ANOBAKAアソシエイトの小田です。
今月も生成AIスタートアップの海外トレンドをお届けします!
本連載では、Crunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップの「月別の傾向」「注目スタートアップ」をお届けします。
生成AI領域で起業を考えられている方は、事業のヒントとしてご参考ください!
※先月の記事はコチラ
■8月の傾向まとめ
2023年8月にCrunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップ59社のジャンルの分類をしたグラフが下記です。
※生成AIスタートアップはMoatが築きづらく、資金調達ニュースを出さない企業も多いので、実際の調達社数は59社よりかなり多いと推定されます。
※記事の最下部に制作元リストのスプレッドシートを添付しております。
8月は「原子力発電所の管理業務効率化」「助成金申請書類作成の簡易化」「サイバー攻撃の一次対応の省力化」「国際貿易における関税計算の省力化」など”専門的な業務を効率化する生成AI事業”の資金調達が多くありました。
2023年の上半期まではユースケースが幅広いテキストや画像を生成するAIスタートアップの資金調達が多くありましたが、直近になってより専門的な業務で活用できる生成AIソリューションを展開するスタートアップの資金調達が増えてきている印象です。
9/6~9/7に開催されたY CombinatorのDemo Dayでも生成AI系の企業が多くありましたが、上記と同様の傾向を感じました。
日本国内では専門的な業務で活用できる生成AIソリューションを志向するスタートアップの数はまだまだ少ない印象ですが、米国と同様、今後国内でもVerticalな領域に生成AIの活用が広がってくることが予想されます。
■注目スタートアップのご紹介
8月に資金調達を発表したスタートアップの中から3社をご紹介します!
1.「VCの投資検討プロセスの省力化ツール」DeckMatch
・会社名 : Deckmatch
・創業年 : 2023年
・所在地 : ノルウェー オスロ
・出資 : Alliance Venture 等
・調達額 : 約107万ドル
・カテゴリ : 調査分析・専門業務効率化
・リンク : https://www.deckmatch.com/
VCのアソシエイトが担う投資の一次検討を省力化するツールです。
著名なVCは連日大量のPitchDeckを受け取っており、その全てに目を通して投資検討をすることが困難という問題の解決を志向しています。
具体的には下図のように、Pitch Deckをインポートすると「周辺環境の分析」「ファンドのポートフォリオとの適合性評価」を含むサマリレポートの出力やCRMツールへの情報の自動入力ができるようです。
2023年8月16日時点では、約60社のVCにクローズドβ版を提供しており、POCを経てオープンβ版をローンチ予定とのことです。
「膨大な非構造データを分析しインサイトを抽出することに長ける」という生成AIの特徴を上手く活用し、専門的な業務を効率化できるユニークなプロダクトです。
2.「助成金申請の省力化ツール」Grantable
・会社名 : Grantable
・創業年 : 2021年
・所在地 : 米国 バージニア州
・出資 : Virginia Innovation Partnership Corporatio
・調達額 : 約15万ドル
・カテゴリ : 専門業務効率化
・リンク : https://grantable.co/
Grantableは、助成金申請者が少ない労力でより多くの資金を獲得できるようにするための、Generative AI を活用した助成金申請書類作成のソリューションです。
CEOのフィリップ・デン氏は、非営利団体の創設者として活動し、助成金が不足した個人的な経験を経て、同社を設立したそうです。
具体的には、Grantable AIに以前の助成金提案のソース資料をアップロードすることで、新規FMTでの書類作成を半自動化できるそうです。ソース資料が存在しない場合は、助成金申請書類の質問に対する回答を作成するためのあらゆるリソース(解答例や文章生成のアシスト)の提供が受けられます。
日本でも助成金の申請には外部の専門家を活用するケースも多く、生成AIを活用した「インハウスの業務支援」「専門家のエンパワメント」に資するプロダクトには、一定の需要があることが推測されます。
3.「ゲームのNPCに人格を付与するツール」Inworld AI
・会社名 : Inworld AI
・創業年 : 2021年
・所在地 : 米国 カリフォルニア
・出資 : Lightspeed Venture Partners
・調達額 : 約1.2億ドル
・カテゴリ : その他
・リンク : https://inworld.ai/
Inworld AIは、ゲーム開発の事業者がまるで命を持っているかのようなNPC(Non Player Character / ゲーム上でプレイヤーが操作しないキャラクター)を作成できるオープンソースツールの提供に取り組んでいます。
同社は複数のLLMを調整した固有のAIモデルを開発しており「NPCがプレイヤーの呼びかけにリアルタイムで応答する体験の最適化」「そのゲーム固有のコンテキストを踏まえた上でのインタラクションの最適化」を行なっているそうです。
また、同社のプロダクトである「Inworld Character Engine」は、業界トップのゲーム開発エンジンにも統合されており、例えばUnityの新しいAIマーケットプレイスで「Unity Verified Solution」として紹介されています。
同社のプロダクトが、今後のゲーム開発のスタンダードになれば、より没入感のあるゲーム体験が楽しめそうです!
巨額の資金が必要な難易度の高い領域ですが、モデルの開発からアプリケーションの提供まで一気通貫で行うことで、ゲーム産業に革新的な変革をもたらす可能性のあるソリューションです。
■終わりに
いかがでしたでしょうか!
ANOBAKAでは今後も海外の生成AIトレンドについての記事やイベントをお届けできればと思います!
生成AI領域で起業や資金調達を考えている方がいれば、是非お話しさせてください!
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ANOBAKA アソシエイト小田
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