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TikTokとTinderの融合!?ビデオデーティングアプリ の台頭

2021.5.7

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皆さんこんにちは、ANOBAKAでインターンをしています、武内樹心(@jjj_jushin)です。ゴールデンウィークと共に終わると言われていた緊急事態宣言が延長され、まだまだ外出自粛は続きそうですね。

ところでこのコロナ禍の影響により、外出する機会が大幅に減少し、さらに大学や仕事もリモートで行われることが増加していることは周知の事実です。しかしコロナウイルスの感染が拡大し自粛ムードがあっても無くならないのは、出会いへの需要です。コロナ禍であるからこそ逆にマッチングアプリ市場が多いに盛り上がりを見せています。

また先日、ついにBumbleのIPOが話題になるなど、マッチングアプリ市場はまだまだ可能性をひめていると言えるでしょう。そこで今回は、新しい出会いを提供する海外マッチングアプリに着目してみました!

以下目次になります。

目次
#1 現在のマッチングアプリ市場
#2 Snack 
#3 lolly
#4 ビデオデーティングアプリは今後流行るのか?

#1現在のマッチングアプリ市場

簡単にマッチングアプリの市場のおさらいをしていきましょう。インターネットの普及に伴ってじわじわと普及していったマッチングアプリですが、パンデミックの後押しもあり市場は拡大の一途を辿っています。サイバーエージェント子会社のマッチングエージェントの報告によれば、日本国内の婚活・恋活マッチングサービスの市場規模は、2025年には市場規模が1060億円に達するようです。

マッチングエージェント/デジタルインファクト調べ

海外では女性からしかメッセージを送ることができないという女性主導がコンセプトのBumbleが上場。世界196カ国で使用、26ヶ国言語対応できるアメリカ発のマッチングアプリTinderは、ユーザー数は全世界で5000万人を超え、サブスクリプションによる収入はついにNetflixを超えました

Tinderと並んで日本国内で主に利用されているマッチングアプリの代表格は「Pairs」でしょう。2012年にリリースされて以降、現在ではユーザー数はアジアを中心に1,000万人を越え、日本国内の利用率No.1になっています。豊富な検索機能、さらに10万以上のコミュニティを通して条件や趣味・価値観の合う相手を見つけることができるということから非常に人気が高いアプリです。

また20代から30代前半ビデオチャットなどを利用してお相手とデートを楽しむ「オンラインデート」などを特徴とする、「タップル誕生」はユーザー数を600万人を突破しています。

さらに結婚を意識したユーザー向けの「Omiai」、メンタリストDaigoが監修した心理学を用いて相性の良い相手を見つける「with」など、日本国内だけでも様々なコンセプトのマッチングアプリで溢れています。


今回ご紹介するSnack、Lollyというマッチングアプリはお互いのアピールを動画で行うという今までに無いタイプのアプリです。まずはSnack、Lollyの簡単なUIを説明していきます。

#2 Snack

Snackホームページより引用

設立年:2020
拠点:カナダ、コロンビア(イギリス)
調達額:350万ドル
ラウンド:プレシード

登録

Snackでは身分証明と行った類いのものは求められません。本名で登録することも求められないので、とても簡単に初期設定を行うことができます。この時には自分の性別を選択するのですが、Man、WomanだけでなくAndrogyne(両性具有者、DSDとも呼ばれる)、Trancegender、Asexualなど多様な性の選択を任意で行うことができます。初期登録に必要な情報はホームの写真とニックネームと年齢だけです。

利用方法


まずは自分自身の動画を作成します。友人と楽しんでいる様子や、弾き語りを行う様子、自分のペットや育てている植物を載せる様子、TikTokのように音楽に合わせて踊る様子、また自己紹介を行うなど、様々な動画を投稿するようです。重要な点は写真をアプリ内に載せることはできないということです


スクロールした動画は何度でも再生することが可能で、気に入った動画はシェアすることもできます。まず自分自身の動画を作成しているユーザーでなければ、他のユーザーを閲覧することはできるものの動画に「Like」をすることはできません。

気に入った動画があれば「Like」(Tinderの「NOP」に当たるものはありません。)をし、公開コメントを行うことができます。自分が「Like」をした相手が自分の動画に「Like」をしてくれれば晴れてマッチングが成立。個別チャットで会話を行うことができます。

お互いにマッチングが成立したあとは、マッチングした相手の動画が自分のホーム画面び頻繁に表示されるようになります。そして「Like」の代わりにDMボックスが表示されます。

