ANOBAKAインターンの古市です。
今月も生成AIスタートアップの海外トレンドをお届けします!
本連載では、Crunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップの「月別の傾向」「注目スタートアップ」をお届けします。
生成AI領域で起業を考えられている方は、事業のヒントとしてご参考ください!
※前回の記事はコチラ
■今月の傾向まとめ
2024年5月にCrunchbaseに資金調達ニュースの掲載があった生成AIスタートアップは287社です。(2024年6月3日時点)
※生成AIスタートアップはMoatが築きづらく、資金調達ニュースを出さない企業も多いので、実際の調達社数は287社より多いと推定されます。
上記のグラフはcrunchbaseに掲載があり、2024年5月に資金調達を行なったGAIスタートアップについてのANOBAKAによる調査になります。
グラフを見ると、資金調達を発表したGAIスタートアップの数は急激に増加しており、非常に大きな生成AIの盛り上がりが現在起こっていることがわかると思います!
一方日本では海外に比較してまだまだ生成AIスタートアップの数は少ない状況ですが、この増加の波が日本に来るのもそう遅くないと思われます。
■注目スタートアップのご紹介
5月に資金調達を発表したスタートアップの中から4社をご紹介します!
1.「コンピュータビジョン開発のための合成データを提供するツール」DiffuseDrive
・会社名 : DiffuseDrive
・創業年 : 2022年
・所在地 : 米国 サンフランシスコ
・出資 : 500 Emerging Europe
・調達額 : 非公開
・カテゴリ : コンピュータビジョン、合成データ
・URL : diffusedrive.com
「DiffuseDrive」は、コンピュータビジョン開発のためのカスタム合成データを生成するツールを提供しています。AIにより高品質な合成データセットを迅速に作成できるため、実際のデータ収集にかかる時間とコストを大幅に削減することができます。
コンピュータビジョン開発における最大の課題の一つは、膨大なデータセットの収集とラベリングです。
「DiffuseDrive」は、AIを利用してシミュレーション環境内で合成データを生成し、様々なシナリオや条件下でのデータを簡単に作成できます。
マイクロソフトが「ICCV2021」で「Fake It Till You Make It」として発表し、合成データのみから人間の顔を解析できることを実証したように非常に正確性の高い合成データは十分に得られれば、同量の実データとほぼ同じかそれ以上の結果を出すことができると言われています。それに加えて、合成データによって学習された機械学習モデルは、学習データの量や網羅性が十分であるのかという説明が比較的容易になること、欧州におけるGDPR(一般データ保護規則)のような情報の流用の制限を気にしなくて済む利点があります。
以上のように解析技術や生成AIなどの開発における合成データの重要性は非常に高いものになっています。合成データ市場も非常に高い成長率を予想されており、今後の動向にも注目したいところです。
2.「AIによる面接プラットフォーム」Apriora
・会社名 : Apriora
・創業年 : 2023年
・所在地 : 米国 サンフランシスコ
・出資 : 1984 Ventures等
・調達額 : $3,300,000
・カテゴリ : HR
・URL : www.apriora.ai
「Apriora」は、AI技術を活用した面接プラットフォームを提供しています。このプラットフォームはリアルタイムの双方向型のAI面接を可能にし、面接後すぐに採用目標に合わせたレポートを提供します。
従来の採用プロセスでは、多くの候補者を評価するのに時間がかかり、面接官の主観に依存するため評価が一貫しないことが課題となっています。また、多数の候補者との面接を効率的に行うことが難しく、結果として採用に時間がかかるという問題があります。
AprioraのAI面接により、候補者は24時間いつでも面談予定を入れることができます。また、採用側も多数の候補者に同時に面接対応を行うことができ、面接の評価も同じ基準で書かれたレポートを得ることができます。
AprioraのAI面接は他の多くのツールと異なり、リアルタイム対話型であることが特徴であり、利用者による評価も5点満点中4.5点と非常に高い評価を得られています。
このようなリアルタイム対話型のサービスが可能になっているのは、技術の高度化に伴いAIの処理速度が向上したことが大きな要因となっていると推測されます。AI技術の発展に注目し続け、実現可能になる事業へのアンテナを張っていきたいです。
3.「AI搭載の割引プラットフォーム」Bargn
・会社名 : Bargn
・創業年 : 2024年
・所在地 : フィンランド、ヘルシンキ
・出資 : 非公開
・調達額 : $461,305
・カテゴリ : セールステクノロジー
・URL : bargn.app
「Bargn」は、AI技術を利用してユーザーに最適な割引情報を提供するプラットフォームです。ユーザーは月額または年額制でサービスに登録し、AIによるおすすめの50%offの割引情報を手にすることができます。
消費者は多数の割引情報やクーポンにアクセスすることができますが、その中から自分に最適なものを見つけることが難しいことがあり、ビジネス側も効果的な割引戦略を見つけ出し、顧客に届けることが課題です。
BargnはAIによるパーソナライゼーションを活用してユーザーに最適な割引情報を提供することで、消費者は自分のニーズに合った割引を容易に見つけることができ、ビジネス側も効果的な割引戦略を実行することが可能になります。さらに、手数料が無料であることで消費者とビジネスの双方にメリットをもたらそうとしています。
フィンランド市場への参入を皮切りに、ヨーロッパ全土への急速な拡大を目指していますが、ヨーロッパでは、このような個人情報を活用するサービスはGDPRへの対応が非常に難しいのではないかという懸念があります。現在、サービスは始まっていないものの今後のGDPRへの対応には注目してみたいと考えています。
4.「画像生成で服の購入に繋げるアプリ」Pyxer Inc.
・会社名 : Pyxer Inc.
・創業年 : 2023年
・所在地 : リトアニア
・出資 : 非公開
・調達額 : 非公開
・カテゴリ : 画像生成
・URL : www.pyxer.ai/s
「Pyxer Inc.」は、ユーザーが自分の写真をアップロードし、好みの服を着た自分の写真を生成するツールを提供しています。このツールはオンラインショッピングの新たな体験を提供し、ユーザーは実際に試着することなく自分に合う服を視覚的に確認することができます。
オンラインショッピングでは、実際に試着できないため自分に合う服を選ぶのが難しいという課題があります。
Pyxer Inc.は、AI技術を活用してユーザーの写真に好みの服を合成することで、この課題を解決します。ユーザーは実際に試着することなく自分に合う服を視覚的に確認できるため、購入決定を容易になると考えられます。
いくつものブランドとの連携、グローバルへの展開を実現しており、アクティブユーザーの分布は55もの国に広がっています。
日本の主要ブランドとの連携がまだ行われていないため、これから連携ブランドの連携が進むにつれて日本での普及も急速に進んでいくと思われます。Pyxer Inc.以外の同じようなサービスも多く存在しているため、どのように他と差別化して成長していくかについては今後注目していきたいところです。
■終わりに
いかがでしたでしょうか!
ANOBAKAでは今後も海外の生成AIトレンドについての記事やイベントをお届けできればと思います!
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