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【生成AI起業のヒント #12】AI × SEOツール編

2024.8.9

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こんにちは!インターンの川野です!

「生成AI起業のヒント」では、ANOBAKAが注目している海外の生成AIスタートアップを取り上げて、生成AIの活用方法を分析・解説していきます。
生成AI領域で起業を考えられている方にとって事業のヒントとなれば幸いです。

第12弾となる今回は、中小企業向けにSEOコンテンツの作成ツールを提供しているスタートアップ・SpeedyBrandを紹介します!

1. 会社概要

・会社名:SpeedyBrand
・設立:2022年
・本社所在地:アメリカ・デラウェア州
・最新調達ラウンド:Seed
・最新ラウンドでの調達額:250万ドル
・主な株主:Y Combinator, Google Ventures
・カテゴリー:SEO
・公式ホームページ:https://speedybrand.io/

SpeedyBrandは、中小企業向けにSEO対策のされたコンテンツを自動で生成し、シームレスに投稿まで行うことができるツールを提供しています。

「SpeedyBrand」という名前の通り、自社のブランドトーンに合ったコンテンツを迅速に生成することができるのが大きな特徴です。下記のデモ動画を見ていただければわかるかと思いますが、ユーザーは自社サイトやブランドサイトのURLを入力し、最低限の操作としてトピックとコンテンツのトーン(プロフェッショナル感を出すのか、親しみやすさを出すのか、など)の2つを選択するだけで、SEO対策バッチリのコンテンツが自動で作成されます。

その間わずか10秒!!!

オプションで、例えば自社商品の説明や、絶対に入れたいキラーフレーズ、外部の商品ページへのリンクなどがあれば入力しておきます。ここで入力した情報は、生成されるコンテンツに自動で組み込まれるため、絶対に抜け落ちてほしくない情報はカスタマイズを加えることで簡単にケアすることができます。

肝心のSEO対策についてですが、ユーザーが選択したトピックに基づき、SEOにおいて重要だと判断されたキーワードは、自然な形でコンテンツに組み込まれているため、Googleの検索結果で上位に配置されやすくなっています。

また、メタディスクリプションやSEOに関する統計情報を確認したりすることもできます。コンテンツに組み込まれているそれぞれのキーワードに対して、「難易度」「インテント(ユーザーの検索意図)」「検索ボリューム」の3つを確認できるため、SEO的に弱いキーワードが入っていたら修正を加える、というような使い方が可能です。

それだけでなく、SpeedyBrandは多数のソーシャルメディアプラットフォームと連携しており、ブログ記事だけでなくSNS投稿用のコンテンツも簡単に生成することができます。

ブログ記事用に生成したコンテンツを、例えばInstagramの投稿用コンテンツに生成し直すこともできます。このような機能を利用することで、ブログをまだ見ていないユーザーへInstagramを通じてリーチすることができます。このように、SNSを活用して投稿した記事を拡散し、エンゲージメントを増やして自身の記事の参照回数等を増やすことで間接的なSEO対策にも繋がります。

2. 解決している課題

SpeedyBrandは、「中小企業がオーガニックで自社ブランドを成長させることのできるツールがない」という共同創業者であるRanti Dev Sharma氏の気づきから始まりました。

Sharma氏は、もともと中小企業向けに従業員の給与管理ソリューションを提供するVetanというスタートアップで働いていました。当時、多くの中小企業と顧客として相対する中で、彼らには広告代理店にデジタルマーケティングを委託するほどの予算はなく、限られた予算では大手企業にトラフィックを取られてしまう、かといって既存のマーケティングソリューションを使いこなせるようなSEOに関する専門知識を持っている人材もいない、そして時間的にもリソース的にもマーケティングキャンペーンを自作で実施するのも厳しいという状況に直面していることに気づきました。

そこで、人も時間も資源も限られている中小企業にスポットライトを当て、彼らが適切なマーケティング施策を行うことでビジネスを拡大し、独自のブランドを築き上げることができるようにと、SpeedyBrandを立ち上げました。

