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宇宙開発の主役はスタートアップへと移ったか

2021.12.28

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ANOBAKAの松永です。

今月、元ZOZOの前澤友作氏の宇宙旅行が大きく報道されました。
祝福の声、冷めたコメント、様々な見方がありますが、多くの人にとって「宇宙旅行」が「人生の選択肢」として存在することを認識する機会になったことでしょう。(もちろん今はとてつもなくお金がかかりますが)

今や宇宙への旅路は公共事業から、民間事業者の一ビジネスとして広がりつつあります。

それは鉄道事業が公的事業からはじまり、徐々に民営が中心になっていた流れを思い起こします。

きっとこれから数年〜数十年かけて宇宙旅行の大衆化は進んでいくのでしょう。

今回は宇宙航路の開拓の歴史を見ていきたいと思います。

◆宇宙開発の歴史 (誕生〜米ソ冷戦)

1903年、ロシアの物理学者であるコンスタンチン・ツィオルコフスキーがロケット理論をまとめた論文『反作用利用装置による宇宙探検』を発表。
これがロケット開発の基礎となりました。

その後、世界ではじめて宇宙空間に手を伸ばしたのはドイツでした。
第二次世界大戦の真っ只中、1942年ナチス・ドイツがヴェルナー・フォン・ブラウンに依頼し開発したA4(V2ロケット)が、世界初の弾道ミサイルとして大気圏外に到達しました。

ドイツのロケット技術は当時最先端であり、第二次世界大戦後アメリカとソ連に人材・施設・研究資料等が接収されました。

A4(V2ロケット)の開発者である、フォン・ブラウンもアメリカに渡り、アメリカのほぼ総てのロケットの生みの親となります。

渡米したドイツ人工学者達。最前列右から7番目のポケットに手を入れている人物がフォン・ブラウン博士。フォート・ブリスにて。wikipedia

そして、冷戦期に入りアメリカとソ連の国家威信をかけた宇宙開発戦争が始まります。

1957年、ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げを成功させました。スプートニク1号の成功に焦るアメリカでは、翌1958年にNASA(National Aeronautics and Space Administration)を設立。

続いて行われた有人宇宙飛行計画の競争においてもソ連が先手をとります。「地球は青かった」という名言を残したユーリー・ガガーリンが1961年に世界初の有人飛行を達成。翌年アメリカも有人宇宙飛行を実現しました。
※ちなみに前澤友作氏が搭乗したのは、この頃にロシアで開発されたソユーズ宇宙船のシリーズになります。

そしてご存知の通り、雪辱を期すアメリカのアポロ計画により1969年にネル・アームストロングが人類初の月面着陸を果たしました。

その後、米ソ冷戦の緩和もありアメリカとソ連が共同でアポロ・ソユーズテスト計画を1975年に実施することで、米ソの宇宙開発競争は終わりを告げたといえます。

◆宇宙開発の歴史 (スペースシャトル計画)

その後、人類の宇宙開発の主役はスペースシャトル計画に移ります。

wikipedia

ロケットは繰り返し使用することは想定して設計されていなかったことから、再利用型の有人宇宙連絡船としてスペースシャトルは開発されました。

テスト用の初号機「エンタープライズ」と実用機としての「コロンビア」「チャレンジャー」「ディスカバリー」「エンデバー」「アトランティス」の合計6機が建造されました。

1981年、「コロンビア」がスペースシャトルとしてはじめて打ち上げに成功。スペースシャトルの時代が幕を開けました。

それから2011年の30年の間に135回の飛行を行いました。

しかし、その間には1986年にはチャレンジャーが打ち上げ直後に爆発する事故があり、また2003年にはコロンビアが帰還時に大気圏内で空中分解するなど、大きな事故もありました。

もともと通常のロケットよりも一回あたりの飛行コストを抑えられる見込みだったものの、実際の運用で発生した事故の安全対策などで保守運用費用が増大した結果、通常ロケットよりもコストが高くなりました。

最終的には、スペースシャトル135回の打ち上げで2090億ドルのコストがかかったといいます。

機体の老朽化による保守費用の増大や、安全性の懸念、また2008年のリーマン・ショック後の財政赤字なども重なり、2011年が最後のスペースシャトルの打ち上げとなりました。

◆ビッグテックの創業者たちの挑戦・アルテミス計画の始動

NASAがスペースシャトル計画を終えた後、宇宙開発の主役は民間事業者に移りつつあります。

スペースシャトル計画は、その過大な開発・運用コストが大きなネックとなっていました。いつの時代・いつの事業も公営から民間に主役を移すことで大きなコスト削減と発展に繋がってきましたが、宇宙開発も例外ではありません。

