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【生成AI起業のヒント #17】AI × アプリ開発編

2024.8.23

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こんにちは!インターンの古市です!

「生成AI起業のヒント」では、ANOBAKAが注目している海外の生成AIスタートアップを取り上げて、生成AIの活用方法を分析・解説していきます。
生成AI領域で起業を考えられている方にとって事業のヒントとなれば幸いです。

第17弾となる今回は、生成AIを用いたノーコードでのwebアプリ開発ツールを提供するノルウェーのスタートアップ・Databuttonを紹介します!

1. 会社概要

The Databutton Blog

・会社名:Databutton
・設立:2021年
・本社所在地:ノルウェー・オスロ
・最新調達ラウンド:Seed
・最新ラウンドでの調達額:510万ドル
・主な株主:Maki.vc, Skyfall Ventures
・カテゴリー:アプリ開発
・公式ホームページ:https://databutton.com/

Databuttonは、生成AIを用いたノーコードでのWebアプリ開発のオンラインワークスペースです。ユーザーは、Databuttonワークスペース内のチャットインターフェイスを利用してWebアプリのMVP(顧客のニーズを満たす最小限のプロダクト)を作成できます。

Databuttonはコードの生成も行います。プラットフォームはWebベースであり、フロントエンドはReactで生成され、バックエンドはPythonベースのAPIを用いて構築されます

Databuttonのフロントエンドとバックエンド

Databuttonを使用したアプリ開発プロセスは、①アイデア創出フェーズ(ビジネスニーズに基づいてアプリのコンセプトをブレインストーミングする)、②API構築フェーズ(各機能ごとに機能の詳細を構築する)、③UI構築フェーズ(ユーザーインターフェースを構築する)の3つの段階から構成されます。これらのフェーズを通して、完全にインタラクティブなWebアプリを考案、構築、設計します。

2. 差別化戦略

他のノーコードプラットフォームには、バックエンドやUI統合に使える機能が限られていますが、Databuttonは会話を通じてコードを生成し、ユーザーが任意のAPIを使用したり、任意のデータベースを統合したりできるようになっています。PythonベースのAPI利用やコード生成によるバックエンドの構築とReactを用いたフロントエンドの構築を行なっており、他のノーコードツールよりも複雑なコードを構築しているため、より柔軟に機能を実装できます。

UIコンポーネントにPythonまたはReactの既存のライブラリを使用することができることも機能の充実に繋がっています。

また、機能やドキュメントが常に更新され、便利になり続けています。直近では2024年8月中旬にもsupabaseというユーザー認証機能が追加され、ドキュメントが更新されています。

Databuttonは主に、プロダクトマネージャー、UXデザイナーなどだけでなく、経営者に近い役割もターゲットにしています。そのため、専門知識をほとんど必要としないような設計がなされています。この市場は、同社製品に対する需要が最も高い市場でもあります。

Databuttonは、ヘルスケアから電子商取引、金融まで幅広く利用され、2023年 1 月から2023年9月の間に、5,200 人の登録ユーザーが約 6,400 個のWebアプリを構築したようです。

3. 生成AIの活用方法

Databuttonでは、チャット形式のやり取りやUIのReactフロントエンド構築、バックエンドのPythonコードの生成などほぼすべての工程に生成AIを用いています。

Databuttonのプラットフォーム全体がWebブラウザ内で動作するように構築されており、各ステージでステップバイステップの手順を誘導してくれるようになっており、その中でもDatabutlerと呼ばれる強力なAIアシスタントがアプリ開発をガイドしてくれるようになっています。

ユーザーはDatabutlerとチャットしたり、一緒に議論してコードを構築したり、問題をトラブルシューティングしたり、アドバイスを求めたり、インスピレーションを得たりすることができます。また、Open AI のGPT-4、Streamlit (Pythonを用いたアプリの構築と共有に使用されるオープンソースのアプリフレームワーク)、Langchain(LLMを用いたアプリケーション開発を行うためのライブラリ)の言語モデルアプリフレームワークなど、オンラインモデルやフレームワークに接続することもできます。 

Databutton を使用したバックエンド開発のライフサイクル

4. 考察

今回は、生成AIを用いたノーコードでのwebアプリ開発ツールを提供するDatabuttonというスタートアップを紹介しました。 日本において同様のサービスを展開する場合、日本語対応以外での機能面での差別化は困難が予想されます。そのため、既存の機能を踏襲しつつ、関連機能を追加することで製品の総合力を高め、ユーザーのスイッチングコストを上げていく戦略が有効だと考えられます。

また、ターゲットの明確化も非常に重要となります。例えば、Databuttonはプログラミングスキルを持つ開発者ではなく、経営層に近い非技術者をターゲットとしています。これにより、専門知識をほとんど必要としない直感的なUI設計が可能となり、実際にターゲット層に利用してもらいやすい製品を提供できています。

そして、今回のようなプロダクトでは、ユーザーの継続的な利用、つまりリテンションも重要になってきます。一度アプリケーションを作成して終わりではなく、継続的に利用してもらえる仕組みづくりが不可欠です。Databuttonの特徴的な取り組みとして、Discord上でユーザーコミュニティを形成していることが挙げられます。このコミュニティ内では、最新の更新情報やバグ報告、質疑応答、参加者同士の交流などが行われており、ユーザーの定着に大きく寄与していると思われます。

Discord上でのコミュニティ構築は、Midjourneyという生成AIを用いた非常に有名な画像生成サービスも採用しており、効果的にユーザーを囲い込んでいます。Midjourneyは、そのDiscordコミュニティに1700万人を超える参加者を集めており、これはDiscordコミュニティ全体でも世界最大規模となっています。日本市場での展開においても、このようなコミュニティ戦略は、有効に機能する可能性が高いと思われます。

執筆者:古市 健太郎


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