動画は何度でも投稿することが可能であり、SNSのように投稿した動画がアーカイブに保存されていき、他のユーザーのアーカイブの動画も閲覧、コメントすることが可能です。マネタイズは現在はしておらず性別に関係なく完全に無料でアプリを利用することが可能です。今後ユーザーの増加とサービスの改善によって有料サブスクリプションが開始される可能性もあります。

#3 Lolly


lollyホームページより引用


設立年:2018
拠点:サンフランシスコ
調達額:120万ドル
ラウンド:シード

Snackだけではなく、現在シードラウンドのlollyもまた、デーティングアプリ に動画を導入したサービスを提供しています。

残念ながら日本地域ではこのサービスは提供されておらず、海外版アップルストアのみで入手できる状態ですが、簡単にUIを説明していきます。

利用方法

LollyもSnackと基本的なUIは変わりません。Snackと同じくプロフィールでは写真の代わりに動画を作成して更新するスタイルをとっています。

画面は上下にスクロールさせることができますが、Tinderでいう「NOP」にあたる機能はなく自分にとっての好みのユーザーの動画にだけ反応することができます。


lollyとSnackの違いは「いいね」に当たる「Like」と「clap」機能の二つがある点ではないでしょうか。「Like」は他のマッチングアプリと同様で比較的プライベートな好意を伝えるもので、マッチングすれば相手とのダイレクトメールを行うことができます。

「clap」は純粋に他者のコンテンツを楽しむことが目的の機能で、評価の度合いによって50回まで「clap」することができます。これはTinderなどのマッチングアプリの「Like」というよりはInstagramやTikTokの「Like」に近いでしょう。

マッチングが成立した相手の動画は相手が更新するたびに自分のホーム画面に表示されるようになります。
こちらも現在は有料サブスクリプションを導入していないようです。

#4 動画デーティングアプリが流行る可能性はあるのか?

Snack、lollyのコンセプトは単純で、「TinderのようなマッチングアプリとTikTokをかけ合わせてみたら?」というものでした。なぜこのようなコンセプトでこのマッチングアプリが作られたのか、そして一体どのような層をターゲットにしているのか、分析していきたいと思います!

どのようなユーザー層にアプローチしたいのか

マッチングプリ市場は現在、婚活(結婚を見据えた真剣な出会いを求める)と恋活(結婚までは考えておらずカジュアルに恋人が欲しい)の二つに大別されています。また年齢層によっても使用するアプリは異なります。


Snack、lollyのプロフィールはニックネームと年齢、住んでいる地域のみで、職業や趣味など自分自身について詳しく文章を書くスペースはありません。格式ばり長々としたプロフィールを読み込み理想の相手を探すと言うよりは、まずは動画を見て直感的に自分とフィーリングの合う相手を探すと言うことでしょう。

動画を用いて自分をアピールすること、プロフィールの情報量が少ないことから考えると、どちらかというと婚活というよりはカジュアルな恋活、もっと言えば恋人に限らず様々な出会いを見つけることが目的のユーザーを対象にしていることがわかります。

さらに言えば長々とした文章は苦手で、InstagramやTikTokに慣れ親しんでいる人々。まずは写真などの視覚的な情報メインで相手を選び、あとは実際にデートしてみて自分に合うか確かめると言った人々がターゲットでしょう。結果的にSNSに慣れているZ世代あたりがこのような条件に合致します。

長い文章が苦手、かつ結婚を見据えているわけでは無くカジュアルな出会いを求める10代20代の若い世代にとって、写真ではなく動画を用いたマッチングアプリは非常に有効かもしれません。

追い風となるTikTokの普及

この動画を用いたSnackを後押しする要因があります。それはTikTokの流行です。App Annieの予測によれば、2021年にはTikTokはFacebook、Instagram、Messenger、WhatsApp、YouTube、WeChatと並んで10億人の月間アクティブユーザー(MAU)の獲得を達成するだけでなく、最終的に12億人の平均月間アクティブユーザーに到達するとされています。

世界最大規模のモバイル市場であるインドにおいてTikTokが禁止されながらもこの月間アクティブユーザー数ですから、TikTokの人気がどれほどのものか理解できるでしょう。

