ANOBAKAインターンの齋藤です。
2023年5月23日に行われた『若手起業家3名から学ぶ 学生起業のホンネ』のイベントレポートをお届けします。
登壇者は、株式会社ventus 梅澤 優太氏、株式会社DIRIGO 本多 祐樹氏、カクトク株式会社 満田 聖也氏 です。
学生時代に起業し、そのまま現在まで経営を続けるスタートアップ3社の代表をお迎えして、その秘訣や苦労を語って頂きました。
登壇者紹介
電子トレカ®︎ コレクションサービス「ORICAL」運営
ventus CEO 梅澤 優太 氏
モバイルオーダープラットフォーム「PICKS」運営
DIRIGIO CEO 本多 祐樹 氏
日本最大級の営業代行プラットフォーム「カクトク」CEO 満田 聖也 氏
パネルディスカッション
①起業のきっかけは?
ventus社 梅澤氏
スポーツが大好きで、その領域で働きたいと思っていたからです。スポーツ系の会社に就職したかったので、大学1年生の段階でスポーツ系スタートアップである株式会社ookamiにてインターンをしていました。
その後、大学のプログラムを通じて共同創業者を見つけ、当初は学生プロジェクトの延長のような形で検証やプロトタイプの開発を行い、起業に至りました。
DIRIGIO社 本多氏
僕自身は元々、ずっと政治家を志していました。アメリカからGAFAのようなビックテックが次々と生まれてくる一方で、日本からはそのような企業が生まれないことに勝手に課題を感じて、政治家を目指していました。
しかし、実は大学生の時に留年をしてしまい、自分の人生についてしっかりと考え直す時間が生まれました。この時間のなかで、しっかりと自分と向き合った結果「起業する」という手段が浮かび上がってきました。
そもそも政治家を目指していたのは、日本からグローバル進出できるようなビックテックを作るためです。それならば、自分が起業家としてその目標を目指しても良いのではないか、と考えて起業しました。
カクトク社 満田氏
高校時代に参加したイベントで、ロールモデルとなる起業家と出会ったのがきっかけです。
高校時代から地元のカフェを貸し切ってプレゼンイベントを開いたり、積極的にイベントに参加したりと、起業自体には興味を抱いていました。
そのなかで参加した「スタートアップウィークエンド」というイベントにて、シタテルの社長と出会いました。その社長が、解決したい課題と真摯に向き合いながらスタートアップを経営している姿に感銘を受けました。彼の姿を見るなかで、自分も世の中の仕組みを変える側になりたいと強く感じ、起業しました。
②事業ドメインはどのようにして決めるべき?
ventus社 梅澤氏
自分が情熱を注げることで起業するのがおすすめです。
僕の場合はスポーツが大好きだったので、起業するなら絶対スポーツでやりたい、と考えていました。実際に「スポーツ以外のドメインを選んでいたら挫折していたかもしれない」と感じる機会もあったので、この選択に間違いはなかったのではないか、と感じています。
また意思決定において難しい局面でも、好きなことであれば高い解像度と情熱を抱いたまま決断しやすいと思います。例えば僕の場合、プロ野球のことであれば並大抵の人には負けない熱量と解像度を持っている自信があります。
好きなことでなくとも、自分が情熱を注げる事業ドメインを選ぶということは、長期間経営をしていくにあたって非常に重要になってくる点だと思います。
カクトク社 満田氏
僕の場合、事業ドメインを決める判断軸が2つありました。
1つ目は、僕の起業のテーマとして「自分が世の中にいなかったら無かったかもしれない仕組みや文化を作る」というものがありました。このテーマを膨らませながら事業を探していったなかで、結果的に人の働き方を変えていくという課題に向き合っていくことになりました。
もう1つの判断軸としては、B2Bの領域で戦うというものがありました。これは僕の仮説として、組織が購買判断するB2Bの方が、個人が判断するB2Cよりも判断に合理性が生まれるのではないか、という考えがあったからです。
この2つの判断軸に合致した事業ドメインが、営業支援プラットフォームでした。
このように僕の場合は、起業する目的や事業ドメインを探す為の判断軸を事前に絞ってから、事業ドメインを探しました。あらかじめ自分が作りたい世界観や想像したい価値を形にしておくのは大切だと思います。例えば、どうしても自分がやりたい事業があるのであれば、スケールしなくてもその領域に挑戦する価値は充分にあると思います。スケールしなくても、世の中に価値を与えている事業は沢山あります。対照的にスタートアップを経営してみたいと思うのであれば、スケールしそうなビジネスアイデアをしっかりと探ってから起業してみると良いのではないか、と思います。
このように起業する目的を事前に絞ってから、その目的にマッチした事業ドメインを決めることをおすすめしたいです。
DIRIGIO社 本多氏
自分自身が事業に興味を持てることが大事だと思います。
この興味には色々な種類があると思います。事業ドメインに興味がある場合もあれば、とにかく儲かる事業に興味がある場合もあります。例えば、英語を使った事業をしたいのであれば外国人を対象にした事業ドメインから逆算していくのも良いでしょう。
僕の場合は好きな飲食に関わることができる飲食業界を支援することをテーマに事業を構想し始めました。調べていく中で自分の「好き」・「経済性」・「優位性」がある領域だと思い事業として取り組むことにしました。
一方で、最近感じるのは現時点において市場規模が大きいところが必ずしもよいとは限らないということです。市場規模は、その起業家の思い・創意工夫・エクゼキューション次第で幾らでも創出できるのではないか、と考えています。
大切なのは、その事業に対してどれだけ熱量をもち工夫し、尽力し続けることができるかどうかだと思います。
③学生起業をするにあたって、学生に必要な経験は?
