今回は、LazyAI株式会社代表の山口裕土氏を迎え、メールを起点とした業務自動化の可能性について掘り下げました。受信したメールから次のアクションを判断し、返信や社内業務までを自動化する「LazyAI for Mail」は、企業の業務フローをどのように変えようとしているのか。AIのインターフェースとしてのメールの可能性、エンタープライズ導入の戦略、そして生成AI時代における非構造化データ活用の考え方について議論しています!
※本記事は2026年2月25日の収録内容をもとに制作しています。そのため、現在の状況とは一部異なる場合があります。
◼︎ゲストプロフィール
【山口 裕土(LazyAI株式会社 共同創業者・CEO)】
LazyAI株式会社 共同創業者・CEO。2021年に日本マイクロソフトへ入社し、Azure OpenAIなどを活用したAIアプリケーション開発や新規ビジネス創出を、主にスタートアップ企業との連携を通じて推進するアライアンス部門に従事。生成AIの普及期に企業のAI活用支援に携わった後、独立してLazyAI株式会社を創業。現在は「LazyAI for Mail」を中心に、メールを起点とした業務の自動化や企業内業務プロセスの効率化を目的とするAIプロダクトの開発・提供を行っている。エンタープライズ領域におけるメールベース業務の自動化や基幹システム連携など、企業内の非構造化データを活用した業務改善をテーマに事業を展開している。
Microsoft出身起業家が挑む「メールネイティブAI」
——まず、自己紹介と事業概要を教えてください。
LazyAI株式会社の代表をしている山口です。新卒で日本マイクロソフトに入社し、Azure OpenAIなどを活用したアプリケーションや新規ビジネス開発を、主にスタートアップと一緒に進めるアライアンス部門で3年半ほど働いていました。ChatGPTが出てきたタイミングでAIの可能性を見ているうちに、自分でも事業をやりたいと思い独立しました。
現在は「LazyAI for Mail」というプロダクトを提供しています。メールを受信した瞬間に次のアクションを判断し、返信案の作成や業務処理を自動化するメールネイティブのAIプラットフォームです。
——どのような企業が主な対象なのでしょうか?
基本的にはエンタープライズ向けです。メールから始まる業務は企業内に多く、例えば基幹システムへの情報登録や発注業務などがあります。そうした業務をメール起点で自動化することを目指しています。
ただ、先週のリリースでは基本機能を誰でも使えるようにしたので、大企業以外のユーザーにも利用いただいています。
——リリース直後の反響はいかがですか?
思っていた以上に反響がありました。メールネイティブで最初から大企業向けのプロダクトを作っている点に注目していただいたのか、問い合わせも多く、かなり忙しくなっています。
なぜAIのインターフェースは「メール」なのか
——AIの入り口としてメールを選んだ理由は何でしょうか?
最初は日程調整を自動化するAI秘書のようなものを作っていて、SlackやTeamsのBotとして提供していました。ただ、Botは数が増えるほど「どのBotに何を頼んだのか」が分からなくなってしまい、ユーザーが混乱してしまうんです。
そこで試しにメールの中に機能を埋め込んでみたところ、ユーザーの利用率が大きく変わりました。メールは1通ごとにコンテキストが分かれていて、HTMLなのでボタンなどの表現も作れる。AIのインターフェースとして優れていると感じました。
——SIerとの関係はどう考えていますか?
日本でITを広めるにはSIerが非常に重要だと思っています。Microsoftのビジネスも多くがパートナー経由です。
LazyAIはメールから業務効率化できる分かりやすい入口ですが、その裏側では基幹システム連携などの大きな案件につながります。SIerにとっても、より重たいシステム開発につながる入り口になるよう設計しています。
非構造化データを価値に変える「メール」という入り口
——メール起点のAIにはどんな可能性がありますか?
例えば建設業界では、プロジェクトの進行や変更に関する重要なやり取りがメールに残っています。誰が何を言ったか、どの図面が最新かといった情報がメールやチャットに埋もれているケースが多い。
これをプロジェクト単位で整理し、基幹システムにデータとして蓄積できれば価値になります。ただ、そのためには基幹システムやデータ構造に合わせた処理が必要で、かなり重たい開発になります。
生成AIのビジネスは、議事録やチャット、メールといった非構造化データをいかに価値に変えるかというゲームだと思っています。メールはコンテキストの宝庫なので、その入り口として可能性を感じています。
——PMFの手応えはありますか?
まだPMFしているとは思っていません。ただ、以前作っていた日程調整のプロダクトと比べると商談サイクルがかなり早くなっています。
日程調整のサービスは売れてはいたのですが、1件売るのに5か月かかってMRRは6万円でした。一方でメールは課題が分かりやすく、社内説明も進みやすい。また、カテゴリーが伝わるようになってきている感覚があります。カテゴリーが言語化されると社内で理解が進み、導入が進みやすくなると感じています。
スタートアップに必要な「時間軸」の感覚
——VCとの議論で印象に残っていることはありますか?
LazyAI for MailでMRRが積み上がり、数千万円規模のカスタマイズ案件も取れるようになってきていました。順調だと思っていたのですが、投資家から「このビジネスはいつ1億円の案件が取れるのか」と聞かれて答えられませんでした。
なんとなく将来は取れそうだと思っていても、いつ実現できるのかが見えていなかった。スタートアップなら半年単位で1億円規模の案件を取れる設計を考えないといけないと言われ、かなり衝撃でした。
もう一つ印象的だったのが、「初めての起業家とシリアルアントレプレナーの違いはsense of urgencyだ」という話です。経験のある起業家は、この2年で市場を取り切らないと成長が止まる、といった時間軸の感覚を持っています。でも初めての起業家は、売れ始めた時点で満足してしまう。その違いを強く指摘されました。
——最後にメッセージをお願いします。
今かなり忙しく、人手が足りていません。「ワンミリオンダラーアジェンダ」という名前で求人を出しています。LazyAIの中で、億単位のビジネスになるテーマを一緒に探していく仕事です。スタートアップの生々しいテーマに興味がある方は、ぜひ応募してほしいと思います。
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