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#19 SaaS is Deadと言われる中、SaaSど真ん中でPMFを迎えるSUPERNOVAに迫る!

2026.5.15

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今回は、中小企業向けに生成AIプラットフォーム「Stella AI」を提供する株式会社SUPERNOVAの代表・木本氏をお迎えしました。

生成AI利用率がわずか10%にとどまる中小企業を主戦場に、テンプレートや拡張機能、ワークフロー設計まで含めた「使いこなせるAI」を提供する同社。その背景には、サービス設計から営業、技術、CSまでを横断的に押さえる経営姿勢と、市場の急変に翻弄されながらも法人向けで軌道に乗せた事業転換の経験があります。

ビッグプレイヤーがしのぎを削るAI市場で、スタートアップはどこに勝ち筋を見出すのか。中小企業という未踏領域を起点に、AIプラットフォームのPMFの実像を探ります。

◼︎ゲストプロフィール

木本 東賢氏(株式会社SUPERNOVA・代表取締役)

2011年NTTドコモ入社。経営企画部で料金プラン「ギガホ」「ギガライト」「ahamo」の起案・導入に携わる。その後、社内新規事業創出プログラム「docomo STARTUP」を立ち上げ、同制度の第1号スピンアウト案件として2024年4月に株式会社SUPERNOVAを設立、代表取締役社長に就任。2024年12月に生成AIサービス「Stella AI」、2025年6月に法人向け「Stella AI for Biz」を提供開始。2025年「BEYOND MILLENNIALS 2025」受賞。

「絶望」から始まった事業——市場の激変を生き残った半年

——最近の事業の状況はいかがですか?
法人向けがいい感じに立ち上がってきて、事業として軌道に乗り始めた感覚があります。明らかにフェーズが変わりました。今後は私自身のマインドも、トップツースリーの育成にシフトしていかなければと考えています。

——SUPERNOVAの事業について教えてください。
私はもともとドコモで14年、料金関連の仕事をしていました。ahamoの立ち上げにも関わっています。スピンアウト後、生成AIで漫画を制作する「LearningToon」を立ち上げ、その後2024年12月に生成AIプラットフォーム「Stella AI」をリリースしました。

——リリース直後の手応えはどうでしたか?
絶望でした。サービスを出した2週間後にOpenAIが12日間連続発表を始めて、ウェブ検索もo1も搭載される。翌月にはDeepSeekが出てきて、その翌月にはDeep Researchです。「吐きそう」というのが正直な感覚でした。

——そこからどう転換したのですか?
法人向けに特化した「Stella AI for Biz」を2025年6月に、ドコモビジネスと共同記者会見の形でリリースしました。記者会見の翌週、問い合わせが100件来ました。起業して初めての「おお」でしたね。そこから1〜2か月は、私も副社長も法人責任者も、30分単位で商談が入り続けるような状態でした。


ターゲットは生成AI利用率10%の中小企業

——プロダクトのポジショニングを端的に教えてください。
Claudeを使える人はClaudeを使えばいいんです。我々のお客様の中心は中小企業で、ボリュームゾーンは30〜50名規模、大きいところで1,000名クラス。中小企業の生成AI利用率は2025年9月の調査で10%前後と非常に低い。そこに届いていない層に特化しています。

——具体的にどう差別化しているのですか?
プロダクトです。AIは「何でもできるが何もできない」と言われますが、契約後に「何に使えばいいかわからない」という次の課題が出てくる。だから機能ごとにグッと絞って、こちら側でワークフローを作りきって提供しています。WordやExcel、PowerPointの拡張機能も初期から入れています。最近の言葉で言うとハーネスに近いものを提供しているのだと思います。

——刺さっている機能の例は?
議事録生成です。音声ファイルをチャット欄に投げるだけのサービスは他にもありますが、性能がイマイチなことが多い。我々は裏側で複雑なワークフローを組んで、話者分離、句読点を含めた整形、会議資料の読み込みまで対応しています。単純な議事録サービスとして使えるレベルまで引き上げる、ということをやっています。

——ワークフローの他社への転用は?
ほぼしません。「こういうことをやりたい」に対して個社にカスタマイズして作る方に振り切っています。プロンプトサポート機能のように、お客様自身がカスタマイズできる柔軟な受け皿を用意する設計です。


SaaSは消えない——AI時代の代替されやすい領域

——「Claude CodeでSaaSは不要」という議論についてはどう見ていますか?
行き過ぎだと思います。Claudeでアプリは作れますが、「じゃあSlackを作りますか?」と言われたらやらないですよね。セキュリティ要件や保守運用まで考えると、本当に作るのは別の話です。

——一方で代替されやすい領域もある、と。
ゼロか百かではありません。たとえば画像からの文字抽出や文字起こしは、昔は貴重な技術力でしたが、今はGeminiでできる。Claude Codeと組み合わせれば請求書を読んでExcelに起こすくらいは作れます。SaaSとして価値があったものでも、AIで簡単にできてしまう領域は代替されやすい。

——中小企業ではMicrosoft Copilotなどの選択肢もありますが。
そもそもMicrosoft Officeが入っていない会社もあります。無料の表計算ソフトを使っていたり、2007年版のExcel買い切り版だったり。Copilotは個人の業務は効率化できますが、横の人がどう使っているか見えない。使える人と使えない人の格差が開きやすい構造です。我々はそこに届いていない層に特化しています。


「人間できないことはない」——全方位カバーの経営観

——元々料金畑出身で、なぜテクニカルなサポート設計まで踏み込めるのですか?
ニュースやテックブログ、アーキテクチャの記事を常に見ています。専門用語はAIに「わかりやすく説明して」と聞きながら、「これNotebookLM作れそうじゃない?」とエンジニアと話す。ahamoの時代も、戦略から仕様書設計、営業進捗、IR、株主対応まで、粗いところから細かいところまで全部やっていました。

——その経営スタイルの根底にあるものは?
人間にできないことはない、と思っています。天才にしかできないこともありますが、大抵のことは9割5分くらい努力すればできる。お客様のところに行って困っていることを聞いて解決する、それがカスタマーサポートの本質です。自分にできるかできないかは関係ない。

——今後の採用について教えてください。
LLMエンジニアを募集しています。APIをつなげる仕事というより、RAGの仕組みそのものをゼロから考えたり、NotebookLM的なものを内製したり。コスト制約の中で技術的な体験を構築していく仕事です。私自身も設計に入っているので、みんなで設計を考えて手を動かしたい方には合う環境だと思います。


いかがでしたでしょうか?

今回の内容はポッドキャストでも配信しておりますので、詳細の内容を知りたい方はぜひ音声でもお聞きください!

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