ventus社 梅澤氏
「これをやったから学生起業に成功する」といったような経験はないのではないかと思います。
そもそも、学生起業は経験で勝負するべきではないように感じています。もし経験を積んでから起業をしたいのであれば、自分の興味がある業界で一度働いてから、知識を熟成させて起業した方が良いように思います。なので、一概におすすめ出来るような経験はありません。
ただ、友達をたくさん作っておくのはおすすめです。起業するしないに関わらず、友人というのは思わぬ所で自分をサポートしてくれるものです。学生時代の間に、友達をたくさん作っておくのは社交性を高めるという点でもおすすめです。
DIRIGIO社 本多氏
僕も沢山の人と関わるというのはいいことだと思います。
色々な人と関わることで自分自身の知見も広がりますし、もしかしたら将来的に一緒にビジネスをする仲間になるかもしれません。また、自分が尊敬できると思える人の近くにいると、多くの刺激を受けられるように感じます。
自分自身の快適な領域に留まらず、色々な人や場所に知見を広げる時間にするといいのではないかと思います。
カクトク社 満田氏
僕も同じく、友達を沢山作っておくのはおすすめです。
また、学生だからこそ出来る経験を積んでおくのも良いと思います。例えば、興味がある業界のインターンをしたり、尊敬できる人に直接話を聞きにいったりするのは、学生のうちにやっておくと視野が広がるのでおすすめです。逆に、社会人になってしまうと時間的にこれらの経験をするのが難しくなってしまうと思います。
学生だからこそ出来る経験を沢山積んでおくのは、大切なことだと思います。
④学生起業家がぶつかりやすい壁は?
カクトク社 満田氏
若いからこそ原体験を出しづらいという壁があると思います。
人生経験の多い社会人と比べると、学生起業家が語れる原体験は少ないように感じます。
この壁を乗り越えるためには、対象となる顧客やマーケット調査など、情報収集の能力を示していくのが重要だと考えています。経験が少ないからこそ、しっかりと調査を行う必要性があるのではないかな、と思います。
DIRIGIO社 本多氏
学生起業家だからこそぶつかった、と思う壁はあまり思い浮かばないです。
ただし、若くて経験が浅いからこそ希望的観測で動いてしまうということがある気がします。
例えば僕の場合だと経営戦略を考える際に、ポジティブな計画ばかりを立ててしまい最悪のケースを想定できていないということがありました。しかし、ネガティブな要素もしっかりと考慮しないと、良い計画書は作成できません。
自分が全力で取り組んでいる事業が失敗するケースを考えるのは億劫ですが、しっかりと現実と向き合いながら戦略を立てていくのが大切なのではないかな、と感じます。
ventus社 梅澤氏
僕も同じく、学生だからぶつかった壁というのはあまり無かったように思います。ただ、福利厚生や人事評価制度など会社の仕組み作りには苦労しました。
社会人経験があれば、これらの仕組みづくりにももっと効率良く対応できたのかもしれないな、と感じます。
⑤資金調達はどのタイミングで行うべきか?
