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音楽業界をエンパワーメントする海外の注目スタートアップ3選

2020.11.17

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こんにちは、KVPインターンのたかはしゆうじ(@jyouj__)です。

現在、音楽市場は目まぐるしい勢いで変化が訪れています。販売方法からプレーヤーまで入れ替わりが起こっています。

コロナの影響で、ライブイベントやフェスの開催中止・縮小が起き、代わってVRなどのオンラインプラットフォームでバーチャルライブが行われるようになりました

また、かつてほどCDが売れなくなっており、楽曲の主戦場はストリーミング配信に移っています。しかし、ストリーミング配信はアーティストへの収益性が低いことが問題視されています。

先日、ストリーミング配信大手Spotifyに対してロイヤリティの引き上げを求める「Justice at Spotify」キャンペーンが始まりました。1万人以上のアーティストが署名をしています。

僕自身としては音楽が好きなので、音楽業界にはより一層の発展をして欲しいアーティストにはもっと活躍して欲しい、という気持ちがあります。

なので、今回は音楽業界をエンパワーメントさせるサービスを運営するスタートアップを取り上げてみました!


目次

  1. Patreon – クリエイター向けクラウドファンディングプラットフォーム
  2. Splice – 音源サンプルのマーケットプレイス & 音楽制作のコラボレーションツール
  3. Mandolin – バーチャルライブのためのオールインワンプラットフォーム

1. Patreon – クリエイター向けクラウドファンディングプラットフォーム

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会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2013年
累計調達額: 約2.56億ドル

まず1社目は、クリエイター向けのクラウドファンディングプラットフォームの「Patreonです。評価額12億ドルのユニコーンです。

Patreonの使い方は簡単です。クリエイターはPatreonにサインアップして自身のページを開設します。そして、そのページからファンの寄付を募ることができます。

Patreonを使うことで、クリエイターは自分の投稿した作品から直接生計を立てることができます。また、支援者もクリエイターからの限定特典を手に入れることができるので、より強い繋がりを感じることができるような仕組みになっています。

また、ファンは単発の支援だけでなく、月固定のサブスク支払いもできます。これはクリエイターへの継続支援をもたらします。ファンクラブサイトと同じ仕組みです。

寄付額に応じて、アクセスできるコンテンツを制限することができます。カスタムRSSフィードの利用やディスコードとの連携も可能です。

Patreonは寄付の際に、プラットフォーム利用料として5%を徴収しています。また、決済処理手数料としてさらに5%かかります。これがPatreon社の主な収益となっています。

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(Graphtreonより)

現在、Patreonを利用するクリエイターはYouTuberやTikToker、ゲーム配信者、ミュージシャン、小説家、イラストレーターなど業種はさまざまです。少なくとも支援者を1人以上獲得しているクリエイターの数は18万人います。

一方、クリエイターを支援したアクティブなユーザー数は600万人にも及びます。Patreonは現在までに20億ドル以上をクリエイターに支払ったとしています。

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PatreonはミュージシャンのJack Contと技術者のSam Yamによって立ち上げられました。Jack ContがYouTube動画で稼ぐために思いついたものだとされています。

同社は今年9月にシリーズEで9000万ドルの資金調達を実施しました。2013年のシードラウンド以来の累計調達額は約2.56億ドルにものぼります。評価額は12億ドルとなり、晴れてユニコーンとなりました。

このラウンドでは377社のExitを出している老舗VCのNew Enterprise Associatesと世界最大規模の独立系資産運用会社Wellington Managementが主導しました。

登録クリエイター数や寄付額が右肩上がりの同社ですが、プラットフォームは幾度か苦難を迎えていました。

2015年にPatreonは大規模なハッキング攻撃を受け、15GB相当の顧客情報が流出しました。230万人の個人情報が公開されてしまう事態になりました。

そして、今年はアメリカ大統領選を控え、Qアノン思想を宣伝するアカウントを取り締まらなければなりませんでした。この動きはFacebookのQアノン関係のアカウント削除やYouTubeのQアノン宣伝動画投稿の禁止に追随した動きです。

Qアノンとは、悪魔崇拝・小児性愛者の秘密結社がアメリカ政府を裏で牛耳り、トランプ大統領がその団体と戦っている英雄だとする陰謀論です。Qアノン思想は完全なデマではあるが、インターネット上では一定数の勢力を誇っています。

ある程度の影響力を持ち、社会的責任を果たす必要のあるソーシャルプラットフォームにまで成長したPatreon。今後どのように展開していくのでしょうか。注目です。

2. Splice – 音源サンプルのマーケットプレイス & 音楽制作のコラボレーションツール

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会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2013年
累計調達額: 約1億ドル

次にご紹介するのが、アーティストをサポートするサービスを複数運営する「Spliceです。

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Spliceの中でも一番有名なサービスはおそらく「Splice Sounds」でしょう。Splice Soundsとはサブスク型のサンプル音源マーケットプレイスです。

