こんにちは!インターンの川野です!
「生成AI起業のヒント」では、ANOBAKAが注目している海外の生成AIスタートアップを取り上げて、生成AIの活用方法を分析・解説していきます。
生成AI領域で起業を考えられている方にとって事業のヒントとなれば幸いです。
第13弾となる今回は、特許のためのオールインワンソリューションを提供しているスタートアップ・Lightbringerを紹介します!
1. 会社概要
・会社名:Lightbringer
・設立:2023年
・本社所在地:スウェーデン・ルンド
・最新調達ラウンド:Pre-Seed
・最新ラウンドでの調達額:80万ドル
・カテゴリー:知的財産、SaaS
・公式ホームページ:https://www.lightbringer.com/
Lightbringerは、特許取得を効率化するプラットフォームを開発しています。
このプラットフォームでは特許の申請プロセスが全部で10段階に分けられており、ユーザーはそれぞれの段階で説明に沿って必要な手続きを行うことで、簡単に特許の申請を行うことができます。
また、Lightbringerでは申請ケースごとに経験豊富な専門の弁護士が割り当てられ、特許申請書のドラフト作成から提出まで丁寧な支援を受けることができます。Lightbringerは、法律の専門家たちを集めた世界中の会社と連携しているため、このようなサポート体制を実現することができています。
現時点では、スウェーデンに拠点を構える5社(IJON AB, PATENT GROVE AB, IPsteading AB, PatIOn AB, KOSSMANN PATENT AB)とパートナーシップを締結しています。
2. 解決している課題
従来、特許申請にかかるプロセスは複雑かつ非効率的で、時間もコストもかなり必要とするものでした。というのも、専門的な法律用語ばかり使われているために、知識のない人からするとどのように申請プロセスを進めれば良いのか理解することができなかったり、そもそも特許の具体的な要件を理解することすらできなかったためです。
また、特許出願には詳細な技術説明や図面の作成が必要で、専門知識が求められます。それを、審査官とやり取りしながら時には補正書を提出するなど、繰り返しの手続きが発生します。
Lightbringerのプラットフォームでは、ステップバイステップで必要な手続きについて丁寧なガイドを受けることができ、生成AIを活用して申請書の作成等を非常に効率的に行うことができるため、ユーザーは専門的な知識を十分に備えていなくても簡単に特許の申請を行うことができるようになりました。
また、Lightbringerは専門の弁護士と提携しており、メールでのやり取りなどの面倒なコミュニケーション手段を用いる必要がないため24時間いつでもサポートを受けることができる体制も、特許申請のプロセスにかかる時間を大幅に削減することに貢献しています。
コスト面においても、Lightbringerは大きなインパクトを企業に与えています。通常、特許取得プロセス全体において発生する費用は莫大で、ヨーロッパにおいては、出願だけで約1,655ユーロ、特許取得プロセス全体においては、平均6,800ユーロの予算を見込む必要があります。
Lightbringerは月額499ユーロから利用することができ、目安ではありますが、本来特許取得にかかっていたコストを10倍〜15倍近く削減することができます。
3. 生成AIの活用方法
Lightbringerでは、特許の申請プロセスを効率化するために各フェーズで生成AIが用いられています。
例えば、発明の技術分野を特定するフェーズでは、AIがユーザーの発明した内容やアイデアを分析してどの技術分野に該当するのかを自動的に識別し、自然言語でわかりやすく表現された選択肢を複数個生成します。ユーザーは提示された選択肢の中から最も適切だと考えられるものを選択するだけで良いため、より迅速により正確な選択をすることが可能です。また、ユーザーは選択肢の再生成を行うこともできます。そのため、選択肢が再生成された場合、AIはそのフィードバックを基に学習を行い、生成の精度を磨くことができるようになっています。
今までは数ヶ月ほどの時間を要する特許申請でしたが、Lightbringerのプラットフォームを利用することで70%ほどかかる時間を節約することができます。実際に利用したスタートアップはわずか2週間半で申請を行うことができたと言っており、時間もリソースも限られているスタートアップにとっては特に必要不可欠なツールであることが伺えます。
4. 考察
今回は、特許申請のプロセスを効率化するサービスを提供するスタートアップ・Lightbringerについて紹介しました。本来人の手で行っていた特許申請を、生成AIを活用することでかかる時間を大幅に削減することができるのがLightbringerの特徴でしたが、日本ではDX化は進んできているものの生成AIの活用はまだ発展余地があるように思います。
では、日本において知財領域で生成AIスタートアップに挑戦する時にどのような点を抑えておくべきなのでしょうか。
まず、日本の特許法や規制を深く理解し、それに適応したサービスを提供することが不可欠です。特に、日本の特許取得プロセスは非常に厳格であり、詳細な技術記述や証拠資料が求められるため、これらの法律に精通した法律事務所や知財専門家などのパートナーを確保する必要があります。Lightbringerはスウェーデンのスタートアップですが、現在はスウェーデンを拠点とする企業と積極的にパートナーシップを締結していることからも、現地の法律に対して高い専門性を有しているパートナーを確保することの必要性がよくわかります。
また、もう1つ肝になるのが日本語に高い精度で対応することができるAIモデルの開発でしょう。Lightbringerは申請文書作成における自然言語での表現も特徴としていますが、同じように特許申請における複雑な技術的な表現や専門用語を正確に理解し、それを業界特有の言い回しを含んで適切に表現する能力が求められます。そのためには、AIモデルの継続的な学習とアップデートも必要です。日本の特許申請に関連する最新の法律や規制について、AIがその知識を迅速に取り入れることができるよう、継続的なデータ収集とモデルの改善が大事になるでしょう。
このように、日本において知財という専門領域で生成AIスタートアップに挑戦する際には、法律面と言語面への対応が基本的に必要な要素になります。これらの要素をしっかりと抑えることで、初期の成功確度を高めることができるでしょう。
執筆者:川野 孝誠
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