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クリエイターエコノミーの躍進とクリエイターの新しい武器

2021.11.12

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ANOBAKAの松永です。

先月、The Informationのクリエイターエコノミーサミットが開催されました。

クリエイターエコノミー領域の代表的なユニコーンである、JellysmackやPatreon、Pinterest(Exit済)の経営陣が登壇し、今後のクリエイターエコノミーへの期待が膨らむ面白いコンテンツが並びました。
NFTの盛り上がりと平行するようにクリエイターエコノミーへの注目度は増すばかりです。

「クリエイター」と聞くと美術家や映画監督、音楽家といった伝統的な職業を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、今ではYouTuberやインスタグラマーなどデジタル上でのコンテンツクリエイターが第一想起されることも増えてきたのではないでしょうか。

インターネットが登場して以来、様々なサービスの民主化・個人のエンパワーメントが進んできましたが、多分に漏れずクリエイターも一部の専門職という枠組みから、「すべての人」がクリエイターとなるチャンスを得た時代となったといえます。

クリエイターエコノミーの可能性

今年Twitterが、投げ銭機能「Tips」機能を開始したり、YouTubeが新しい収益化機能「Super Thanks」を導入するなど、大手プラットフォームもクリエイターの収益手段の多角化のために、必死に機能追加を行っています。

SNSの巨人たちを動かすクリエイターエコノミーとは、いったいどのくらいのマーケットになっているのでしょうか。

SignalFire
http://signalfire.com/blog/creator-economy/

SignalFire社によると、全世界で約5,000万人のクリエイターが存在しているそうです。
アマチュアの個人クリエイターは約4,670万人で、インスタグラマーが過半数超えの約3,000万人存在しています。
一方でプロフェッショナルの個人クリエイターは約200万人で、半分はYouTuberです。

また今年のインフルエンサー・マーケティング全体の市場規模は138億ドルに達すると言われています。なお、周辺市場を含めればクリエイターエコノミーは、1,042億ドルの規模に達すると考えられているます。

類似領域で、ギグ・エコノミーは2023年までに1~4.5兆ドルの将来価値があると推定されていますが、同様に、クリエイターエコノミーも数年後には数兆ドルに達すると試算されてます。

VC投資も非常に盛んで、The Informationの情報によると、クリエイター関連の約101のスタートアップが10月中旬までに既に37億ドル以上を調達しており、2021年のうちに50億ドルを調達するだろうという予測が立てられています。

複数のユニコーンの登場

The Infoemation
https://www.theinformation.com/articles/the-next-creator-economy-unicorns?rc=urrwrm

先月時点で、日本でも今年はじめに爆発的人気を博したClubhouseをはじめ、既に7社を超えるユニコーンが確認されています。

この7社についてもビジネスのジャンルが多様です。

KajabiMasterClassは、クリエイターや著名人がオンライン講座を運営することができるサービスです。オフラインでは決して出会えないような、自分が好きな「有名人」や「憧れのプロフェッショナル」から限定講座を受けることができるのは、ファンや専門性を高めたい人からすると素晴らしい体験でしょう。

Cameoはセレブ(俳優やスポーツ選手、コメディアン、タレントなど)に短尺動画を頼めるサービスです。結婚式や誕生日、なにかのお祝いの際に、大好きな有名人からの動画を頼める・プレゼントできるものです。

Patreonは、クリエイターが自身のファンやパトロンから定期的にもしくは作品ごとに寄付を募ることを可能にするプラットフォームです。クラウドファンディングの新しい形に近いかもしれません。

Impactは、コンテンツが誰に、どこで、どのように使用されていて、どんな関連性があるかを追跡するための新しいパートナーシップ管理プラットフォームを構築しています。

そして、今をときめくNFTマーケットプラットフォームの最大手のOpenSea
クリエイターエコノミーと相性が良く、クリエイターがNFTの作成、出品をすることが可能です。

多くのユニコーンは「クリエイターにどう稼いでもらうか」ということに注目しており、クリエイターエコノミーの主役は、プラットフォーム(企業)からクリエイター(個人)に変化したといってもいいでしょう。

そう、まさに個人が主役の時代が訪れつつあるのです。

クリエイターの課題と取り組み

日本でも2021年にBASE、note、UUUMなど7社が「クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進する」をミッションにクリエイターエコノミー協会を設立しました。

