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【生成AI起業のヒント #11】AI × ポッドキャスト編

2024.8.8

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こんにちは!インターンの川野です!

「生成AI起業のヒント」では、ANOBAKAが注目している海外の生成AIスタートアップを取り上げて、生成AIの活用方法を分析・解説していきます。
生成AI領域で起業を考えられている方にとって事業のヒントとなれば幸いです。

第11弾となる今回は、ポッドキャストの配信プラットフォームを提供するスタートアップ・Podcastleを紹介します!

1. 会社概要

・会社名:Podcastle
・設立:2020年
・本社所在地:アルメニア・エレバン
・最新調達ラウンド:Series A
・最新ラウンドでの調達額:1,350万ドル
・主な株主:Mosaic Ventures, RTP Global, Sierra Ventures等
・カテゴリー:音声配信、toC
・公式ホームページ:https://podcastle.ai/

Podcastleはその名の通りポッドキャスト配信者向けに設計されたAIツールを開発しており、録音から編集、配信までをワンストップで行うことができます。

プラットフォーム上には、自分の声のクローンを作成するAIや、テキストプロンプトからスクリプトを生成するAI無音時間やフィラーワード(「あのー」や「えーと」など意味のない言葉)を自動的に削除するAIなど、いくつかのAIツールが搭載されています。

こうしたAIツールを活用することで、配信するコンテンツの作成が従来よりもずっと手軽になり、ポッドキャスト初心者からプロまであらゆるレベルの人がポッドキャストクリエイターとして活動することができるようになりました。

また、Podcastleはチームでの共同編集も行うことができます。以前は個人クリエイター向けのツールだったのですが、2023年夏頃からチーム向けの機能開発に着手しています。Googleアプリのようにリアルタイムで共同作業を行うことができるのはもちろん、進行中のプロジェクトに対してコメントを残したり、編集権限や閲覧権限を自由に設定したりすることができます。

もともとPodcastleは、ニュース記事やブログなどあらゆる種類のテキストを音声に変換するツールとして始まりました。リリース後2ヶ月で6万ダウンロードを突破するほどの人気ぶりだったのですが、創業者のArto Yeritsyan氏はユーザーが自分のためだけでなく、作成した音声クリップをダウンロードして他のストリーミングプラットフォームへ共有していることに気がつきました。そのため、ツールを拡張し、ポッドキャスター向けに必要な機能を一通り備えたオールインワンプラットフォームを目指す方向へ舵を切り、今のプラットフォームが出来上がりました。

2. ユニークなポイント

Podcastleは、text-to-speechツールからの転換を図る際、録音や編集、配信などポッドキャストを行うために必要な機能をワンストップで揃えたツールが存在しないという課題に目をつけました。世の中には、それぞれ1つの面に重点を置いたツールは何十個と存在するのですが、ポッドキャスト番組を1話作成するためには複数のツールを行き来する必要があります。

例えば、録音・録画するためにDiscordやZoomを使用しても、DiscordやZoom上で編集したり、ホスティングしたりすることはできませんので、その都度レコーディングを一度書き出して、Adobeなど別の編集ソフトを使用しなければなりませんでした。

Podcastleは、ポッドキャスターにとって最低限必要なツールがプラットフォーム上に集約してあるため多くの人気を得ています。

3. 生成AIの活用方法

Podcastleは、「Revoice」と「Magic Dust AI」という名前がそれぞれついたAIツールを搭載しています。

まずRevoiceですが、こちらは生成AIをオーディオ作成に導入し、自分の声のクローンを作成することができるツールです。クローン音声は、指定された文章を読み上げた録音データを提出するだけで簡単に作成することができます。一度作成したらあとはスクリプトを入力するだけで良く、Podcastleが自分の声のクローンを組み込んだ音声トラックを自動で作成してくれます。

実際にどのような音声が作成されるのか、クローン音声は本物の音声とどれくらい違うのか気になる方は、ぜひ下記を聞いてみてください。

びっくりするくらい違和感がないですね!

そしてMagic Dust AIですが、こちらはPodcastleが開発している音声編集に特化したAIです。街中の騒音などバックグラウンドノイズを自動で削除したり、イコライゼーションを適用して音声をまるでスタジオで録音したかのような滑らかで洗練されたサウンドへ品質向上させたりすることができます。

こちらもどのようなアウトプットを作ることができるのか、気になった方は聞いてみてください。

4. トラクション

Podcastleは、2024年2月にSeries Aの資金調達を行い、1,350万ドルを調達しましたが、その時点で利用するクリエイターの数は約100万人を突破していました。Seedラウンドの資金調達を実施した2021年当時のユーザー数は15万人ほどことを考えると、まさに破竹の勢いで成長しているスタートアップです。

5. 考察

生成AIの登場により、現代のコンテンツ制作は大きな変革を迎えました。
映像や画像、文章などこれまで人の手によって創造されてきた様々なコンテンツが、画面上のボタン1つで誰でも簡単に創り出せる時代になりました。

今回取り上げたPodcastleは、ポッドキャストという文脈でクリエイティブ活動を”民主化する”スタートアップでしたが、その山の登り方は日本へ環境を変えてもとても参考になるように思います。

初期のPodcastleは、恐らく初心者や趣味程度でやっている個人クリエイターを初期のターゲットとしているため、語弊を恐れずに言うと「広く・浅く」機能を揃えることで手軽にコンテンツ配信を行うことができるオールインワンプラットフォームであるという打ち出し方をしています。

日本においては、そもそもポッドキャストに対する馴染みが深くなく、聴く側も配信する側も決して多いわけではないですし、キングコンテンツのようなものも明確に打ち立てられているわけではありません。だとすると、数少ないプロクリエイターたちを狙うよりも、比較的ライトな層や初心者を取り込んで市場自体の拡大を狙う方がアップサイドの大きな挑戦になるのではないかと思います。

執筆者:川野 孝誠


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