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#2-2 データの品質が決める生成AIプロダクトの競争優位

2026.2.19

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今回も、マネタイズが得意なエンジェル投資家として多くのスタートアップへ投資・支援を行ってきた川崎さんにお越しいただきました!

前回同様、スタンフォード大学の人間中心AI研究所(HAI)が毎年発行している『AI Index Report 2025』について、川崎さんが分析されたnoteをベースにレポートの内容を解説していただきました!
※本記事は2025年5月30日の収録内容をもとに制作しています。そのため、現在の状況とは一部異なる場合があります。

◼︎話者プロフィール

川崎裕一(エンジェル投資家)

1976年12月20日生まれ。1999年、慶応義塾大学経済学部卒業、日本シスコシステムズ株式会社入社(現シスコシステムズ合同会社)、ネットイヤーグループ株式会社を経て、2004年8月、株式会社はてな入社。同年12月同社取締役副社長に就任。2010年2月、株式会社kamadoを設立し、代表取締役に就任。2012年12月、株式会社ミクシィが株式会社kamadoを買収。これに伴い2013年1月より株式会社ミクシィに入社。2013年1月24日同社執行役員クロスファンクション室室長。2013年6月25日同社取締役。2014年8月11日スマートニュース株式会社執行役員広告事業責任者、投資事業担当。2024年4月よりエンジェル投資家。 

競争に絶望するな──「モデル」ではなく「実装チーム」を見よ

——AIの進化があまりに速く、「もうやることがない」と感じる起業家も多いのではないでしょうか。
その気持ちはよく分かります。
Xを見れば新しいモデルの話題が流れ続け、Google I/Oのようなイベントでは検索やショッピングの高度化が発表される。自分の領域にも次々とプレイヤーが入ってくると、気持ちが折れそうになります。

ただ、どこかがすべてを独占することはありません。
「そこまでできるなら、もっとニッチに行こう」と考えればよいのです。ニュースを見て諦める人が多いからこそ、やり続ける側にチャンスがあります。

——レポートの中で「モデルではなく実装チームに貼れ」と書かれていました。
モデルの優劣よりも、どれだけ触り、失敗し、試行錯誤したチームかが重要だという意味です。例えば、5人のチームが20回失敗すればそれは100回分の失敗経験になります。その中で本気で失敗を積み重ねたメンバーが集まれば、強い組織になる可能性が高い。

私はよく「成功にまぐれはあるが、失敗にまぐれはない」と言います。失敗の数は、次の成功確率を上げる材料になります。

——まずは触ることが大事だと。
そう思います。ChatGPTだけでなく、GeminiやClaudeも試してみる。日替わりで「今日はこれが強い」と言えるくらい触ってみることです。触らないまま議論しても、前に進みません。

AIを文化にする方法

——スタートアップの中でAIを浸透させるのが難しい、という声もあります。
AIを難しく考えすぎているのだと思います。
人間は本来、怠けたい生き物です。であれば、「どうやって今日30分早く帰るか」という目的でAIを使えばよいのではないでしょうか。

——具体的にはどういうことでしょうか。
例えば、レポート作成や投資家向け資料のような繰り返し業務はAIに任せればよいと思います。80点で十分です。100点を目指して無駄に時間をかける必要はありません。昨日と同じ仕事を、今日は30分短く終わらせる。そのためにAIを使うという発想です。

——経営陣もAIを積極的に使うべきでしょうか。
触るべきだと思います。ただし、戦略そのものをAIに聞いてはいけません。「自分たちは何の問題を解く会社なのか」という問いは、人間が考えるべきものです。

AIは戦術レベルでは非常に優秀です。しかし、仮説を立てたり、夢を描いたりすることは得意ではありません。責任も取りません。最終的に人間に残る仕事は、自分なりの仮説を出すことと、その結果に責任を持つことだと思います。

RAI元年──生成AI時代の責任とルール

——レポートではRAI(Responsible AI)も強調されていました。
今年は特に重要視されています。
生成AIが大量のコンテンツを生み出し、フェイクニュースや誤情報があふれたことで、「責任あるAI」が強く求められるようになりました。

——EUが先行していますね。
EUはGDPRなど個人情報規制が厳しい背景があります。差別的な発言や誤情報を出さない仕組みがなければ、企業は安心してAIを使えません。

——営業電話の自動化なども問題になっています。
人間は楽ができるならやってしまいます。営業電話が自動化されるのも、その延長線上にあります。だからこそ、技術だけでなくルールや倫理の整備が不可欠になります。スタートアップがその領域で価値を出す可能性もあると思います。

2030年、データは枯渇する──合成データは解決策になるか

——質の高い学習データが2030年までに不足するという話もありました。
天然資源に近いイメージです。インターネット上に存在する構造化データを今のペースで使い続ければ、いずれ枯渇するという前提があります。

——その解決策が合成データですか。
一つのアプローチです。
AI自身がデータを生成するという考え方があります。また、人間が教師として関与する「教師付き合成データ」もあります。

ただし、ある研究では、完全に合成データのみで学習させた場合、天然データの約50%の品質しか出なかったという報告もあります。合成データの品質課題は無視できません。

——それでも取り組む必要がある。
枯渇する以上、試行は避けられません。天然資源が限界に達したときに、新しい資源や製造方法が生まれたように、データ生成の方法も変わる可能性があります。

ここは明確な課題が見えている領域です。
だからこそ、スタートアップにとっては機会でもあります。


今回の内容はポッドキャストでも配信しておりますので、詳細の内容を知りたい方はぜひ音声でもお聞きください!

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