クリエイターエコノミー協会のアンケートによると、クリエイターが抱える課題として、

「創作活動への支援」「トラブルについての対応策」「法律やお金についての知識」に関する項目に意見が集まったそうです。


Q. ご自身が活動をおこなう過程で「困った、あるいは、必要性を感じたことがあること」をお選びください。(複数回答可)

BASE、note、UUUMなど7社でクリエイターエコノミー協会を設立 〜クリエイターが活動しやすい環境を整え、日本が誇る産業へ〜
https://www.uuum.co.jp/csr/20210708

「創作活動への支援」については、様々な大企業や自治体がプロジェクトを発表しています。

文化庁では、国内クリエイター創作支援プログラムを実施しており、
・レベルアップサポート
・発信サポート
・クリエイターとの交流
・制作サポート(上限500万円)
の支援を行っています。

また大企業も、Netflixが日本でアニメーターの育成事業を行ったり、ソニーが次世代クリエイターのアイデアを育てるプログラム「Sony Creators Gate」を行うなど、次なるクリエイターを産み出し育てようという動きがあります。

「トラブルについての対応策」については厚生労働省でも検討が進んでおり、委託事業として「フリーランス・トラブル110番」を設置するなど、支援策は広がりつつあります。

しかし、現時点では上記2つの課題に関しては、行政主導・大企業主導であり、今後クリエイターのかゆい所に手が届くような魅力的な民間サービスの登場が待たれます。

クリエイターのファイナンスの強い味方

一方で「法律やお金についての知識」の課題(特にお金)に焦点をあてたサービスは既に立ち上がりつつあります。今回は、2社ご紹介したいと思います。

◆クリエイター特化コーポレートカード「Karat Financial」

企業名:Karat Financial
HP: https://www.trykarat.com/
設立年:2019年
創業者: Eric Wei, Will Kim
本拠地: ロサンゼルス
累計資金調達額: 4,560万ドル ※シリーズA

クリエイターやインフルエンサー向けにカスタマイズされたクレジットカードを提供し、ビジネスの成長と管理を可能にするサービスです。

クリエイターやインフルエンサーは伝統的な、金融機関や信用調査機関からするとどうしても与信がつきづらくなります。

これは、銀行が予測できない月収やさまざまなものを含む可能性のあるクリエイターのビジネスモデルを常に理解しているとは限らないためです。

そこで、新しい手法として、該当クリエイターの成功とオーディエンスエンゲージメントの分析を行い、他の銀行が行っていない独自の査定方法を行うことで、クリエイターへの資金提供を可能にしました。

◆超高速支払い「Willa」

企業名: Willa
HP: https://www.willapay.com/#gs.ei0mch
設立年: 2019年
創業者:Aron Levin, Kristofer Sommestad, Peter Blom, Stefan Pettersson
本拠地: ロサンゼルス
累計資金調達額: 2,100万ドル ※シリーズA

Willaは、クリエイターが仕事の対価を期限内に受け取ることができるように支援する金融テクノロジー企業です。
Spotifyのグロースチームを中心としたメンバーで創業されました。

創業者のKristofer Sommestadは、長年クリエイター・フリーランスと仕事をしてきた中で、多くのクリエイターが報酬を得るのに苦労していることに気づき、それを解決するためにWillaを創設しました。実際に、フリーランサーの2人に1人が支払い遅延に苦しんでいるといいます。

具体的なビジネスモデルは、BNPLに近いかもしれません。
Willaアプリは、クリエイター・フリーランサーに即時(30秒で)支払いを行い、法人(クライアント)には30日、60日、90日で支払うオプションを提供し、Willaは取引ごとに2.9%の手数料を取るモデルです。

2021年春にWillaアプリがApp Storeのトップフリーチャートに急浮上し、VenmoやPayPalなどのアプリを超える約15万人以上の米国のフリーランサーが順番待ちリストに追加されたことからも、フリーランサーのニーズの強さが伺えます。

クリエイターエコノミーの成長につれて「クリエイターを儲けさせる手段を提供する」スタートアップから、今後は「クリエイターの抱える課題」にフォーカスをあてたスタートアップが登場してくるのではないでしょうか。

<参考>
How Creator Economy Investments Could Hit $5 Billion This Year
Creator Earnings Report Breakdown, Where Are We In The Creator Economy?
SignalFire’s Creator Economy Market Map
クリエイターエコノミー協会
Willa App Helps Freelancers Get Paid

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