TikTokが出現する以前であれば、SNSように他者に発信するために動画を取るということは一般的ではありませんでした。しかし、TikTokが普及したことにより10代20代を中心に動画作成に抵抗の無い世代が増えてきました。事実TikTokのユーザーのうち、10代が16.9パーセント、20代が22.3パーセントです。

またTikTokアプリ内で15秒から30秒ほどの動画の加工作成が簡単にできてしまうということ、InstagramやTwitterでもストーリー機能が充実するなど、動画への抵抗感の無さと動画作成のクリエイティビティを培いやすい環境が整っているのはZ世代ならではと言えるかもしれません。

動画マッチングアプリの利点

同じくユーザーの約50パーセントが10代から20代のTinderは写真のみでユーザーの好みを識別するというものであり、右スワイプならばLike、左スワイプならば出会いとしては非常にカジュアルです。しかしTinderの識別方法では相手がどのような人物なのか、その人間性まではわかりません。

日本のユーザーの中には自分の画像を使用していなかったり、プロフィールをほとんど書いていなかったりといったことが頻繁にあります。またLikeをする側、特に男性ユーザーはマッチング率の低さをカバーするために相手の写真もろくに見ずに「Like」を連発するということもあります。

Snackの創業者であるKimberly Kaplanによれば、近年マッチングアプリ特にTinder内ではユーザー間でこのような現象が起こっていることはご存知でしょうか。マッチングした後に個別チャットを使用する代わりにInstagramのDMに移り会話するという現象です。

この時話題を探すところから会話を始めるというよりは、お互いのSNSのストーリーや投稿を見ながらカジュアルな会話を楽しむというところが特徴です。お互いをよく知るために、相手の日常がかいま見えるSNSを見るというのは非常に効果的だと言えるでしょう。

このような傾向を考えると、Snackでは最初の会話が「こんにちは。」や「初めまして!」と言った無難なものではなくお互いの動画について言及し会えるという特徴があります。マッチング直後の会話がストレスだ、めんどくさいというユーザーのストレスを軽減することができるのではないでしょうか。

またマッチングしたあとは相互に「Like」した相手の投稿が頻繁に自分のホーム画面に表示されるようになり、話題提供に事欠かないでしょう。まさにInstagramやTikTokのようなSNSのアカウントを相互フォローしているような状態になるわけです。

資金調達と今後の動き

lollyはSV Angel、So-Fiの共同設立者であるDaniel Macklin、WiredVenturesの共同設立者であるJaneMetcalfe、元SVAngelのゼネラルパートナーであるKevinCarter、Correlation VenturesNext CoastVenturesなどから110万ドルの資金調達に成功しています。

一方Snackはlollyよりも創業年数がまだ短いものの、KindredVenturesCoeliusCapitalが主導し、Golden VenturesGarage CapitalPanache VenturesN49Pが参加して350万ドルの資金に成功。創業して一年あまりであること、初期費用にコストがかかる領域ではないことを考慮すると、プレシード期での350万ドルの資金調達は大きいのではないでしょうか。

もちろんlolly、Snackは共にシードラウンド、プレシードラウンドであるため、相対的に見ると大型資金調達ではありませんが、今後大型資金調達を達成する可能性は十分にあるでしょう。

TikTokとTinderを合成してできたマッチングアプリであるSnackですが、肝心の動画作成機能はまだまだ発展途上段階であり、TikTokほど編集の幅が広くないと言うことが問題点です。

Snackの創業者であるKimberly Kaplanも課題として挙げていますが、いかにしてこの動画作成機能をアップデートさせていくか、またどのような有料サブスクリプションを導入するのかと言ったところが課題となるでしょう。TikTokレベルまで動画作成機能を充実させることができれば、TikTokなどの動画加工に親しんだユーザー達が増加するかもしれません。

様々なコンセプトを持つマッチングアプリが乱立する現代ですが、今回ご紹介したSnack、lollyはただ単に動画を用いたマッチングアプリというわけではなく、カジュアルでありながらも相手の人間性までわかる可能性を秘めたマッチングアプリです。「手軽でありながらも相手の人間性まで見定める。」一見矛盾していますが、これこそがZ世代が求める次世代のマッチングアプリかもしれません。

参考資料

Snack, where TikTok meets dating, gets $3.5 million in funding

Q&A: Kim Kaplan of ‘TikTok Meets Tinder’ Dating App Snack

What Is Snack? This Dating App Aimed at Gen Z Is Inspired by TikTok

Meet Lolly, The New Gen-Z Dating App Combining TikTok And Tinder

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