こんにちは!KVPインターンのたかはしゆうじ ( @jyouj__ ) です。
このコロナ期間、アメリカでは巣ごもり効果で意外なものの消費が増えたのはご存知ですか?
なんと大麻やアルコール、ニコチンの消費量が増えているようなんです。アメリカの一部の州では娯楽用の大麻使用は合法となっています。
ずっと家にいることによる退屈さやストレスをこういったもので紛らわせているのでしょう。そのため、これらの商品を提供する企業の業績がアメリカでは伸びています。
そして、アメリカでは合法だが、ダークな領域を展開するスタートアップに投資するベンチャーキャピタルの存在があります。その一つが「Vice Ventures」です。
従来のVC(特にCVC)や金融機関はこうした領域のスタートアップに投資することを倫理的な理由から拒否していました。素晴らしいアプローチで課題を解決している可能性があるにもかかわらずです。
Vice Venturesは理念として、「一般的に”悪”とされている産業の中で、不名誉を克服し、素晴らしいリターンに向けて努力する”良”いスタートアップに投資する」と掲げています。
このVice VenturesのファウンダーはCatharine Dockeryという女性の方です。彼女はもともとウォルマートの民間投資部門にいました。
そして、ファンドに資金を拠出しているのは主にベンチャーキャピタリストです。その中には、「Andreessen Horowitz」のパートナーであるMarc Andreessenや「Tusk Ventures」ファウンダーのBradley Tuskがいます。
そんなわけで今回は、Vice Venturesの投資する一見”ダーク”なスタートアップについていくつかピックアップしてまとめてみました!
目次
- Recess – CBD配合のスパークリングウォーター
- Lucy – タバコに代わるニコチンガム
- maude – モダンでシンプルなアダルトグッズD2C
- INDOSE – パーソナライズ大麻吸引機
- Players’ Lounge – 誰でもゲームで賞金稼ぎできるプラットフォーム
1. Recess – CBD配合のスパークリングウォーター
会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2017年
累計調達額: 不明
最初にご紹介するのがCBDとアダプトゲン配合のスパークリングウォーターを提供している「Recess」です。
CBDとは大麻に含まれる天然成分です。ただし、CBDは違法ではありません。実際、日本でも合法とされており、近年注目を浴びています。
大麻が違法薬物とされる理由は、THCを含むからです。THCは精神をハイにさせたり、幻覚を見せたりします。
一方、CBDは中毒性もなく、リラックス効果が期待される化合物です。癲癇や不眠症に効果があるとされています。快適な生活を送る一助になるかもしれない注目の成分なのです。
そして、アダプトゲンはストレスへの抵抗能力を高める天然ハーブです。通常の容量では無害であり、有名なものとしては高麗人参などがあります。
Recessはそれらの成分に加えて、Lテアニンとレモンバームを配合したスパークリングウォーターを製造・提供しています。オレンジや桃など様々なフレーバーを用意しています。
しかし、Recessが本質的に提供しているものは水ではなく、人々が疲れた時にリラックスしてリセットできるソリューションです。人々の生産性・創造性をあげることを目指しています。
実際、公式サイトには「私たちの脳やブラウザにはあまりにも多くのタブがある。そういうわけで休憩(Recess)しましょう。缶を開けた時がリセットしてリラックスする瞬間です」と記載してあります。
https://www.instagram.com/p/CFSlQaXDbY0
また、RecessのInstagramは単なる商品の紹介ではなく、クリエイティブな作品になっています。そこから創造力向上を手助けする強いメッセージ性を受け取ることができます。
そして、Recessはそのユニークな世界観やマーケティング戦略が功を奏し、ミレニアム世代の人気を獲得することに成功しました。
RECESSは当初、上記のようなInstagramから自社サイトに流入させるD2Cマーケを行っていました(もちろん現在も行っていますが)。その後、飲料販売業者のBigGeyserと提携し、一部の州を除いたアメリカ全土に展開しました。また、旗艦店のオープンやイベントの開催などで積極的なブランディングを行っています。
Recessに対するミレニアム世代の熱狂は、リラックス効果や不眠症の解消だけでなく、若者の違法薬物吸引の習慣を壊す効果があるかもしれません。
次世代の「レッドブル」となることができるのか。それとも一過性のブームに過ぎないのか。今後の行方が気になります。
2. Lucy – タバコに代わるニコチンガム
会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2016年
累計調達額: 1000万ドル(約10.5億円)
次に紹介するのがニコチンガムを製造・販売する「Lucy Goods」です。
Lucyはニコチンを含有するミント・フルーツ・ココナッツ味のガムを9パックで35ドルのサブスク販売しています。従来のタバコにはない味と感触でタバコの代替品となることを目指しています。
公式サイトには、「ニコチンを楽しむ未来はここから始まる」と記載されています。中毒になって摂取するのではなく自分の意思で使う世界を謳っているのです。
実際、ブランドページの味の説明では「not nicotine」と強調しています。これは、味や感触からはニコチンが感じ取れないほど、クリーンで美味しいということを宣伝しているのでしょう。
また、Lucyはタバコ関連の害をなくすこともミッションとしています。タバコによる副流煙は大きな社会問題の一つです。Lucyのニコチンガムを使えば、周囲の人にはなんら害を及ぼさないでしょう。
さらにメリットがあります。それはガムはタバコほど依存症になりにくいことです。ガムはタバコよりもニコチンをかなりゆっくりと体内に取り入れるからです。
