著者: たかはしゆうじ( @jyouj__ )
20年以上、インターネット業界のはるか上空に君臨する巨人を豆の木をつたってやってきた小さな小さなジャックが打ち倒してしまうかもしれません。
私たちは何かを調べる際、たいていインターネット検索を行います。渋谷で評価の高い居酒屋を探したいとき、菅田将暉の顔を思い出したいとき、テレビの値段を比較したいとき、Google(あるいはYahoo!)のサイトのボックスに文字を打ち、Enterキーを押します。「ググる」という言葉が定着したように、検索エンジンというフィールドにおいてのメイウェザーはGoogleです。
Googleの検索エンジンの世界シェアは過半数を超えています。日本においても絶対的で、Yahoo!も実質的にGoogleのアルゴリズムを採用しているので、ほぼ全ての日本人が毎日お世話になっていると言っても過言ではありません。
一方で、長期政権には綻びが必ず見えてきます。質の低いアフィリエイトサイトが上位に表示されることで、“検索汚染”と呼ばれる事象が起きています。少し前には「WELQ事件」が起きており、記憶に新しい人もいるでしょう。また、私たちは無料で検索を行う対価に、自分自身のデータを提供しています。Googleはこのデータに基づいて、広告を改善し、利益をあげています。
個人情報を利用した広告商売は企業に効率的な販促手法を提供し、Googleを世界で最も富める企業に押し上げました。検索情報、位置情報、閲覧履歴、識別情報など収集するデータは多岐にわたります。データを集めれば集めるほど、Googleの足場を盤石なものになっていったのです。
しかし、昨今で状況は変わりました。ティーン世代では、InstagramやTikTokを利用してお店や観光地、美容院を調べる習慣ができてきました。また、アメリカやEUなどでプライバシーに関して、強く意識されるようになり、Googleの過剰なデータ収集への批判が高まっています。反Google的な動きも目立つようになりました。
図体のでかい巨人にはアキレス腱があったのです。この好機を見過ごせまいと、雪崩を打って新たな検索エンジンが出現しています。今回はそんな刺客たちを見ていきましょう。
DuckDuckGo
拠点: アメリカ
設立: 2008年
累計調達額: 約1.1億ドル
新興ではありませんが、プライバシーファーストな検索エンジンとして代名詞となっているのが“DuckDuckGo”です。同社は検索に関するデータについて個人と紐付けないことを約束しています。つまり、ユーザーの識別に付随するデータは一切収集していないということです。
ユーザーの検索情報などは匿名で収集していますが、追加の機能を選択することでさらにデータ収集の量を減らすことができます。収益はだいたいの検索エンジンと同じく結果ページの広告で、Amazonアフィリエイトを活用することもあります。
Neeva
拠点: アメリカ
設立: 2019年
累計調達額: 7750万ドル
“Neeva”は有料モデルの検索エンジンです。月額5ドルのサブスクリプションで利用することができます。特徴的なのは広告が表示されないことです。また、パーソナライズするためにある程度のデータを収集していますが、かなり低い基準になっています。
DuckDuckGoなどの検索エンジンはプライバシーファーストになっているとはいえ、広告によって儲けているため、ユーザーが広告をクリックすると最終的には広告提供者にデータが渡ってしまいます。一方で、Neevaはデータをマネタイズに利用していないので(サービスの改善には利用しているが)、提供されるデータについてユーザーの目の行き届くところで済みます。
同社はGoogleの元従業員によって設立されており、検索エンジンにおいて全く新しいビジネスモデルなこともあり、注目を集めています。
Brave Search
拠点: アメリカ
設立: 2015年
累計調達額: 4200万ドル
“Brave Search”はあらゆるプライバシー上懸念される情報記録を保持しない検索エンジンです。検索頻度、クエリの長さなどの指標のみ収集しており、郵便番号を手入力することでIPアドレスを使わず、該当するローカル検索結果を入手できます。
検索カテゴリは”Images”、”News”、”Videos”しかなく、読み込み速度も含めてGoogleには見劣りしていますが、今回紹介している検索エンジンの中ではトップクラスにプライバシーの面で配慮しています。
マネタイズモデルは今後確立するという方針をしましており、計画では広告なしの有料モデルと広告ありの無料モデルを掲げています。
どの検索エンジンもGoogleとの対抗からプライバシーファーストを掲げています。最近ではFacebookがWSJに社内文書をリークされ、IT大手への風当たりがさらに強まっています。また、Appleは情報保護に基づいたルールをApp Storeにアプリを提供する企業に求めています。
今後、情報に関する関心は各国政府、国民とも高まっています。新興勢力が支持を集めるならば、Googleも自身のビジネススタイルを見直さざるを得なくなるでしょう。
Don’t be evil.