月額7.99ドルで利用者は最大100個のロイヤリティーフリー音源をダウンロードし、自分の制作する音楽に使用可能です。また、解約した場合でもダウンロードした素材は永久に使用することができます。

プロが作ったロイヤリティーフリーのサンプル素材を集めて音楽を作ることは珍しくありません。実際、Splice Soundsで提供されている素材を大物歌手のアリアナ・グランデも使用しています。

このサービスは音楽クリエイターに新たな収益源を提供しています。サンプル素材の提供者はダウンロードされた回数に応じて報酬が支払われます。2019年末までにSpliceはクリエイターに2500万ドル支払っています

音源は300万近く存在し、ユーザー数は250万人を超えており、サービスは順調に成長しています。Spliceで提供されている素材の20%以上が女性によるものというのも興味深いデータです。

Splice Soundsは他にも便利な特徴があります。パック制ではなく、個別の素材でダウンロードできるので不要な素材はダウンロードする必要がありません。

また、検索機能も特徴的です。キーワードだけでなく、速さや楽器、ジャンルで絞ることが可能です。

Spliceが提供する他のサービスもざっくり見ていきましょう。

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「Splice Plugins」はサブスクで高品質なプラグインやDAW(デジタルで音楽を制作できるシステム)を提供するサービスです。月額で少しずつ払っていき、一定金額払い終えると自分のものになります。

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「Splice Studio」は音楽制作のコラボレーションツールです。無料で始められます。自動バックアップ機能や音楽版Githubと呼べるようなバージョン管理機能が導入されているので、いつでも時間を遡ることが可能です。

SpliceはSteve Martocciによって設立されました。彼はメッセージアプリ「GroupMe」の創業メンバーでもあります。GroupMeは2011年にSkypeが8000万ドルで買収しました。

Spliceの前回ラウンドは2019年5月のシリーズCです。累計資金調達額は約1億ドルになりました。ネクストユニコーンの筆頭です。

シリーズCではUnion Square Venturesが主導し、DFJ GrowthFounders Circle Capitalなどが参加しました。

世界中のアーティストの音楽制作をサポートするSplice。今後もさらに拡大し、さらなる貢献を音楽業界にもたらすのでしょうか。

3. Mandolin – バーチャルライブのためのオールインワンプラットフォーム

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会社概要
拠点: アメリカ
設立: 2020年
累計調達額: 500万ドル

最後にご紹介するのは今年設立したばかりの「Mandolin」です。

今年はパンデミックの影響で音楽フェスやツアーを行うことができず、多くのアーティストが収益源を失ってしまいました。その結果、会場やグッズ販売業社など付随する産業従事者にも経済的ダメージが生じました。

Mandolinはアーティストとファンだけでなく、会場も一緒に繋がることのできるバーチャルライブ支援のソリューションを提供しています。

アーティストはMandolin上でショーの予定を立てます。次に、Mandolinがパフォーマンスのためにショーのロジスティクスとセットアップを管理します。当日は会場かスタジオでバーチャルライブを行います。

Mandolinはチケット販売やVIP制、寄付などの一連のオプションをサポートしており、バーチャルライブにおける収益源をアーティストに提供しています。

また、観客分析をアーティストに提供しています。これはアーティストがデジタル戦略を立てるときに役立つでしょう。

一方、会場側は協力してくれるアーティストと共にショーの予定を立てます。そして、Mandolinのサポートの元、バーチャルライブを開催する会場になります。これによって、会場側にも収益が入ります。

ファンはそれら最高品質で準備されたライブを家の中で体験できます。この時の体験はおそらくライブ会場の最前列!友達や家族と最高に楽しめます。

Mandolinの価格体系はサブスクです。具体的な費用は観客の数などの要因で変動するようです。

同社は今年6月に設立したばかりですが、10月にはシードで500万ドルの資金調達を実行しました。セールスフォースのCEOであるMarc Benioffが参加しています。

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Mandolinは急速に拡大しており、「#iVoted Election Day 2020 Festival」(以下#iVoted)の独占プロバイダーとして契約を結びました。

#iVotedは投票率の底上げを目的とした無料のライブイベントです。今年はオンラインで11/3に開催されました。郵便投票用紙と一緒での自撮りか投票所の外からの写真をイベントの参加条件にしています。

今後もどのようなバーチャルライブイベントを手掛けるのでしょうか。

また、KVPでもライブ・ストリーミングサービス「MUSER」を運営するBEAMINGに投資しています!現在、日本の多くのアーティストに利用されています。

https://beaming.jp/

以上、音楽業界をエンパワーメントするスタートアップでした!

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KVPはシードからアーリーステージのスタートアップに投資するベンチャーキャピタルです。現在、80社ほど投資しています。

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