皆さんこんにちは、ANOBAKAの武内樹心(@jjj_juhsin)です。eスポーツは人気のあるコンテンツの一つであり、その市場規模は9.7億ドルとなっています(グローバルeスポーツマーケットレポート2020より)。しかしあまりに急激に成長したため、早急に解決が必要な問題が多く発生してしまっていることも事実です。今回はブロックチェーンとeスポーツの新しい関係についてまとめてみました。
#1 ブロックチェーンとスポーツとの関わりを軽くおさらい
ブロックチェーンとスポーツという話題において、まず最初に挙がるのはNFTを世界に知らしめたNBAトップショットではないでしょうか。NBAトップショットは、NBAスター選手のスーパープレイを切り取りNFT化したものです。
NBAトップショットは立ち上げからわずか8カ月足らずでユーザー数が100万人に達し、サイト上での売買総額が7億ドル(約770億円)を突破しました。運営会社ダッパー・ラボの企業価値評価は今や75億ドル(約8250億円)以上とされています。米ファスト・カンパニーは、ダッパー・ラボを2021年の最もイノベーティブなゲーム会社の1社に選んでいます。
既存のスポーツ選手のカードをNFT化する(電子媒体になったことで動画データという形でも可能)というアイデアは非常にわかりやすく、何よりもブロックチェーンやNFTに関する知識の無い一般層にも受け入れられやすいものでした。NBAトップショットをはじめとして、様々なプロスポーツリーグがNFTを導入し、選手のデータをNFT化してファンに販売しています。
従来のスポーツはともかく、eスポーツとブロックチェーンに関してはあまり関わりがあるというイメージはなかったのでは無いでしょうか。しかし現在eスポーツ企業が何らかの形でブロックチェーンを導入したり、業務提携を結ぶことが増えつつあります。eスポーツとブロックチェーンの関わりには一体のどのような事例があるのでしょうか。
#2 ブロックチェーンとeスポーツの関わり、その事例は?
1. Guild of the Guardians
Guild of the Guardiansはファンタジーを舞台にした分隊型のマルチプレイヤーRPGで、自分で夢のヒーローチームを作り、勝利を目指して戦うというコンセプトとなっています。AndroidとiOSで無料プレイのタイトルとして発売される予定です。
Guild of Guardiansは6月に第一弾のコレクターズアイテムNFTを販売し、300万ドルを調達しました。ロサンゼルスのeスポーツ団体NRG Esportsと提携してNFTのコレクターズアイテムを制作することになりました。この提携により発行されるキャラクターはGuild of Guardiansの世界でプレイできるようです。
Guild of GuardiansはNRG Esportsのファンベースへのアクセスが可能となり、ゲームに関心の高い層を取り込むことができるようになりそうです。一方、NRG Esportsはこのパートナーシップにより、ファンがお気に入りのeスポーツチームと交流しつつ、さらに利益を得ることができる革新的な方法をファンに提供することで、ファンエンゲージメントを増加できるとしています。
NRGがファンに対してコレクション性の高いNFTを提供することは、収益化の新たな可能性となりそうです。このようなeスポーツファンとゲームファンを繋ぐコラボレーションは今後増加していきそうですね。
2. Verasity(eスポーツファイトクラブ)
ブロックチェーン機能を開発するVerasityは独自の暗号資産であるVRAを発行しており、Eスポーツファイトクラブを運営しています。このVerasityが運営するサイトがEスポーツファイトクラブです。このサイトでは主にNFTを提供し、ポスター、バッジ、武器、MODの購入や、eスポーツトーナメントのハイライトシーンをまとめたショートビデオなどを閲覧が可能です。
これらのすべてはVerasity独自の特許取得済みのプルーフオブビュー(閲覧証明)プロトコルに基づいて構築され、世界中の動画マネタイズからフラウド(再生回数を不正に水増しする行為)を厳しく取り締まることができます。この閲覧証明システムにもブロックチェーン技術が使われているのです。
