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アフリカの水問題をテクノロジーで解決する「Sunda Technology Global」

2023.11.1

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ANOBAKA投資担当の松永です!

今回、アフリカ農村部における水問題解決に取り組むSundaTechnologyGlobal(以下:Sunda)に出資させていただきました。


プレスリリース:
アフリカ農村部における水問題解決を目指すSUNDAがシードラウンドでの資金調達を完了

Sundaはアフリカ農村部におけるハンドポンプ井戸を始めとした水設備向けの自動料金回収システム「SUNDA」を製造・販売するスタートアップです。

今回の出資に合わせてANOBAKAメンバーでウガンダに訪問し、SUNDA事業を推進する代表の坪井さんにインタビューをさせていただきました。

第一号SUNDAが設置された井戸

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株式会社Sunda Technology Global 
代表取締役CEO 坪井 彩 氏
藤島高校、奈良女子大学、京都大学大学院を卒業後パナソニックIT部門に入社し、B2B,B2Cの様々なビジネス向けにデータ分析コンサルとして営業・マーケティングの効率化に従事。その後、ウガンダにて1年間青年海外協力として活動、ケープタウン駐在、ドバイ駐在を経験。2020年にSunda Technology Globalを設立。
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松永:今日はインタビューのお時間をいただきありがとうございます。早速なのですがSUNDA事業についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

坪井:本日はよろしくお願いします!SUNDAを一言で言うならば「モバイルマネー」を用いた「プリペイド式」自動井戸料金回収システムです。

アフリカ農村部に上下水道の設備はなく、生活水は井戸水が主流です。今まで多くの協力機関がアフリカ各地に井戸を作ってきており、ウガンダだけでも6万基の井戸があります。

しかし、実は6万基中1万基以上が壊れて使えない状態になっています。

背景としては、井戸が壊れた時に修理する維持管理費用(水料金)を安定して回収する仕組みが不足していたからでした。

そこで井戸水の汲み上げを制御管理するデバイスを取り付け、その井戸を利用する各世帯にIDタグを配布し、IDタグにモバイルチャージしてプリペイド式で水を汲める仕組みを作りました。それによって水の利用量に応じて料金を回収することが可能になり、いざという時に溜まった資金を活用することが可能となります。

松永:日本人がアフリカ・ウガンダで事業を立ち上げていくのは非常に難しそうに思えるのですが、どのような課題や苦労がありましたか。

坪井:起業する前に参画していた青年海外協力隊の活動の中で、SUNDA事業の構想はある程度出来上がっていましたが、SUNDAはハードウェアとソフトウェアの組み合わせで成り立つプロダクトのため、実際に現地で実機まで制作できる技術者を探すことが最初のハードルでした。

「自分ならできる」と言う人は多かったのですが、お願いしても結局作れないということが続いて…

結局、今の共同創業者になる技術者に辿り着くまで5人の方に依頼と失敗を繰り返しました。

共同創業者・エンジニアのSsebina Abdusalam氏の自宅兼工房
自ら基板を作成し、コーディングもしている
共同創業者・エンジニアのSamson Kasozi氏の実家兼オフィス兼R&D工房

坪井:農村部への導入については、JICAや政府の水部門の方と連携しながら村へ説明して周りました。井戸の維持管理料金の回収と保管を課題として認識している村も多く、SUNDAの仕組みについては前向きに受け入れてもらえている印象です。

松永:実際に村々に導入していく中で見えてきた課題はありましたか。

いくつかあります。例えば、設置機器を壊されたり、ソーラーパネルを盗まれたりといったことがありました。もちろん多くの村では正常に利用されていますが、一部こういった事象が発生しています。

また長期間利用すると水量計に鉄粉が絡み、水量計に異常が見られることがわかってきました。

あとは嬉しい課題ではあるのですが、ひと村あたりの利用者が予想を超えて増えてきたこともあり、管理できるIDタグ数を増やす必要も出てきました。
こういったことは実際に設置してみて初めてわかってきたことですね。

今は上記のフィードバックを経て、それぞれの課題について対策を講じている所です。

松永:今回のシードラウンドでの資金調達の背景を教えてください。

坪井:現地のニーズは明確に存在しており、現在SUNDA は150基の井戸で稼働していますが、次の半年で300基まで増やす予定です。また来年には数千基まで拡大する土壌を作りたいと考えています。

そのため先程上げた課題に対してのソフトとハード両面でのプロダクトのアップデートを行いと思っています。ウガンダだけでなく、日本の技術者とも連携しながらよりよいプロダクトに磨き上げていく予定です。

また、今後はもっとステークホルダーも増えていくので私と一緒にビジネスを推進してくれる人材の採用にも力を入れたいと思っています。

松永:最後に、今後のSUNDAの事業展望をお伺いしてもいいでしょうか。

坪井:私たちが取り組んでいるアフリカの水問題は過去何十年もいろんな人が取り組んできた社会課題です。今後はもっともっと問題解決をスピードアップして、今後10年を目処に解決を目指していきたいと思っています。

具体的には、今ウガンダでは6万基、アフリカ全体では70万基くらいの井戸が動いてますがその半分にSUNDAのシステムを導入していきたいです。

また今はハンドポンプ式の井戸向けのシステムですが、蛇口式のものやその他のアフリカ農村村部全体の水問題を解決していく事業に進化させていきたいと考えています。

所感:
今回、ANOBAKAメンバーで実際にウガンダの農村部に設置されているSUNDA及び、開発拠点・オフィスを視察させていただきました。

実際にSUNDAが設置されている村の主力のハンドポンプ井戸が壊れた際に使用していた水源が劣悪で衝撃を受けました。

予備の水源
村長からの説明

大人ももちろんそうですが、村にはたくさんの幼い子どもたちもいて、この水を子供たちの飲み水にもしないといけなくなると考えると胸が痛みます。

SUNDAが機能すれば、井戸が壊れたときに修理するための費用を事前に少しずつ積み立てることができるので、このような問題に素早く対処することができます。

多くの事業は「社会的意義がある」ものですが、SUNDA事業は真に人の人生を変える・命に届く事業だと実感しました。

また、2022年のアフリカのスタートアップの資金調達額は約6500億円(約50億ドル)で欧米を筆頭にスタートアップの調達総額が減少する中、アフリカは前年と同水準を維持しています。今後も人口が増加することからさらなる成長への期待も大きく、グローバル投資家も期待しています。

ビジネスという形で持続可能なソリューションの確立を目指すSundaの今後の成長には大注目です。

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