皆さんこんにちは、ANOBAKAでインターンをしています武内樹心(#jjj _jushin)です。
突然ですが仮想空間で自分の分身を使って生活をする、そんな未来が近づきつつあることを皆さんはご存知でしょうか?現在各所で話題に上がっている「メタバース」とそれを目指すスタートアップRobloxについて、記事を詳しく書いていきたいと思います!
メタバースとは?
そもそもメタバースとは何か、ご存知ない方も多いでしょう。『マトリックス』や『サマーウォーズ』などがイメージしやすいのではないでしょうか。
メタバース(Metaverse)とは、SF作家ニール・スティーブンスンによる「スノウクラッシュ」の作中に登場するインターネット上の仮想現実という概念が、そのまま流用されたものです。
「メタ」は「超越した、高次の」という意味、「バース」は宇宙と言う意味になります。このメタバースはインターネットの次のインフラとも言われており、Facebook、Googleなど世界中の企業から注目を集めています。
実はこの「メタバース」と言うモノ、この記事を書いている武内にもわかりません。もっと言えばこの世界に「メタバース」と呼ばれるモノを正確に予想し説明できる人はいないとも言われています。それほど新しい概念なんですね、、、
このメタバースの実現がもし叶えば、インターネットの次のインフラと言われるほどの革命をもたらすでしょう。インターネット登場以前の人々がインターネットの全容を予測できなかったように、私たちのもメタバースというモノを予測できないのです。
しかし現在分かっているメタバースの中心的な概念の説明は可能です。
1、永続性がある。
インターネットの世界では、電源を切ってしまえばそこで終了ですが、現実世界には終わりがありません。この意味でメタバースは現実世界に近い永続性があるモノであることが必要です。
2、自分のアイデンティティがある。
ここでのアイデンティティとは自分自身を表すアバターなどのことで、どのようなコンテンツでも変わらず使用できること。
3、現実世界と同期している。
常に現実世界と仮想世界が同期しており、時間などが一致している。
4、いつでも、誰でも、どこでも参加できる。
アクセス人数は無制限であり、広く一般的に公開されているということ。一つの場所に無制限にアクセスができること。
5、自社経済を持つこと
個人や企業が、仮想空間内でモノやサービスの開発、売買、投資、保有、さらに作ったものに対して報酬が支払われること。これらが現実世界の制度から独立して行われること。
6、様々なコンテンツ
ゲーム、スポーツやアーティストのライブ観戦に始まり、ファッションショーやトークショーなどリアルで実施されてきたイベントを行えること。将来的には日常生活や仕事もでもメタバース上で行うという日が来るかもしれません。
現在考えられるメタバースの特徴はこれくらいでしょうか。共通して言えることは、現実の世界とほとんど変わらない機能を備えているということでしょう。
このメタバースについてなぜ解説したのかというと、今回紹介するRobloxというサービスがこのメタバースと密接に結びついているからです。
ということでRobloxというサービスの全容とその凄さについて解説していきます。
Robloxのサービス概要
拠点:アメリカ
設立:2004年
累計調達額:8億5500万ドル
評価額:295億ドル
Robloxのサービス内容から紹介していきたいと思います。Robloxのサービス内容は簡単に言えば、ユーザーが作成したゲームをはじめとした3D体験を他のユーザーが利用できるプラットホームを提供するというものです。
ゲームだけではなくオンラインで友人とチャットを行うことも可能です。またコンテンツはユーザーによって更新され続けるので、毎日新しいコンテンツに触れることができます。
Robloxはクロスプラットフォームに対応しており、パソコン、モバイルデバイス、VRデバイスなど幅広い媒体で遊ぶことができます。
・Roblox Client (ロブロックスクライアント)
ユーザーが3Dデジタル世界を体験できるようにするアプリケーションそのものを指します。
・Roblox Studio (ロブロックススタジオ)
開発者と作成者が、Roblox Clientでアクセスできる、ゲームなどの3D体験やその他のコンテンツを作成、公開、操作できるようにするツールセットの集合体です。
・Roblox Cloud (ロブロックスクラウド)
ユーザーの共同体験プラットフォームを生み出すサービスとインフラです。
この場合の「共同体験」とはゲームをはじめとしたRoblox内で利用できる体験のことです。
以上の3つがサービスの概要です。
さらに特筆すべきものとしてRobuxというゲーム内通貨があります。この通貨を用いてユーザーはRoblox内でユーザー間の取引を行うことができ、Robloxはこの取引の際に手数料をもらうことで利益を得ています。
現在Robloxはプレイ時間が合計370億時間、同時ピークユーザーは520万人の超巨大プラットホームです。なぜここまで成長することができたのか、Robloxのサービスの特徴とともに説明していきます。
Robloxの優れている点とは?
