INSIGHT

インサイト

エンタメだけじゃない!VR領域で注目の海外スタートアップ2選

2020.11.26

RSS

こんにちは、KVPでインターンをしています、武内樹心(@jjj_jushin)です。

コロナウイルス感染予防のための外出自粛、5Gの世界的な導入の進行が、VR領域のスタートアップの追い風になってきています。

現在のAR・VRの世界市場は、IDCの調査によると89億ドルとも言われています。また2023年には市場規模は1,607億ドルとも言われており、VRは今最も成長している領域の一つです。

現在VR技術はあらゆる領域で使用されており、ゲームや音楽などのエンタメに始まり、医療、金融、教育など多種多様です。

今回はその中でも日本では見られないVR領域のスタートアップを紹介していきます!

それでは早速紹介の方に移っていきます!


1.Mursionーオンライン職業トレーニングプラットホーム

画像1

会社概要
拠点:アメリカ
設立:2015年
累計資金調達額:1,500万ドル


まずご紹介する企業は、オンライン職業VRトレーニングプラットホームを提供するスタートアップ、「Mursion」です。2015年に設立され、アメリカのサンフランシスコに拠点を置いています。

Mursionのサービス内容の説明をしていきます。

Mursionが提供するオンライン職業VRトレーニングプラットホームとは、従業員の職業上のスキルを向上させるVR体験を、オンライン上で提供するサービスです。

Mursionは人工知能とVRを組み合わせて職場での状況を再現する独自のシナリオを作成しています。アバターの動きは実際の人間の役者が行ったものを再現しており、非常にリアリティがあります。

利用者はVR空間内でリアルなアバターと会話し、職業に必要な対人関係スキルを向上させることができます。

このように最新のVR技術を用いているMursionですが、スキル上達のための実践的なトレーニングを行うVRを導入すること自体は、実は最新のアイデアではありません。

従来、コストや安全性などの問題から現実世界で実際に体験することが難しい状況をVRで再現し、訓練することは行われてきました。

Mursionの革新的な取り組みは、従来にはなかったソフトスキル習得のためのVRトレーニングを提供していることです。

ソフトスキルとは、資格や情報処理能力といった実務的な技術であるハードスキルとは異なる、コミュニケーション能力や共感能力などの定量化出来ない能力のことを指します。

ソフトスキルは機械の代替が不可能な人間の能力の一つであり、従業員のソフトスキル習得に様々な企業が注目しているため、今後このようなサービスの需要は高まりそうです。

Coca-Cola、T–Mobile、Best Western、Nationwideなど著名な世界的企業がMursionのサービスを導入し、パートナーシップを結んでいます。

Mursionはビジネス、教育、医療、軍事・防衛の4つの領域でVRトレーニングサービスを提供しています。

それでは領域ごとにサービスの内容を説明していきます。

画像2

一つ目の領域はビジネスです。

Mursionはカスタマーサービス、営業力の向上、会社内でのリーダーシップや人間関係のトラブル解決能力の養成を目的とするVRトレーニングを提供しています。

営業力向上のためのVRトレーニングでは、参加者を営業上困難な状況、例えば頑固なクレーマーの対処現場などに没入させます。AIが扮するクレーマーに対応し、話を進める訓練を行うことで、参加者は顧客のニーズを把握し、対立を解決することを求められます。

このトレーニングは有効なようで、フロントデスク従業員の訓練をMursionで行ったベストウエスタン・ホテルでは、実際にゲストの満足度が平均して2〜5パーセントほど上昇したそうです。

MursionのVRでは、マネージャーなどに向けた、社内での人事や人間関係のトラブルへの対処訓練も行っています。

グローバル化が進んだ現在の企業内では、人種、性別、年齢など様々な問題があり、それらへの対応やリテラシーの強化も求められています。社員間でのトラブルへの対応をVR内でアバターと会話していきながら実践的に学んでいきます。

二つ目の領域は教育です。具体的にはVRで学校のクラスを再現し、利用者は生徒を模したアバターと会話し、実際にその中で授業を行っていきます。VRを通して教師がクラス運営を学び、生徒とのコミュニケーション能力養成を目指します。

現在海外の約80以上もの高等教育機関が、現役教師や教育学系の学生の専門能力開発のためにMursionのサービスを導入しています。

三つ目の領域は医療です。患者をVRで再現し、それらへの対応を医療研修生が行うことで患者への対応スキルを向上させようというのが狙いです。

訓練のシナリオは多岐に渡っており、心理学者が行う治療、看護師の患者への対応、外科手術後の患者への説明、小児医療従事者が行う子供とその親を交えた診察など医療現場で想定されるあらゆる場面を再現し、その状況に合わせた研修を行うことが出来ます。

このサービスも多くの医療機関で導入されており、医療従事者の実戦経験の不足を解決する方法の一つとなるでしょう。

画像3

最後の領域は防衛・軍事関係です。このサービスは軍事関係者に向けて作られています。

小規模の部隊の作戦を再現するVRは存在しますが、Mursionは大規模な防衛作戦におけるリーダーの判断力や統率力を向上させるシナリオを制作しています。

利用者は実際に指揮官となり、紛争や大規模な作戦という非常に大きなプレッシャーのかかるシナリオの中で作戦上の判断を下します。この訓練によって極限状態での仲間とのコミュニケーション能力や、判断能力、リーダーシップの養成を行っていきます。

