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AI起業のヒント【10月版】海外×生成AIスタートアップトレンド

2023.10.19

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ANOBAKAアソシエイトの小田です。
今月も生成AIスタートアップの海外トレンドをお届けします!

本連載では、Crunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップの「月別の傾向」「注目スタートアップ」をお届けします。

生成AI領域で起業を考えられている方は、事業のヒントとしてご参考ください!

※先月の記事はコチラ

■今月の傾向まとめ

2023年9月にCrunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップ68社のジャンルの分類をしたグラフが下記です。

※生成AIスタートアップはMoatが築きづらく、資金調達ニュースを出さない企業も多いので、実際の調達社数は68社よりかなり多いと推定されます。

※記事の最下部に制作元リストのスプレッドシートを添付しております。

9月は「医療・製薬」分野の生成AIスタートアップの資金調達が多くありました。

国内でも「スタートアップワールドカップ2023」東京予選で優勝された、インフルエンザの診断支援ができるAI医療機器を開発するアイリス株式会社など、医療×AI分野のスタートアップは複数存在します。

一方、日本での生成AIの技術を活用した医療・製薬系のスタートアップの出現スピードは、米国と比較してかなり遅い印象があり、今後盛り上がりが予想される分野の1つです。

個人的には、Verticalな産業領域で生成AIネイティブなスタートアップが立ち上がるには、ドメイン知見を持つファウンダーと、技術知見を持つエンジニアとの出会いが大切だと考えており、そうした出会いの機会の創出に寄与する活動にも取り組んでいきたいと考えています(賛同くださる方は筆者までお声がけください!)

■注目スタートアップのご紹介

9月に資金調達を発表したスタートアップの中から3社をご紹介します!

1.「医療機関における保険請求業務の省力化ツール」Decoda Health

・会社名  : Decoda Health
・創業年  : 2023年
・所在地  : 米国 サンフランシスコ
・出資   : Y combinator
・調達額  : 50万ドル
・カテゴリ : 医療・製薬
・URL   : https://decoda.health/

「Decoda Health」は医療機関が保険機関に保険料を請求する際に提出する書類の作成を省力化するツールです。

米国の医療機関は保険会社からの支払いを受けるため「診断 / 施術 / 使用した医療機器」などの診療情報を「汎用の医療英数字コード」に変換した書類を作成し、請求を行なっています。保険会社は「医療コードの割り当て方法の正確さ」に基づいて支払いを行いますが、医療コードのガイドラインは常にアップデートされるため、手続き実行の難易度が高いそうです。そのため、医療機関は「タスクをこなす専任の人材を雇うコスト」「保険料回収の機会損失コスト」を支払い、それが利益率圧迫の原因となっています。

Decoda Healthは、AIを活用して電子医療記録システムを読み取り、医療記録に医療コードを自動的に割り当てることができるソリューションです。医療機関での活用事例では、書類作成のコストが30%削減され、記載ミスが20%減少するなどの効果があったそうです。

日本でも、医療機関が保険組合からの支払いを受けるには「診療報酬明細書(レセプト)」を作成し、関係機関に提出する必要があります。特に、作成されたレセプトを点検する「レセプト点検」は専門知識を持った医療事務の方が目視で行なっているケースも多く、レセプト点検の業務を省力化するツールには、一定の需要があることが推測されます。

2.「弁護士の業務効率化支援ツール」Paxton AI

・会社名  : Paxton AI
・創業年  : 2023年
・所在地  : 米国 オレゴン州
・出資   : 25madison
・調達額  : 約600万ドル
・カテゴリ : Legal tech
・URL   : https://www.paxton.ai/

「Paxton AI」は公開されているすべての「連邦判例法」「州判例法」「法令」など、6,000 万以上の文書を学習したAIで、チャットベースのUIで必要な情報・書類を抜き出すことができるツールです。また弁護士は、自身で用意した「文書・ビデオ・音声データ」をPaxton AIに学習させることが可能で、これによって自分が関わる業務に関連するアウトプットを出力することができます。

公開されている法律や判例などの莫大な情報から都度必要な情報を検索する作業は、弁護士にとって負担の大きな業務の1つであり、AIによる省力化には大きな価値があると推測されます。

一方で2023年5月には、米国の弁護士がChatGPTを使って作成した準備書面に、実在しない6件の判例が含まれていたことが発覚し大きな問題になるなど、法務領域では生成AIによるハルシネーション(幻覚)の排除が極めて重要です。

「Paxton AI」は、AIが存在しない判例や法律を生成しないようなチューニングが入念に施されており、情報の引用元となる参考文献を必ず参照できる仕様としていることで、ハルシネーションの問題に対応しています。

日本でも2023年9月28日に弁護士ドットコム社が、弁護士用書籍検索サービス「弁護士ドットコムLIBRARY AIアシスタント(α版)」の提供開始を発表するなど、弁護士のエンパワメントツールが出てきており、今後も盛り上がりが予想されます。

3.「小さな金額の商品の営業を完全に自動化するツール」AskToSell

・会社名  : AskToSell
・創業年  : 2023年
・所在地  : リトアニア
・出資   : Specialist VC
・調達額  : 10万ユーロ(約1500万円)
・カテゴリ : Sales tech
・URL   : https://asktosell.com/

AskToSellは、営業担当者がSMB顧客への新規営業時に対応しているタスクを自動で実行するAI営業ツールです。

利用企業は「製品情報」「リードの情報」「任せたいタスク」を設定すれば、AI営業が「リードのリストアップ」「アプローチ」「顧客への質問の対応」「契約の締結」などのタスクを実施するそうです。

AskToSellの共同創設者であるLaimonas Noreika氏とKarolis Januškas氏は、ヨーロッパで著名な物流スタートアップのZITICITYの共同創業者でもありました。ZITICITYの主要顧客である小規模事業者に対する営業コストが高騰し、ユニットエコノミクスの採算が合わなくなった経験から「小規模取引の自動営業AI」を着想し、創業に至ったそうです。

SMB顧客に対してセールス主導で営業を拡大する方法の効率化は、日本でも多くの企業が直面する課題の1つであり、AIを活用し革新的なソリューションが作り込めれば、大きく営業の世界を変革することができます。

■終わりに

いかがでしたでしょうか!

ANOBAKAでは今後も海外の生成AIトレンドについての記事やイベントをお届けできればと思います!

生成AI領域で起業や資金調達を考えている方がいれば、是非お話しさせてください!

meetyかX(twitter)で、面談のお申し込みお待ちしておりますmm

ANOBAKA アソシエイト小田

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▼制作元リストhttps://drive.google.com/drive/folders/1RY4cgYG7T2Y2HXo11vQJMvqmhJFLDPpf?usp=sharing

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