カクトク社 満田氏
資金的に活動の継続が可能なのであれば、焦らずに自信のある事業が出来るまで、最初の資金調達は後ろにずらすのも判断の1つだと思います。
ちなみに、僕の場合は資金調達が決まってから法人登記しました。ただし、法人登記するまでに検証期間を1年程度かけました。また、基本的に学生起業の場合は初期の事業モデルがそのまま成長するということは少ないため、もし初期でVC等から調達をする場合は、事業検証に対して投資をしてくれるVCが理想だと思います。初期の事業モデルに対する成長性に確信が強すぎるVCから資金調達するのは、あとでトラブルになる可能性があると思います。
DIRIGIO社 本多氏
資金調達のタイミングは非常に難しく、時代の流れや競合の状況など複数の要素があった上で判断しないといけないので、やはり一概には答えづらいです。
資金調達するというのは、リターンを確実に返すという覚悟を決めるということでもあります。個人的には、その覚悟が決まってからでも良いのではないかな、と思います。
ただ、例外として自分としてメンターに付けたいと思える人から資金調達するというのは、良い選択肢だと思います。その方がいれば、事業の改善速度やPDCAの速度が早まるという場合は、敢えて遅延させることなく早い段階で資本を入れてもらっても良いのではないかと思います。
ventus社 梅澤氏
スタートアップは長期戦なので、基本的に最初の資金調達は遅らせた方が良いのではないかな、と思います。もちろん、事業によって変わってきてしまうので一概には言えないですが。
学生起業の場合は、最初のアイデアとチームで最後までいく人は少ないです。「天才だ!」と思っていたアイデアも、確実に後で見直すことになります。資本を入れることで絶対に事業を拡大できるという確信を得るまでは、出来る限り学生のサブプロジェクトのような感覚で進めた方がいいと思います。
また、本多さんが仰っていたようにメンターにしたい人から資金調達するのは、1つの戦略としてあると思います。実際に、僕の会社では初期の段階で陸上選手である為末大さんにエンジェルとして入ってもらいました。為末さんは、出資だけでなく精神的なサポートや人の紹介などをしていただけました。このように企業を資本面だけでなく、精神的にもサポートしてくれるような人をメンターとして入れるのは、選択肢の1つだと思います。
⑥学生に向けて一言お願いします!
ventus社 梅澤氏
学生が選べる選択肢は起業の他にも沢山あるので、その中から納得のいく道を選ぶのが良いと思います。
起業はとにかく長期戦になります。もし起業すると決めたなら、相応の覚悟を決めるべきです。自分にも言い聞かせていますが、細かいことで一喜一憂せずしぶとく頑張って行きたいと思います。
DIRIGIO社 本多氏
起業したいという人はたくさんいるんですが、意外と多くの人が起業しないな、というのを感じています。僕も学生のころ、このようなイベントに参加したこともありました。
満田さんが登壇されていたイベントにも参加していましたが、そのなかで現在でも縁が続いているのは満田さんだけです。もしかすると、僕が認識していないだけかもしれませんが、大半の人は起業しない道を選んだと思います。なので、まずはやってみるということは偉大だと思います。
その上で、確実に長期戦になるのでしぶとく戦っていく覚悟を持ってはじめるのが良いと思います。ライトにスタートして、ハードに頑張るということが大切だと思います。
カクトク社 満田氏
学生起業となると、経験値が少ないなかで経営することになります。そうなると、事業を伸ばすと同時に、自分の能力も伸ばしていくことになります。この2つを同時に伸ばしていく為には、当然時間もかかるし覚悟も必要になってきます。
この性質上どれだけ上手く行っても長期戦にはなりやすいので、自分が辞めない理由を言語化しておくのは、プラスに働きやすいのかなと思います。
特に事業が難航したときや経営が傾いたときに、辞めない理由を言葉として強く持っていくというのは、強みになると思います。
終わりに
最後までお読みいただきありがとうございました。
学生の頃から現在まで経営を続けられている登壇者のディスカッションは、個人的にも大変勉強になりました!
本レポートが、学生の間に起業を考えられている方のお役に立てれば幸いです。
ANOBAKAでは今後も若者向けの勉強会を開催予定ですので、是非奮ってご参加ください。
学生中に起業を考えられている方からの「資金調達相談」「事業相談」も積極的にお受けしておりますので、お気軽にご連絡くださいませ。
改めて、本イベントの登壇者・参加者の皆様、お忙しい中ご来場頂きありがとうございました!