なぜ動画の再生回数を取り締まることが重要なのでしょうか。推定によると、オンライン広告費の50%以上が、実際には視聴者が閲覧していない動画に対して支払われているようです。と言うのも、動画の再生回数を恣意的に操作することが現状では可能であり、そのような違反行為を行う人々が一定数存在するのです。再生回数が水増し操作されると、広告主は実際には見られていない広告に金額を支払わなければなりません。
Verasityの目標は動画コンテンツそのものの質の底上げです。動画の視聴者は再生回数を動画の良さの基準として捉えているため、再生回数が多い動画を優先して視聴するでしょう。このシステム下であればより質の高いコンテンツに視聴者は出会いやすくなります。
100万回再生に達する動画を投稿しても(これは現実的にはかなり難しいとされています。)、1回の再生で得られるのはたったの0.01ドルであり、合計で1万ドルにしかならないとされています。動画クリエイターにとって、再生回数の不正が行われないことは非常に重要です。Verasityのサービスは、質の高い動画コンテンツが正当に評価され、クリエイターが正当な報酬を受けることができるようになる未来を作るきっかけになりそうです。
3. DApp(eSportStars)
DAppの「eSportStars」はeスポーツのプロプレイヤーとファンを繋ぐプラットフォームです。ユーザーは「eSportStars」を通じて多くのゲームトーナメントに参加が可能です。アマチュアや素人のプレイヤーが高いスキルを持つプロプレイヤーとゲームで対戦したり、コーチングを受けたりして、自らのスキルや戦略を向上させることができます。ゲームに特化し、同じ趣味を持った人々が競い合えるユーザーインターフェースを提供するプラットフォームがシェアリングエコノミーの中心になることが今後期待されています。
また、アマチュアゲーマーにとっては、その技術を認識してもらい、有名になるチャンスにもなるとされています。さらに、eSportStarsがタレント契約を結び、大手プラットフォームに莫大な手数料を取られることなく、コンテンツクリエーターたちが自ら生計を立てられるようにすることを視野に入れているようです。
インフルエンサーは、eSportStarsが発行するイーサリアムベースのネイティブトークン「タイムコイントークン」で支払いを受けることが可能です。この暗号通貨は、eSportStarsを含めたネットワーク上に構築されたすべてのDAppで製品やサービスの支払手段として機能するため、これを利用すればユーザーが対戦チケットを購入することでトップユーチューバーと直接対戦することができると言う画期的なシステムです。
このDAppのアルファ版はすでに1万人のユーザーを獲得。31ヶ国に及ぶ多くの言語に対応し、さらに1000種類のゲームが世界中から登録される計画だそうです。
#3 なぜブロックチェーンとeスポーツの相性は良いのか
ブロックチェーンとeスポーツが相性が良い理由は、eスポーツが現在抱えている問題点とブロックチェーンの特性を考慮すれば理解することができます。まずはeスポーツの抱える問題点について簡単に分析していきます。
eスポーツが抱える問題点
・ゲームコンテンツそのものへの信頼。
ゲームコンテンツ自体に不正を行うものです。可能性としては低いものの、プレイヤーにとっては潜在的に存在するリスクとなっています。現実世界でのスポーツにおけるドーピングが違反であるように、eスポーツでもまたそのような違反が無いか精査される必要がありそうです。
・データ管理のセキュリティ
eスポーツでは取扱に注意が必要なユーザー情報が大量に存在します。しかしそれらを管理するプロバイダーが従来の中央集権型のプロバイダーであれば、今後情報流出の危険性が高まることが予測されます。
・ゲームコンテンツ間の連携や継続性
eスポーツは従来のスポーツと比べて圧倒的に競技の数が多いことが特徴の一つとして挙げられます。しかしそれぞれのプロバイダーを跨いでゲーム間を行き来することは現状では難しい状態です。
・金銭関係の処理
eスポーツ内では、トーナメントへの選手登録、ゲーム内でのアイテム購入など、プレイヤー間での資金交換が常に行われています。しかし従来の中央集権型のプロバイダーでは情報の管理や支払いのスピードに問題が発生しやすいとされています。
ではブロックチェーンを導入することでどのような変化が起こるのでしょうか。
1.ブロックチェーン基盤の身元証明