ツール導入によるインパクトですが、SpeedyBrandの顧客であるAI for Beginnersという会社が脅威の結果を残しています。AI for Beginnersは、元々AIの実装方法や技術トレンドなどの情報を発信していました。しかし、リソース不足などによって適切なSEO対策などができておらずインプレッション数は0でした。

そこで、実際にSpeedyBrandのツールを利用すると、わずか2週間で80本もの記事を公開することができ、SEO対策もきちんとされているためインプレッション数は0から5,850まで増加しました。

また、通常デジタルマーケティングサービスを使用すると月額2,500ドルから12,000ドルほどかかるのですが、SpeedyBrandのサービスは月額450ドルで使用することができます。上述した通り、予算が限られているAI for Beginnersのような中小企業にとってはコストメリットも非常に大きいということがわかります。

興味がある方は覗きに行ってみてください

3. 生成AIの活用方法

SpeedyBrandの独自のAIは、ブランドトーンやターゲットユーザー、顧客のプロファイルを理解した上で、顧客の共感を呼び、SEOにも強いコンテンツを生成します。

一方、生成AIを利用する上では注意点があることも忘れてはなりません。

最もよくある懸念は「ハルシネーション」です。AIが学習データにない誤った情報を生成してしまう現象のことを指しますが、どれだけ優れたAIでもそもそもの学習データが間違っていたり、偏った情報を学習してしまったりすると誤った情報や他人を不快にさせる内容を生成してしまう可能性が十分にあります。

SpeedyBrandはこうしたリスクを低減するための施策を講じており、独自のAIはブランドのトーンに合わせてカスタマイズすることができるほか、ユーザーのコンテンツ編集からフィードバックを受けて学習し、将来のアウトプットの精度を高めることができるため、誤った情報や他人の権利を侵害するような有害なコンテンツを生成することがないと主張しています。

4. トラクション

設立が2022年なのでまだ大きなトラクションが出ているわけではありませんが、2023年7月の時点で、SpeedyBrandのツールに有料課金する顧客は50社ほどおり、ユーザー数で数えると1,000人を超えています。また、現在のARRは100,000ドルで、Sharma氏によると来年には1,000,000ドルに達すると言います。

「本当かいな」と思ってしまいますが、現在中小企業のオーナーのほぼ半数が自分でコンテンツマーケティングを行っていることを考えると、時間やコストを大幅に節約し、かつ大きなインパクトが見込めるツールを採用する動機はそれなりに強いと思いますので、ぜひこれからに期待したいところです。

5. 考察

SEO対策はWebサイトの可視性を高めるために重要であることは全世界共通ですが、SEOのアプローチは国や地域ごとに異なるため、異なる戦略や対策が必要になります。日本でSpeedyBrandのようなSEOコンテンツの自動作成ツールで挑戦するのであれば、日本のSEOについてよく把握しておきましょう。

例えば、日本の文化的特徴として四季があることが挙げられます。夏祭りや花火大会など季節によって開催される日本ならではの行事があったりもするので、日本のSEOではコンテンツの季節性を考慮することは重要になります。

また、日本のSEOでは地域や業界ごとに特化したキーワードでの検索が多いという特徴があります。そのため、ロングテールキーワードと呼ばれる、検索ボリュームが少ないキーワードを複数組み合わせたキーワードがSEO対策としてとても効果的です。ただ、各キーワードは検索ボリュームが決して多くないため、効果的なものを選ぶのは簡単ではありません。ツールに載せるAIが適切なキーワードを選び取るために、日本における検索ボリュームの日々の変化や競合キーワードなどについてきちんと学習させられることが肝になりそうです。

あるいは、生成AIの進化によるロールの変化を考えてみるのも面白いかもしれません。

SpeedyBrandのデモ動画等を見てわかるように、検索ボリュームや競合キーワードなどの事前リサーチ、SEOを意識したコンテンツ作成などはおおかたAIに任せてしまうことができます。

となると、今後マーケターやコンテンツクリエイターなどは、結果として出てきた数字を解釈したり、新たなSEO戦略を策定したりと、データサイエンティスト的なロールへと変化していくのかもしれません。

執筆者:川野 孝誠


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