NASAは、民間の宇宙開発企業へその事業の移管をはじめました。
おそらくスペースシャトル計画の終了後、多くの宇宙開発関連人材が民間に流れたことでしょう。

2019年に、NASA主導の元「アポロ計画」以来となる有人月面探査「アルテミス計画」が発表され、競争にさらに拍車がかかりました。
(アルテミスはギリシア神話に登場する月の女神で、アポロ計画の由来となった太陽神アポロンとは双子とされています。)

これは、米国の民間宇宙飛行会社、欧州宇宙機関 (ESA) 、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) 、カナダ宇宙庁 (CSA) 、オーストラリア宇宙庁(英語版) (ASA) などの国際的パートナーによって実施される予定です。将来的な有人火星探査を目標として、各国・各プレイヤー同士のパートナーシップ強化も期待されています。

このアルテミス計画で重要な要素の一つに月面着陸宇宙船の開発があります。今回名乗りを上げた3社を記載したいと思います。

◆SpaceX

企業名: Space Exploration Technologies Corporation (通称:SpaceX)
HP: https://www.spacex.com/
設立年: 2002年
創業者:Elon Musk
本拠地: グレーターロスアンジェルスエリア、ウェストコースト
累計資金調達額:7.4Bドル
事業目標:地球外の惑星(火星)への人類移住

イーロン・マスクが創業した宇宙開発スタートアップです。
2012年にスペースシャトルの後継機となる有人宇宙船開発でNASAと契約。
2011年のスペースシャトル以降はじめて有人宇宙飛行に成功しました。

また打ち上げロケットの回収技術も実現しました。

https://www.youtube.com/watch?v=sX1Y2JMK6g8

SpaceXの強みは、そのコスト削減能力です。
NASAが人工衛星1基あたり2億ドル要していたのに対し、SpaceXは1回の打ち上げの価格が6,000万ドルと言われています。そして、再使用ロケットの耐久性が証明できれば、さらなるコストダウンが可能となります。

また2021年には宇宙船クルードラゴンにて「民間人のみ」での3日間の「宇宙旅行」に成功しました。

◆Blue Origin

企業名:Blue Origin
HP: https://www.blueorigin.com/
設立年: 2000年
創業者:Elon Musk
本拠地:Kent, Washington,
累計資金調達額:$167.4百万ドル
事業目標:安価な商業宇宙旅行の実現、他の惑星への人類移住

ジェフ・ベゾスが創業した宇宙開発企業。
2021年にはジェフ・ベゾスを含む民間人4名を乗せた同社宇宙船New Shepardが11分程度の短時間の宇宙体験に成功しました。

Blue Originの強みは、ロケットの再利用技術です。
2015年11月に打ち上げロケットの一段目のロケットの回収に成功し、2016年1月には、同じロケットを使って再度の打ち上げに成功しました。
これは、SpaceXに先んじて実現させています。

しかしイーロン・マスクからは、BrueOriginのロケットは宇宙との境目であるカーマライン(海抜高度100キロメートル)の低層宇宙にツーリストを目的とした往復であり、衛星の打ち上げが可能な大型実用ロケットではないため、技術難易度も違うという指摘もありました。

また、BrueOrigin独自の商用宇宙ステーションを2025年〜2030年に開発する計画を発表しています。

◆Dynetics

企業名:Dynetics
HP: https://www.dynetics.com/
設立年: 1974年
創業者:Herschel Matheny, Steve Gilbert
本拠地:Huntsville, Alabama,

上記2社と違い、宇宙開発スタートアップというよりも、国家安全保障、衛星、打ち上げ、自動車、サイバーセキュリティ、重要インフラなどを幅広くカバーする老舗企業です。米国の軍事周りの開発などの実績があります。

上記3社がNASAの月面有人着陸システム事業に採択されましたが、最終的にはスペースXが契約を勝ち取りました。

しかし、ジェフ・ベゾスのブルー・オリジンがNASAに対して訴訟を起こすなどスタートアップ同士の争いも起こり、その影響でアルテミス計画にも数ヶ月の遅延が発生しています。

多少の混乱はあるものの、人類が再び月面に立つ日は近づいて来ています。
その担い手は、国家機関から新興企業へ移りつつあり、さらなる人類の才能が結集されることでしょう。

地球上では、物理的なフロンティアは失われつつあります。
今世紀のフロンティアである宇宙開発の先鞭をつけるのは、やはりスタートアップの仕事になることでしょう。

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