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【生成AI起業のヒント #3】海外事例まとめ集

2024.7.16

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こんにちは、7月より新しくANOBAKAのインターンとなりました川野と申します!!

「生成AI起業のヒント」では、ANOBAKAが注目している海外の生成AIスタートアップを取り上げて、生成AIの活用方法を分析・解説していきます。
生成AI領域で起業を考えられている方にとって事業のヒントとなれば幸いです。

さて、ついに9日(日本時間)よりY Combinator Summer 2024バッチがスタートしましたね!

現在発表されている参加企業全72社のうち、なんと3割を占める26社がAIやML(機械学習)をメインで活用した事業を行なっているスタートアップです。
一方で、以前は世を賑わせていたCrypto/Web3領域のスタートアップは1社しか参加しておらず、AIやMLの可能性はまだまだ無限大なのだなと感じさせられます。

第3弾となる今回も、前回前々回に引き続き海外の生成AIスタートアップをまとめて紹介していきます!

■海外AIスタートアップ事例

1. Atropos Health – 医療研究用AIプラットフォーム

・会社名   : Atropos Health
・ラウンド : Series B
・調達額   : 4,700万ドル
・カテゴリ : 医療、データ活用
・会社URL :  https://www.atroposhealth.com/
・ピッチ資料: https://decks.chiefaioffice.xyz/content/atropos-health

Atropos Healthは、分散しているあらゆる医療データをリアルワールドエビデンスへと迅速に変換し、医療研究のスピードを大幅に短縮するAIプラットフォーム「Geneva OS™(Generative Evidence Acceleration Operating System)」を提供しています。

リアルワールドエビデンスとは、リアルワールドデータという医療データを解析することで得られる科学的証拠のことです。例えば、電子カルテや健診データ、ウェアラブル端末から得られるデータ、レセプトデータなどがリアルワールドデータに当たります。

また、リアルワールドエビデンスは不特定多数の多彩な情報源から日常的に収集された”ビッグデータ”を分析することによって得られるために信頼性が非常に高いのですが、豊富に存在する医療データをリアルワールドエビデンスに変換するまでには、数ヶ月もの時間がかかる上に多くのリソースを必要とするのが現状です。

そして実際の医療現場において、医者が日常的に行う判断や治療のうち、リアルワールドエビデンスのような信頼性の高い科学的根拠に基づいているものはわずか14%にとどまっています。この「エビデンスギャップ」と呼ばれる状況に、Atropos Healthは着目しました。

Atropos Healthは、自然言語処理と生成AIを駆使して迅速に高品質なリアルワールドエビデンスを生成するGeneva OS™というシステムを中心に複数のソリューションを提供しています。

このGeneva OS™上では、チャットボットとQ&Aを繰り返すだけで48時間以内にリアルワールドエビデンスの作成や厳格な統計手法による分析の実行および結果を研究レポートの形式で出力することが可能です。

Geneva OS™には、1億6,000万人を超える匿名患者の記録がデータとして蓄積されていたり、臨床専門分野や治療領域、さまざまな患者グループにわたる10,000以上の新しいリアルワールドデータ研究を備えたデータベースを内包していたりするため、従来だと月単位で時間がかかっていた非常に重たいプロセスを、Geneva OS™では数分〜数時間で実行完了することができるのです。

さらに、Atropos Healthがビジネスモデルの設計において工夫している点として、Geneva OS™を利用する医療機関は、Atropos Healthに対して各機関が保有するデータを提供しなければなりません。もちろん、そのデータが使用された際に各医療機関は補償を受け取ることができますし、誰がどのような目的でデータを使用するのかという条件をコントロールすることも可能となっています。

これにより、プラットフォーム全体としてGeneva OS™に蓄積されるデータの幅と深さが増し、新規ユーザーの呼び水となったり、既存ユーザーの体験価値を向上させたりすることができているのです。

一般的に、AI領域におけるMoat(参入障壁)としては

  • ネットワーク効果
  • プラットフォーム効果
  • 独自のデータ

などがありますが、Atropos Healthはまさにデータ(質・量ともに)やプラットフォーム効果の働きやすいビジネスモデルを競争優位に持つことで、成長を続けていると言えます。

顧客ロイヤルティを数値化したNPSスコアは脅威の42(Averageは10-15)

AI領域におけるMoatに関しては、Elad Gilのブログにてより詳細に述べられているので、気になった方はぜひ読んでみてください。

2. Corti – 医療従事者向けAIアシスタント

・会社名   : Corti
・ラウンド : Series B
・調達額   : 9,330万ドル
・カテゴリ : 音声認識、MedTech
・会社URL :  https://www.corti.ai/
・ピッチ資料: https://decks.chiefaioffice.xyz/corti

Cortiはデンマークの首都コペンハーゲンに拠点を置くヘルステックスタートアップで、プライマリケア領域において医療従事者向けのAIアシスタントを開発しています。

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行により、Zoomなどのオンラインビデオツールを利用した遠隔医療の利用が急激に増加しましたが、プライマリケアとは異なるので注意が必要です。

プライマリケアは、オンラインやアプリを通じた患者との継続的なケア、コミュニケーションに重きを置くより幅広いサービスのことを指しており、患者の治療や検査後の状態の変化を改善するために教育やコーチング、関与の維持、患者サポートなどを提供します。

パンデミックの影響で世界的にオンライン診療が一般化してきましたが、需要が増えた分患者1人あたりに対応できる時間が減ってしまい、医療ミスも起こりやすくなってしまっています。

実際、WHOの調査によると、10人に4人の患者がプライマリケアおよび外来医療中に被害を受けており、薬の投与ミスだけでも年間推定420億ドルの損失が発生していると言います。