次にRobloxのサービスはどこがすごいのかということを詳しく解説していきたいと思います。
サービスを作るツールとプラットホーム両方を提供している。
RobloxにはRoblox Studioというサービスがあることを先ほど紹介しましたが、このサービスがRobloxの目玉とも言えるでしょう。Roblox Studioでは特別なゲーム制作スキルがなかったとしても誰でも簡単に3Dゲームを制作することができます。
Roblox Studioのアプリケーションを開くと、この画面から自分が好きなようにカスタマイズすることができます。ご覧のように特別なコードなどは全く使うことなくゲームを作れるのです。
Robloxが対象にしているユーザーの年齢は7才から16才なので最低でも7才の子供が使用できるだけの簡易性ということです。現在Robloxでは700万人のユーザーがゲームを作成しています。
さらにこのRobloxはゲームを作るだけでは無くそれを公開するプラットホームを兼ねています。
このように多くのゲームがラインナップされています。ユーザーのプレイ回数や満足度などが表示されたり、自分の趣味にあったゲームがおすすめに出てくるなど、差し詰めYouTubeのゲーム版のような様相を呈しています。
自分だけのオリジナルキャラクターを作成できる
Robloxでは自分だけのオリジナルキャラクターを制作することができます。ここでいうオリジナルキャラクターとはどのゲームやコンテンツでも共通して利用できる自分のアバターです。
従来のゲームのようにあらかじめ決められたパーツの中から選んで作るわけではなく、このパーツでさえもユーザー自身が制作することができるのです。また他のユーザーが制作したものをゲーム内通貨Robuxで売買することも可能です。実際Roblox内では1億3000万個のアイテムが売買されました。
このようにすることで文字通り世界に一つだけの自分のアバターを制作することができます。オリジナリティのあるアバターが制作できる、さらにそれがどのコンテンツでも使用できる、これらはメタバースの条件の一つでもあり、今後より注目を集めるでしょう。
安全性の確保
Robloxが支持される理由の一つにその安全性があります。Robloxのようにプラットホーム型のサービスではどうしてもコンプライアンスに違反するようなコンテンツが発生しやすく、実際に多くの問題となるようなコンテンツも散見されました(性的な表現やグロテスクな表現など、教育上よろしくない表現)。
しかしRobloxはプラットフォームに違反するコンテンツや行動に対しては厳しく対処するために、日々コンテンツの巡回を行っています。またRobloxは児童オンラインプライバシー保護法およびGDPR規制(EU一般データ保護規則:EUにおける個人データの処理と移転に関するルールを定めた規則)に準拠するように設計されており、多くの国の規制当局、および安全グループと緊密に協力しています。
このような努力が背景にあり、非常に健全な状態を保っているため、安全に子供を遊ばせられる環境としてユーザーの保護者からの支持も得ています。
Robuxというゲーム内通貨によって実現した経済性
先ほどから出てくるRobuxというゲーム内通貨がRobloxの大きな特徴の一つです。Robuxは Roblox Clientならびにウェブサイトから購入できます。月毎のサブスクリプション・サービスであるRoblox Premium購入すれば、よりお得にRobuxを得ることも可能です。
Roblox内ではこのゲーム内通貨は珍しい使われ方をしています。Rubuxはユーザー間での取引をメインに使用されているのです。さらにこのRobuxは稼いだRobuxを選択した現実世界の貨幣に変換できるDeveloper Exchange Program(開発者交換プログラム)を提供しています。
RobloxユーザーがRobuxを稼ぐ方法は、自分が開発したゲームに課金アイテムを設定しユーザーに購入させること、またアバターのカスタマイズ用カスタマイズの作成販売です。
さらに開発者は Premiumサブスクリプション利用者のエンゲージメント(ユーザーがどれだけそのコンテンツに熱心に時間を割いているか)を大きくすることができれば、エンゲージメントに応じて支払いを行うシステムを通じてRobuxを稼ぐことが出来ます。
特にゲームの課金ポイントの設定は面白い側面があります。より稼ぎたいからといって課金アイテムを導入しすぎたりすると、プレイヤーは他の課金ポイントの少ないゲームに流れていってしまいます。
開発者はゲーム自体の完成度を高めるだけでなく、このようにゲームの課金ポイントについて仮説検証を学んでいくことによってゲーム開発だけではなくビジネスも学ぶことが可能です。実際にゲームの開発によって月額50,000ドルも稼ぐ人もいるようです。
2020年9月30日までの9か月間で開発者とクリエイターは、計2億920万ドルを獲し、2019年9月30日までの9か月間で獲得できた合計から7,220万ドルも上昇するなど、取引量は増加しています。
