ANOBAKAアソシエイトの小田です。
今月から「AI起業のヒント」と題して、月次で生成AIスタートアップの海外トレンドをお届けします。
具体的にはCrunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップの「月別の傾向まとめ」「注目スタートアップのご紹介」をお届けできればと思っております。
生成AI領域で起業を考えられている方は、事業のネタとしてご参考ください!
■月別の傾向まとめ
2023年7月にCrunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップ32社のジャンルの分類をしたグラフが下記です。
※生成AIスタートアップはMoatが築きづらく、資金調達ニュースを出さない企業も多いので、実際の調達社数は32社よりかなり多いと推定されます。
※記事の最下部に制作元リストのスプレッドシートを添付しております。
2023年春に資金調達ニュースの多かった「CS(カスタマーサポート系)」「テキスト、Code、3DCG生成」の調達ニュースの数が落ち着き「LLM」「HR」「Education」「専門業務効率化」など、モデルレイヤーや、個別具体的な課題の解決を志向するAIスタートアップの調達ニュースが目立ちました。
以下の2023年3~4月にCrunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップ77社のジャンルの分類をしたグラフと比較すると、傾向の変化が見て取れますね。
2023年3~4月のトレンドは、Youtubeでも解説しておりますので、是非ご覧になってください!
■注目スタートアップのご紹介
今回pickupした企業群から、アプリケーションレイヤーの注目スタートアップを3社ご紹介します。件数の多かった「HR」「Education」「専門業務効率化」から1社ずつご紹介します。
HR
2023年7月の資金調達スタートアップは4社でした。
HRの中でも採用や配置の機能においては「タレントとJOBのマッチング精度の的確さ」が重要な課題です。その中でも生成AIを活用し「マッチングプロセスの省力化・精度向上」を付加価値として提供するスタートアップが続々と出ております。
個人的にユニークさを感じたのはインドの「Expertia AI社」です。
同社は、IBMとMITの研究員であるAkshay Gugnani氏と、AIM/LSEへの上場後にKoovs.comからの撤退に成功した起業家Kanishk Shukla氏によって2021年に設立されました。
Expertia AIを活用する企業は、質問に答えることで「媒体に掲載する求人原稿」を簡単に作成することができ、25を超える媒体に即時に求人を掲載することができます。
そして求人媒体から応募のあった候補者から、求人とマッチ度の高い上位 10 人の候補者の情報を自動的にATSに連携できる仕組みです。
現在、500 社を超える企業が本サービスを積極的に利用しているそうです。
従来、求人媒体を活用して人材を獲得するには、「各求人媒体への問い合わせ&商談」→「各求人媒体毎の特性を踏まえた求人原稿の作成」→「応募者のスクリーニング」など、多岐にわたる工程をこなす必要がありましたが、Expertia AIを活用するとそれらのプロセスが殆ど自動化されます。
Expertia AIの描く世界観は、2021年にリクルートホールディングス代表取締役社長 兼 CEO 出木場 久征氏が理想として語っていた「ボタン一つで仕事に就ける世界」と近しいように思います。(同社のサービスが実現するのは厳密には「ボタン一つで良い人が採用できる世界」ですが)
https://recruit-holdings.com/ja/blog/post_155/
国内でも「HELLOBOSS」や「内定くん」など、利用ユーザーを伸ばしているHR×生成AIサービスが出てきており、今後の動向から目が離せません。
HELLOBOSS
内定くん
Education
2023年7月の資金調達スタートアップは4社でした。
従来人が担っていた「教える」という役割をAIに代替できれば、ユーザーは安価で質の高い&パーソナライズされた教育を受けることが可能になります。
この領域ではインドの「ZuAI社」が7月に40億ルピー(約70億円)の資金調達を発表しました。
インドでは生徒と教師の比率に大きな格差があり、例えば高等学校では生徒47人に対して教師が1人しかいないという状況です。
この状況に課題を感じた Anubhav Mishra 氏と Arpit Jain 氏は、AIを活用して家庭教師の問題を解決するために、2021年に ZuAI を設立しました。
ZuAIはインドの教育管理機関であるCBSE、ICSE、州委員会の公式カリキュラムに基づいて構築されており、生徒はクラスと科目を選択すれば「試験の受験」「分からない部分の質問」などが簡単にできます。
ZuAIでは「理系科目の回答にハルシネーションを起こさないための独自モデルの開発」「 3~4 つの言語モデルの中から、リクエストに応じて1つ以上の言語モデルをアクティブにし回答を返す方法の採用」など、回答の正確性を担保する取り組みを行っているそうです。
AI×教育の分野は今後もグローバルで大規模なユーザーを抱えるサービスが出てくることが予測されますが、新興のスタートアップはZuAI社のように「ローカライズしたサービスの提供」が1つの勝ち筋になると予想されます。
専門業務効率化
2023年7月の資金調達スタートアップは4社でした。
生成AIのテクノロジーを活用し、従来人が時間をかけて行っていた業務を効率化できる分野は多岐に渡ることが推測されます。
今回はセキュリティチェックシートの作成を効率化するイスラエルのスタートアップである「Vendict社」をご紹介します。
セキュリティチェックシートとは、ユーザー企業がクラウドサービスを導入する際に、自社の求めるセキュリティ要件や可用性を満たしているかどうかを事前に確認する目的で、事業者に記入を求めるシートです。
クラウドサービスのベンダーは各ユーザー企業毎に異なるセキュリティチェックシートのフォーマットに情報を入力する必要があり、大きな負荷になっています。時には月に何十件も似たような、しかし細部が異なるシートに回答する必要があり、この作業のために専任の担当者を置くベンダーまで存在するそうです。
Vendictはセキュリティチェックシートを自動生成できるツールです。
ベンダーは1つの信頼できる情報ソースをVendictに登録し、ユーザー企業から回答を求められているセキュリティチェックシートをアップロードすると、自動で回答が生成されます。
これによって従来負担となっていたセキュリティチェックシートの作成工数を大幅に削減できるそうです。
本領域では国内でもConoris Technologies社などが効率的なセキュリティチェックの運用を実現するSaaSを展開しておりますが、生成AIのテクノロジーがどのように更なる業務効率化・ガバナンス強化に寄与するのか、今後も注目したいと思います。
■終わりに
いかがでしたでしょうか!
ANOBAKAでは今後も海外の生成AIトレンドについての記事やイベントをお届けできればと思います!
生成AI領域で起業や資金調達を考えている方がいれば、是非お話しさせてください!
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ANOBAKA アソシエイト小田
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