こんにちは!インターンの古市です!
「生成AI起業のヒント」では、ANOBAKAが注目している海外の生成AIスタートアップを取り上げて、生成AIの活用方法を分析・解説していきます。
生成AI領域で起業を考えられている方にとって事業のヒントとなれば幸いです。
第10弾となる今回は、営業電話を生成AIによって自動化するツールを提供しているインドのスタートアップ・Vodexを紹介します!
1. 会社概要
・会社名:Vodex
・本社所在地:インド、バンガロール
・最新調達ラウンド:Seed
・最新ラウンドでの調達額:231万ドル
・主な株主:Pentathlon Ventures, Unicorn India Ventures
・カテゴリー:セールス、マーケティング
・公式ホームページ:https://vodex.ai/
Vodex は営業電話を自動化するための生成AIツールです。生成 AI を活用することで人間が会話しているかのような営業電話の体験を実現しています。
企業はあらゆるニーズに応じて内容をカスタマイズし、アウトバウンドの営業電話を行うことができます。また、アウトバウンドの営業電話のみならず、顧客からの問い合わせ対応や各通話のレポート生成など必要なタスクに合わせてツールを活用することができます。
日々の営業活動によって生み出された潜在顧客をリードと呼ぶのですが、Vodexはアウトバウンドの営業電話によるリードの獲得に特化したサービスを提供しています。
生成 AI を用いて従来の営業電話や自動音声通話を代替することで営業活動の効率性を改善し60分以内に 10,000 件の通話を生成 AI によって行うことができます。生成AIがメッセージを迅速かつ正確に要点を押さえて回答をすることで通話時間も40%短縮し、効率面での改善は大きなインパクトをもたらしています。
また、音声認識精度は98%と高く、生成AIでリアルな双方向型のコミュニケーションが実現されることで従来の一方的な自動音声通話と比較して顧客のエンゲージメントが80%増加しています。
以下のデモ動画のように音声は人間と見分けがつかないほどであり、双方向型のコミュニケーションを行いながら通話を行います。
2.フォーカスしている課題
Vodex は、潜在的なリードの獲得のための営業電話に特化しています。競争の激しい営業環境では、リードを効率的に選別することが成功の鍵となる中で、営業チームは潜在的可能性の高いリードを特定し、フォローアップを管理することが必要になります。
従来の人間による営業電話などの方法では、リードの選別とフォローアップに多大な手作業が必要となり、自動化できる反復タスクに時間を割いてしまうため、取引の成立など価値の高い活動に最大限時間を割くことができず非効率になってしまっています。そして、マニュアル作業の限界により、応答が遅れ、タイムリーなエンゲージメントの機会を逃すことになっております。特にグローバルな顧客基盤を持つ企業にとっては異なるタイムゾーンのリードに迅速に対応する必要があるため、24 時間体制で稼働することは非常に重要になります。
Vodex は、それらの課題を生成 AI を用いて営業電話を代替することで解決しています。それに加えて、デモ動画や以下の活用例のように自然で人間のような会話を行えるため、顧客体験も向上しています。Whatsapp のようなテキストメッセージの自動化も行えることもあり、会話とテキストで顧客によってパーソナライズした体験を提供できています。
現在 Vodex は、以上の課題解決により保険業界と不動産業界にメインに進出しています。それぞれの業界のユースケースをデモ音声とともに紹介します。
保険業界は競争が激しく、代理店は適格なリードを迅速に特定するという課題に直面しています。Vodex は、企業の設定した基準に基づいてリードを選別し、相談の面談予約設定を自動化することで、このプロセスを効率化します。保険代理店は Vodex を使用して、潜在的な顧客と関わり、必要な情報を収集し、相談のスケジュールを設定できます。
不動産エージェントは、Vodex を利用して、最初のアウトリーチを処理し、潜在的な購入者から重要な情報を収集し、物件の内覧予定を自動的に設定することができます。
3. 差別化ポイント
Vodex は、潜在顧客であるリードの獲得に特化することで差別化を行っています。既存の顧客管理システムと統合しながら、24 時間 365 日のリード選別、スケジュールの自動予約、リアルタイムのリードスコアリング、電話後のテキストメッセージの送信などの機能を備えており、営業電話によるリードの獲得の自動化に特化しています。不動産、保険、販売など様々な業界の特定のニーズに合わせて高度にカスタマイズ可能であり、業界を問わずに営業電話の代替が可能になっています。
4. これまでの実績
インドの企業でありながらも、現在主にアメリカとカナダの企業にサービスを提供しており、すでに ARR (年間経常収益) 100万ドルを達成しています。
5. 考察
営業電話における課題は日本でも共通しています。日本では働き手の不足も相まって生成 AI による営業電話の代替のインパクトは大きいと考えられます。現在日本のコールセンターでは、生成 AI が会話中のオペレーターの支援や会話内容の要約などに活用されている例が目立ちますが、これからコールセンターでの電話対応への生成 AI の活用も広がっていくでしょう。
Vodexはアウトバウンドの営業電話に特化していましたが、生成AIの技術は進化し、インバウンドの問い合わせ対応にも適用できる可能性が高まっています。インバウンドの対応ができるようになれば、不動産業界では物件情報のお問い合わせだったり、保険業界では保険商品へのお問い合わせや保険金請求のサポートなどのような様々な業界での新しいサービス提供が可能になると考えられます。
生成 AI をインバウンド対応に用いているケースとして、社内の情報検索や社外からの問い合わせの要約、メール作成に導入する事例は日本の大手企業でも出てきています。しかし、それ以外の事例を含めても、日本においてはチャットボットや通訳という形の音声対応が多く、生成 AI のみで双方向的な会話によるインバウンド対応を行えているサービスは少ないです。アウトバウンドだけでなく、双方向的な会話によるインバウンド対応の事例はこれから日本でも拡大していくと思われます。
また、コールセンター業務においても他の生成 AI の活用例と同じく、業界やタスクによって必要な専門知識や考慮すべき法規制やガイドラインの対応が変わってくるため、電話への生成 AI の導入は一社独占ではなく業界特化やタスク特化の複数社に落ち着くと考えられます。
執筆者:インターン 古市健太郎
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