティをを99%にする」「99%から100%まで持っていく」というラストワンマイルをどれだけ詰め切れるかにかかっています。サービスが90%できてからが勝負の本番です。

競合優位性をどう作っていく?

SOUNDRAW社 楠氏
音声系も競合の多い領域です。
久保田さんの仰る通り、ラストワンマイルを作り切ることが大切だと考えます。
また、どの顧客のどのペインを解決するサービスなのかが見えづらいサービスも多いと感じます。「プロダクトのクオリティ」「顧客のペインの解決」に徹底的にこだわり抜くことが重要です。

Meltly社 髙橋氏
画像生成系のAIスタートアップとして、Midjourneyにツールとして勝つことは非常に難しいです。顧客にとって「ツール」はスイッチングコストが低いので、先行者優位も取れず、資金力があるプレイヤーは勝てないと考えています。なので、特定ユーザーにとっての体験価値なり、コミュニティなり「ツール」以外の別の軸で戦うことが重要になってくるのかなと思います。

WiL社 久保田氏
一般論としては「データの蓄積」「UIUXの磨きこみ」が重要と言われており、その通りだと思います。
一方「Bizdevで勝負する」という方法で優位性を構築することも可能です。
toCサービスであればインフルエンサーなどとのタイアップでキラーコンテンツを武器にBizdevで勝負することもできます。toBサービスであれば「まずは社内の業務フロー向けにプロダクトを開発し、その後外販する」という方法も考えられます。AIは汎用性が高いので、特にこのようなアプローチは有効だと思います。

チームに必要な人材はどんな人?

SOUNDRAW社 楠氏
AIエンジニアとWebエンジニアは絶対に必要です。
また、音楽系のAIに関しては作曲家も必要になってきます。
作曲家とエンジニアは個性が違うのでチームビルディングが大変なところはありました。
当社はAIエンジンそのものを作っているわけではないので、特殊な技能をもったAIエンジニアでなくても大丈夫でした。

Meltly社 髙橋氏
当社はモデルから作っていたりするので、しっかりとコード書けるエンジニアが欲しいと思います。
素養としては受け身ではなく、能動的に新しいコードや論文に食らいついていけることが大切です。技術革新のスピードが早い環境下で、自社サービスに最新の知見を組み込むには「能動的に動ける」という素養が非常に重要になってくると思います。

WiL社 久保田氏
モデルレイヤーのスタートアップであれば、PhDクラスだったり、AI系のビッグテック出身者が何人いるか、という戦いになってきます。
アプリレイヤーのスタートアップであれば「特定の業界」や「ユーザー」にどれだけ詳しいかがmoatになります。
ファイナンスの観点でもサービスグロースの観点でも「業界・ユーザーの課題の解像度が高くPMFするプロダクトを作れること」「GTM上での人脈やネットワークを持っていること」が重要です。

Generative AI関連で興味ある投資領域は?

WiL社 久保田氏
ゲームやメタバースは色々できると思います。
AIネイティブなゲームを作ってもいいと思いますし、既存のゲーム開発費を圧倒的に削減する方向性のツールも考えられます。日本でも得意な領域だと思いますし、マーケットも大きいので、面白いと思っています。

SOUNDRAW社 楠氏
ゲーム領域は私も面白いと考えています。
当社サービスのAPIを公開したタイミングで、ゲーム系の会社などからの「ゲームのBGMにサービスを活用する」意図での問い合わせが増えたこともあり、Generative AIとゲームは相性が良いのだろうと思っています。

Meltly社 髙橋氏
RVC(Retrieval-based-Voice-Conversion)というボイスチェンジの領域に注目しています。
動画制作やナレーションなど、圧倒的にクリエイティブがやりやすくなると感じています。また、人間には「頭に入りやすい声」「頭に入りにくい声」があるそうです。音声を各人の頭に残りやすい形で残せる技術が発展すると、既存の様々なサービスの最適化につながるのでは、と考えています。

終わりに

最後までお読みいただきありがとうございました。

Generative AIについて最新の知見を有する登壇者のディスカッションは、個人的にも大変勉強になりました!
本レポートが、Generative AI領域で起業を考えられている方のお役に立てれば幸いです。

ANOBAKAでは今後もGenerative AI領域のイベントや勉強会を開催予定ですので、是非奮ってご参加ください!Generative AI領域で起業を考えられている方からの「資金調達相談」「事業相談」も積極的にお受けしておりますので、お気軽にご連絡くださいませ!

改めて、本イベントの登壇企業・参加者の皆様、お忙しい中ご来場頂きありがとうございました!!

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