eスポーツでは様々なタイトルが存在するため、ユーザーは自分のゲームデータを様々なゲームタイトルを跨いでスムーズに活用することができません。
ブロックチェーン基盤の身元証明では、ネットワークを跨いで利用できるペルソナを作成してブロックチェーンに保存します。ブロックチェーンに保存された単一の身元証明があるので、ゲーマーは自由に好きなゲームを行き来できます。ブロックチェーンは、プレイヤー1人のゲームプレイ情報を記録するので、プレイヤーは自分のすべてのゲームプレイデータに自由にアクセスできます。
この機能はプレイヤーだけではなく、ゲームを開発する企業やeスポーツ企業側にもメリットがあります。あらゆるコンテンツを跨いで一つのデータのみでゲームをプレイできれば、企業側も現在よりも遥かにターゲットマーケティングの効率を向上させることができるでしょう。
2.トーナメントプレイ
現在のところeスポーツトーナメントで競技できるのは、リーグやチームに所属するプレイヤーのみです。現状のシステムでは、eスポーツイベントには大手スポンサーが賞金を事前に提供するため、支払いの公平性について問題はありません。しかし、将来的にはプロだけではなく幅広い層のプレイヤーが賞金のある大会に参加できる未来が来るかもしれません。
例えばより小さなトーナメントがあらゆるレベルのプロやカジュアルゲーマーにも賞金を公平に提供できるとしたら、どうなるでしょうか。これらのトーナメントでは、支払いが結果に基づいて正しく行われるかを保証できるように、データ管理の強化が求められます。
この点においても、ブロックチェーンが活躍するでしょう。ブロックチェーンのシステムを利用すれば、賞金はゲームプレイに応じて自動的に支給することができます。設定されたパラメータとインプットに基づいて独自の賞金付のトーナメントを誰でも主催できるため、顧客により幅広いトーナメントへの参加する道が開けます。
3.ブックメーカーなどの「ギャンブル系サービスが活発化」
eスポーツのブロックチェーンプラットフォームでは、仮想通貨で”賭け”を行うことができるサービス(ブックメーカー)が提供されているケースがあります。もちろんギャンブル関連のサービスは国によって規制が異なり、このようなサービスが行えない国や地域も多々あります。日本はこのような賭博が行えない代表的な国では無いでしょうか。しかしこのような賭博サービスはeスポーツの中でも人気のコンテンツの一つです。
このようなプラットフォーム上で行われる賭けでも、支払いにスマートコントラクトの技術を採用することができるため、支払いプロセスを簡素化して安心して賭けを行うことができます。
また、仮想通貨を利用通貨として採用しているブックメーカーであれば、複数の国の人々が気軽に賭けに参加することができるため、今後はeスポーツ関連のサービスでも仮想通貨を用いたギャンブル系のサービスが増加することになると予想されます。
4.NFTや暗号通貨発行による、ファンとの交流の増加
従来のスポーツとeスポーツの大きな違いの一つが投げ銭機能です。ファンはeスポーツプレイヤーに対してリアルタイムで投げ銭という形で支援を行うことができます。特に近年ではeスポーツ企業側が独自の暗号通貨を発行し、その通貨を利用した投げ銭という事例が増えてきています。
これらはファントークンと呼ばれ、ファントークンは「チームの入場曲を決定する」などといった重要な決定を行う際のファン投票などに使用することができるようになっているなど、多様な利用方法が存在します。
また先ほどの事例で挙げたようにNFTを発行し、ファンに配布販売することも可能です。このようなブロックチェーンを利用した独自の方法でファンとの新しい交流を生み出すeスポーツ企業は今後増加していくでしょう。
今回のリサーチではeスポーツ✖️ブロックチェーンの様々な事例を紹介しました。ブロックチェーン技術は、急拡大するeスポーツ市場に存在する様々な問題を解決したり、よりeスポーツ自体を魅力的なコンテンツにすることが可能です。今後のeスポーツとブロックチェーンの関係についても注目です。
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参考サイト一覧
グローバルeスポーツDAppがDeFiとNFTを本格的に展開
遊んで稼ぐを実現するNFTロールプレイゲームGuild of the GuardiansがNRG Esportsと提携。