Cortiが提供する「AI Co-pilot」は、音声認識技術を活用したオンライン診察のサポートをしてくれるAIアシスタントです。

例えば、患者との対話をAIで分析して診療の改善や最適な意思決定の提案を行ったり、重点を置いて取り組むべきトレーニングプログラムの特定や効果測定を行ったりしてくれます。Cortiは何千時間にも及ぶ膨大な患者との通話や相談記録をもとに学習しているため、看護師やコール受付担当者、医師などの医療従事者は患者に対してより高品質なケアサービスを提供することができます。

それだけでなく、診療中の患者との対話のドキュメント化や、患者の病名をアルファベットと数字の組み合わせに変換するコーディングという作業なども自動で行うため、医療従事者の管理業務を効率化することもできます。

また、Cortiは病院の救急部門や119番のような救急コールセンターなど、一刻を争う患者を診断する際のサポートツールとしても役に立ちます。

通常、救急部門に電話がかかってくるとディスパッチャー(通信指令員)と呼ばれる専門家が、各医療部門へ指示を出します。救急車を発動させ今すぐに処置をするべき患者なのか、何分以内に到着すれば助かる可能性があるのか、あるいはその場で何か処置ができるのか。限られた情報から患者の容態や病名を判断し、搬送や治療の優先順位を決めます。

この優先順位を決める行為はトリアージと呼ばれているのですが、トリアージにミスがあるとそれだけで患者が亡くなってしまうこともあるため、深い専門知識と素早い判断能力が求められます。

Cortiの「AI Co-pilot」は、トリアージの際に電話口の患者の声や呼吸、雑音などの音声情報と位置情報をリアルタイムで解析したり、リアルタイムで会話のナビゲートを行ったりして、ディスパッチャーなどがトリアージをより迅速かつ高精度に行うことができるようにサポートします。

2014年の古いデータにはなりますが、コペンハーゲンでは年間161,000件の緊急通報が発生しており、そのうち心停止の通報は2,000件でした。そして、ディスパッチャーが正確に診断することができた割合は73%だったのに対して、Cortiは93%の精度で症状を特定することができただけでなく、30秒早く診断することもできたのです。

3. Mitiga Solutions – 気候変動リスク分析プラットフォーム

・会社名   : Mitiga Solutions
・ラウンド : Series A
・調達額   : およそ2,760万ドル
・カテゴリ : 気候変動、保険、リスク管理
・会社URL :  www.mitigasolutions.com
・ピッチ資料: https://decks.chiefaioffice.xyz/mitiga

Mitiga Solutionsはスペイン・バルセロナに拠点を置くClimateTech × InsurTechスタートアップです。科学とAI、そしてスーパーコンピュータを駆使した大規模な演算により、発生した自然災害による被害を軽減したり、気候変動に対するResilience(強靭性)を高めたりするソリューションを提供しています。

近年、異常気象によって発生した自然災害の数は過去30年間で3倍に増えました。世界各地で記録的猛暑による山火事や洪水、森林火災などの自然災害が発生したというニュースが連日流れており、国連の世界気象機関(WMO)によると、2021年までの約50年間に世界で発生した気象災害は、200万人超の死者をもたらしており、地球温暖化や異常気象は莫大な被害を地球にもたらし続けています。

そして、人の死亡や怪我、建物の損壊などによる経済損失は、2021年および2022年だけでも5,900億ドルにのぼるとされています。下のグラフからもわかるように、今後も自然災害の発生件数は伸び続けて2030年までに今よりも40%増加すると予測されており、人類が最も長期的に向き合わなければいけない巨大な課題となっています。

Mitiga SolutionsはEarthScan™Risk Modelsの2つをコアプロダクトとし、気候変動や自然災害による被害リスクを最小限に抑えようとしています。

まずEarthScan™は、保険、不動産、資産運用などの領域の企業向けのリスク分析プラットフォームで、気候変動リスクに対するエクスポージャー(資産の脆弱性)について、包括的な分析を提供します。

対象地域は世界中のあらゆる場所をカバーしており、対象とする気候変動リスクも洪水や干ばつ、山火事、強風などを備えており、あらゆる企業があらゆる気候変動リスクに対するインサイトを得ることができます。操作自体も非常に単純で、自社の保有する資産をリストアップしたCSVファイルをアップロードするだけで、資産レベルおよびポートフォリオ全体レベルでエクスポージャーを確認することができます。

また、1970年から2100年までの長期的な時間軸において、5年ごとのスパンで3つの複数シナリオにおいて分析することもでき、より潜在的なリスクまで把握することができたり、そうしたリスクを考慮した上で意思決定を行ったりすることが可能となります。

そして、Risk Modelsですが、こちらは保険会社向けリスクモデルで、最新の気候科学と高解像度データを統合した最先端のリスクモデルとなっています。

保険会社は一般的に、自然災害による被害額を予測して保険金支払いに備えるのですが、その際にリスクを定量化するためにリスクモデルを使用します。通常のリスクモデル内には、仮想の地震や台風が用意されており、コンピュータ上でシミュレーションすることでそれらによる対象物の被害額を推定することができます。従来のリスクモデルの課題は、過去のデータに基づいて演算をされており、刻一刻と変化するリアルタイムの状況は反映することができなかったため、将来予測の精度に不安が残ることでした。

一方で、Mitiga Solutionsが開発しているリスクモデルは極端な気温や降水、洪水、干ばつ、山火事などの様々な自然災害に対応しているだけでなく、植生や気象動態、地形などの実世界かつリアルタイムの要因に基づいて高解像度かつ未来志向のモデルを作成することができる点が大きな特徴となっています。

執筆者:川野 孝誠(@_takamasaaaaa_


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