アメリカでは喫煙が原因で48万人が亡くなっています。また医療費と生産性の損失は33兆円にも上ると言われています。Lucyのガムはこれらの減少をもたらすかもしれません。
2020年2月にシリーズAで1000万ドル調達しています。同社はVice Ventures以外に、Y Combinatorなどからも出資を受けています。
Lucyは引き続き、喫煙者にアプローチし、タバコからの乗り換えを促しています。将来的には禁煙補助剤として政府に承認されるかもしれません。要注目です。
3. maude – モダンでシンプルなアダルトグッズD2C
会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2017年
累計調達額: 210万ドル(約2.2億円)
3番目に紹介するのがアダルトグッズを販売する「maude」です。
世界のアダルトグッズ市場は2兆円を超える成長市場です。しかし、それらの商品は男性を対象に開発された男性目線のものであることが多いです。
maudeを立ち上げたのは二人の女性です。女性の目線からセックス業界を再定義し、すべての人が親しみを持てるようにすることを目指しています。
maudeの商品はシンプルでモダンです。実際にショップを覗いてみましょう。とてもおしゃれでどこか無印のような感じです。
有害物質のないラテックス素材のコンドームやプッシュ式のローション、スタイリッシュなバイブなどがラインナップされています。ほとんどの商品で使いやすさと品質、シンプルさを強調しています。
同社の商品はバズフィードをはじめとする様々な媒体でポジティブなレビュがされています。そして、業績は2月以降、総売上高を200%上回る勢いで大幅に成長しています。
maudeはVice Ventures以外にも女性起業家を支援するX Factor Venturesからも出資を受けています。
すべての人にシンプルなセックスライフを掲げる同社はどのような形でEXITするのかが気になります。
4. INDOSE – パーソナライズ大麻吸引機
会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2017年
累計調達額: 450万ドル(約4.7億円)
4番目に紹介するのは大麻の吸引機を提供する「INDOSE」です。
最初に紹介したのはCBDで合法だったのですが、大麻はさすがに日本では違法です。しかし、アメリカではカリフォルニア州をはじめとして一部の州では大麻が合法になっています。
しかし、それでも過剰な大麻の摂取は大きな事故や事件につながります。INDOSEはそれをテクノロジーの力で解決しています。
INDOSEの製品は独自の測定技術を用いて、個人個人のその場にあった投与量に動的に調節してくれます。どれだけ吸引しているかを使用者は端末の表示からみることが可能です。
これによって、今までの制御できなかった吸引機とは違って、誰でも満足のいく快適な大麻ライフを送ることができるようになります。
同社はVice Ventures以外にCasa Verde Capitalから出資を受けています。累計調達額は450万ドルです。
アメリカではますます大麻市場が大きくなっており、同社の成長は必然でしょう。今後に要注目です。
※日本では大麻は違法です。絶対に使用しないでください。
5. Players’ Lounge – 誰でもゲームで賞金稼ぎできるプラットフォーム
会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2015年
累計調達額: 370万ドル(約3.9億円)
最後に紹介するのが、ゲーマーが賞金を獲得できるプラットフォーム「Players’ Lounge」です。
一般的なeSportsの大会とは違い、Players’ Loungeはゲームスキルが同程度のプレーヤーをマッチングさせて競わせます。
使用方法は簡単で、プレーヤーは賭け金として入場料を払い、一対一の対戦やトーナメントに参加します。Players’ Loungeは手数料として10%を受け取り、ゲームの勝者には報酬が支払われます。
一種のゲームギャンブルのため、ルイジアナ州などでは禁止されていますが、アメリカのほとんどの州で合法です。
ゲームのタイトルにはFIFA、NBAといったスポーツゲームからフォートナイトやApexまであります。
Players’ Loungeによって、eSportsのプロでなくともお金を稼ぐことができるようになりました。リアルの友達とお金を賭けてゲームを遊ぶプラットフォームとしても利用されています。
同社は最初、FIFAのゲームトーナメントをバーで行ったところからスタートしました。そこで、賭けを行うゲーマーはかなりいるが、それを行うことができるオンラインのプラットフォームがないことに気づいた同社創業者がPlayers’ Loungeを構築しました。
同社はVice Venturesだけでなく、カナダ出身のラッパーであるドレークや元Yahoo!のCEOマリッサ・メイヤーからも資金調達しています。累計調達額は370万ドルです。
ゲームでお金を稼ぐことがすべての人にとって可能になれば、ますますゲームシーンは盛り上がるでしょう。Players’ Loungeは大きなポテンシャルを秘めたスタートアップです。
以上、Vice Venturesの投資先をまとめてみました。
( 追記 )
最近、ダークな領域にいるスタートアップのIPOも行われています。最も有名なのは、おそらくカナダの医療用大麻製造・販売の「Tilray」でしょう。
2013年に設立され、2018年にNASDAQに上場しました。同社は現在、北米だけでなくヨーロッパやオセアニア、ラテンアメリカなどでも事業を展開しています。
このように、アメリカの投資家たちはこういったダークな領域のスタートアップに注目しています。
Vice Venturesも投資の際に、EXITできるポテンシャルがあるかを判断基準の一つにしていると述べています。M&Aなのか、IPOなのか、どのような形でEXITするのでしょうか。今後のトレンドとなりそうです。
———-
KVPはシードからアーリーステージのスタートアップに投資するベンチャーキャピタルです。現在、80社ほど投資しています。
起業家の方、ぜひ連絡ください!気軽に壁打ちしましょう!
TwitterのDMからお問い合わせください!