Robloxはこのユーザー間でのRobuxの売買の際に一部手数料を得ています。このようなシステムにすることによって、ユーザーが勝手に売買を進めてくれれば自動的に利益が得られるという仕組みになっています。このRobuxのシステムのおかげで、Robloxは収益を出すだけでなく、ユーザーが飽きないような新規コンテンツを開発することも容易に行えるのです。
Robuxを媒体としてユーザー間で経済活動が行われていることはメタバースの特徴の一つである経済性に非常に近しいものがあります。もし今後このような状況に加えて、ゲームやアバターのカスタマイズアイテム以外の開発も進めば、よりメタバースの実現に近づくでしょう。
Robloxの歴史と資金調達
○Robloxの歴史
Robloxの創業者はDavid Baszucki。彼は大学卒業後の1989年に教育ソフトウェア会社であるKnowledge Revolutionを設立、そこで汎用性物理学シミュレーターというプラットフォームを作成しました。ここにこのRobloxの原点があります。
これは物理学を学ぶ学生向けに作られたもので、物理学の実験を自分たちで行えるプラットホームでした。他にも機械物理学向けのプラットフォームや3Dのシミュレーターなど様々なサービスをリリースしました。
その後このKnowledge RevolutionはMSCソフトウェアというカリフォルニアに拠点を置く企業に買収されます。
後に彼はこの会社を去りは自身2社目となるBaszucki&Associatesという名前の投資会社を設立します。この会社に勤めている時にDavidさんはKnowledge Revolution(最初に創業した会社)時代に自分が開発に関わった汎用性物理学シミュレーターが学校の授業に導入されたのを知ります。
生徒達はシュミレーション中で実験を行うだけではなく、当初Davidが予測していなかったような方法で自分たちの想像力の赴くままにシュミレーターを使っていたようです。
子供達の想像力を見てDavidは、子供達が誰でも利用できるプラットフォーム上で「想像、創造、体験」を共有できるサービスを作ってみたいと考えました。これがRobloxの始まりです。その後、開発を始め、2005年にRobloxは完成します。
彼らは新しいサービスを作るにあたって、以下の4つのコンセプトを掲げました。
1.SNSのように友達と関われる世界であること
2.没頭できる3Dの世界。
3.極めてシンプルに情報を届けるクールな世界。
4.日々新しいコンテンツ(ゲームに限らない)が作成され続ける世界。
これらを実現したサービスがRobloxだったんですね。
次に資金調達情報に移ります。
○資金調達と最近の動き
Robloxの資金調達について説明していきます。
2008年1月には290万ドルをAltosVenturesから、2009年には同社とUberに投資実績のあるFirstRoundCapitalから220万ドルを調達します。さらに2011年にはこの2社から追加で400万ドルの融資を受けました。
2017年にはSlackに投資実績のあるIndex VenturesとFacebookに資金調達実績のある Meritech Capital Partnersから2500万ドルを調達をしました。2018年7月にはFacebookやSoftbankに投資を行ったTiger Global Manegementと同じくFacebookやInstagramに投資を行ったGreylockからシリーズFで1.5億ドルの資金調達を達成します。
2019年2月には中国の大手インターネット企業であり、世界最大のゲーム会社の1つであるTencent Holdings Ltd.の関連会社であるSonghuaと合弁契約を締結し、中国市場にも積極的に乗り出しています。2020年にはOculsなどに投資実績のあるAndreessen Horowitzから1.5億ドルの資金調達を行いました。
2021年にはAltimeter CapitalとUber、Spotifyに投資を行った Dragoneer Investment Groupから5.2億ドルの資金調達に成功し、資金調達額の合計が8.5億ドルを超えました。
このようにRobloxは名だたるVCから資金調達に成功しています。
また昨年はIPOを発表し上場申請書を提出したRobloxですが、その後IPOは一年後に延期されました。企業価値を上げて、より良い条件のIPOを狙っているのでしょう。
またその後にLoom.aiを非公開の価格で買収しました。Loom.aiは人間の表情をよりリアルに3Dアバターに反映する技術を開発していた企業です。Robloxは2016年からRoblox VRという3D技術を導入しており、現在Robloxが持つ3D体験の質を向上させようとしています。
Robloxはコロナ禍の外出自粛の影響で多くのユーザーを獲得し、企業戦略としてはさらなるコンテンツの充実を図っていくでしょう。ここ一年でRobloxは企業評価は300億ドルを超えるほどの急激な成長をしました、しかしこれはコロナ禍におけるゲームプレイ時間の影響も大いにある可能性も否めません。
この成長はコロナによる一過性のものなのか、今後どのように事業を展開していくのか、メタバースにRobloxは近づいていけるのか、今後に注目です。