ANOBAKAのアソシエイトの松永です。
2015年に国連で採択されたSDGs。
サスティナブルな社会変革に資する技術や行動は、ますます推奨されるようになりました。
ただSDGsが採択される前から資源の再活用は「地球のために良いコト」という認識は浸透しており「リサイクル」という言葉は皆様もご存知かと思います。
そんなリサイクルに関わる領域で、新しく注目されているのが「アップサイクル」という考え方です。
アップサイクル(upcycle)
廃物をそのまま再利用するのではなく、商品としての価値を高めるような加工を行うこと。古布や廃材を用いて、しゃれた小物を作るなど。
コトバンク
反義語として、ダウンサイクルという言葉があります。
“元々の価値より低いモノとして生まれ変わらせる”ことで、“新たな価値を生み出す”ということではアップサイクルと同じですが、ダウンサイクルは“元々の価値より低いモノ”として生まれ変わらせるという点がアップサイクルと異なります。
持続可能な豊かな社会を構築するにあたって、アップサイクルビジネスの成長が非常に重要といえるでしょう。
アップサイクルの潮流(ファッション/食品)
様々な領域でリサイクル/アップサイクルの必要性が叫ばれていますが、特にファッション領域と食品領域は大きな課題がある産業だとされています。
ファッション領域については、全世界で年間約228億着(約10兆円相当)の衣服が着られずに廃棄されています。またそれに関連するCO2排出量は約2700万トンと予想され、石油産業に次ぐ大きな社会課題と考えられています。
国連は、気候変動対策をグローバルに呼びかけるActNowキャンペーンの一環として2019年に「ファッションチャレンジ」を実施するなど世界的に関心が高まりつつある領域です。
大手アパレル関連企業がアップサイクルビジネスに取り組む事例は増加する一方です。
ペットボトルの再活用技術を持つ東レのアンドプラスや、デッドストック商品を活用したBEAMSビームスクチュールなど大手企業の取り組みも活発化してきています。
また、食品領域においても大きな課題があります。
国連食糧農業機関(FAO)が2011年に発表したレポートでは、食品の生産・流通過程で発生する食品廃棄物(Food Loss & Waste)が食料生産全体(40億トン)の1/3に当たる13億トンであることが示されました。
SDGsでも「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たり食料の廃棄を半減させ、収穫後損失等の生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことをターゲットの一つとして盛り込んでいます。
日本においても、事業系食品ロス量を2030年迄に2000年対比で半減させ、273万トンの食品ロスをカットすることを目標としています。
世界のプレイヤーの動き
世界でもアップサイクルビジネスを展開するスタートアップに注目が集まり、資金調達の動きも活発化しています。
Do Good Foods
社名:Do Good Foods
URL: https://dogoodfoods.com/
設立年:2015年
ファウンダー:Justin Kamine, Matthew Kamine
資金調達額:1億6,900万ドル
食品廃棄物を動物用飼料に変換するプラットフォーム「Do Good Foods」を運営。提携する小売業者から余剰廃棄食品を引き受け、自社工場で動物用飼料に変換。変換した飼料は養鶏農家に無償提供され、育った鳥を「Do Good Foodsブランド」として販売しています。2021年10月には、1億6,900万ドルの資金調達を実施。
The Renewal Workshop
社名:The Renewal Workshop
URL: https://renewalworkshop.com/
設立年:2015年
ファウンダー:Jeff Denby, Nicole Bassett
資金調達額:1,460万ドル(シリーズA)
アパレルファッションブランドの売れ残り品や廃棄処分予定品をアップサイクル・再販売するスタートアップ。ブランド企業とパートナーを組み、余剰品を引き取り、独自の清掃・品質チェックを実施。リニュードアパレルとして、同社のブランドマークを追加して、再販売を行っています。
Allbirds
社名:Allbirds
URL: https://www.allbirds.com/
設立年:2014年
ファウンダー:Joseph Zwillinger, Tim Brown
資金調達額:2億250万ドル
サンフランシスコ発のフットウエアメーカー。自然由来の素材を使用し、ペットボトルをアップサイクルした靴紐を活用するなど、環境配慮型のプロダクトが人気を博している。2014年創業だが、2018年にはユニコーン化。2021年の上場時には、およそ40億ドルの時価総額をつけた。
オールバーズは、純粋な「アップサイクル」銘柄とは言いづらいですが、サスティナブル領域の代表格のスタートアップとしてご紹介しました。
ANOBAKAの投資先でも、例えばファッション領域のアップサイクルで注目されているウィファブリックの「スマセル」なども急成長しています。
世界的潮流である「アップサイクル」の文脈で起業を考えている/資金調達を考えている方がいればお気軽にTwitterでご連絡ください。