ところでこのMursionは、2015年にMark Atkinsonによって設立されました。

Markは教育関係のスタートアップに力を入れる連続起業家です。

Markは1999に年オンライン学習教材を提供するTeachscape,Incを設立。現在は前述のMursionも含め、その他4社の教育系スタートアップの取締役を務めています。

また、教育コンサルティング会社であるEducopiaLLCの社長でもあります。幼稚園から高等学校までの教育者にカスタム開発の成績評価を提供する、独自のWebプラットホームを提供しています。

次に、Mursionの資金調達の経緯を追っていきましょう。

Mursionは2017年の12月に254万ドル、2018年の10月でさらに450万ドルを調達。

2019年の3月にはシリーズAとしてNew Market Venture Partners など計7社から800万ドルを調達し、累計調達額は1500万ドルとなりました。

VRトレーニングを用いたソフトスキル養成の需要は拡大しています。Mursionは今後大きく成長していくスタートアップの一つでしょう。

VRによるオンライントレーニングは今後も注目の分野です!

2.Virtuleapー医療のためのVR脳トレーニングアプリ

画像4

会社概要
拠点:ポルトガル
設立:2018
累計資金調達額:90万ドル


次に紹介するのはVR×health×educationのスタートアップである、Virtuleapです。VRヘルスケアもまた、コロナウイルス感染拡大によって注目を浴びている分野です。

Virtuleapの具体的なサービス内容は、EnhanceというVRを使用した脳トレーニングゲームアプリの提供です。このゲームはOculs、HTC、ValveのVRヘッドセットを利用しプレイすることができます。

画像5

ゲームは一回のプレイが2、3分ほどの、モグラ叩きなどの単純な9種類のゲームのプレイを通して、ユーザーは記憶力、問題解決力、運動制御能力 、空間把握など多岐にわたる認知能力のトレーニングを行うことができます。

従来の二次元の脳トレーニングよりもVRを用いた三次元の脳トレーニングの方が空間把握能力の向上など、より認知的効果が期待できるようです。

またこのゲームは聴覚科学を導入しており、フェーズロックと呼ばれる現象を利用者の脳に引き起こす、特定のリズムの音楽をゲーム内に使用することで、プレイヤーは通常よりもゲームに集中することが可能になります。

フェーズロックとは、脳の周波数に合わせた特定の周波数を流すことで、神経活動をより効果的にコントロールをすることを指します。

神経科学と行動科学における最新の研究を利用したこのゲームは、アルツハイマー病等の認知疾患の早期発症を検出することにも利用されるなど、医療の場で導入されています。

簡単なゲームをするだけで医師の診察を受けたり、長い調査を受けることなく認知機能に関する患者のデータを簡単に収集することができるためです。

Virtuleapのもう一つのサービスはゲームに関する管理パネルや顧客ダッシュボードです。このダッシュボードは追跡したいユーザーの数に応じて料金を支払えば誰でも利用することが可能です

収集された認知能力に関するデータは、詳細に分析すれば認知に関する様々な研究に役立つでしょう。

例えばVietuleapは認知症やアルツハイマー病などの認知疾患を抱える患者を含むゲームプレイヤー数千人を追跡調査しました。彼らのプレイパターンを抽出して機械学習を通じて分析し、認知疾患の初期症状を分析しています。

このサービスは認知疾患についての研究データを求める医療機関から、認知能力を高めたいと考える、高齢者、プロスポーツ選手など幅広く利用されています。

画像6
画像7

2018年1月にポルトガルで設立されたVirtuleapは、2018年に約17万ドル、2019年に約63万ドルを調達、2020年には10万ドルを調達し、累計資金調達額は約90万ドルとなりました。

現在Virtuleapはシード期であり、投資を行ったVCはBoostVC , Entrepreneurs Roundtable Accelerator,StatUp Health などの7社です。

また2020年7月に正式にEnhanceがリリースされ、米国最大の高齢者を代表する組織である3,800万人のAARP(全米退職者協会)や北西ヨーロッパで最大のヘルスケアプロバイダーであるSyncVR Medicalなどの多くの顧客がいます。

Virtleapが関わるテレヘルス(遠隔医療)と呼ばれる領域は、コロナウイルスの世界的流行を機に注目されています。

MaCkinsey&Companyの調査によれば、仮想医療が将来的に医療提供システムに深く組み込まれる可能性が大きく、将来的に遠隔医療が充実して行けば、全体的な医療コストを2〜3パーセント削減することができるとのことです。

またその利便性から、患者が本来必要とする治療をよりスムーズかつ十分に提供できるようになりそうです。

Virtuleapはこのサービスで、VRをただのエンターテインメントとして利用するのではなく利用者の能力をテストし医療に活かすという試みをしたという意味で、革新的だと言えるでしょう。

今後拡大するであろうVRを利用した遠隔医療も今後注目です。

VR分野のスタートアップの紹介は以上です!

KVPはシードからアーリーステージのスタートアップに投資するベンチャーキャピタルです。現在、80社ほどに投資しています。

企業家の方、ぜひご連絡下さい!気軽に壁打ちしましょう!以下のフォームよりお待ちしております。

応募フォーム

ANOBAKAコミュニティに参加しませんか?

ANOBAKAから最新スタートアップ情報や
イベント情報をタイムリーにお届けします。