はじめまして!ANOBAKAでポートフォリオマネージャーをしている、原と申します。
今年立ち上げた新しい起業家支援プログラム「ANOケア(アノケア)」について記事にしてみました。
事業の成長と切り離せない起業家のメンタルケア。これに特化した新しいセルフケアプログラムの立ち上げ話をご紹介します。
なぜ立ち上げたのか?
ANOBAKAは独立系シード特化VCとして10年目になり、投資先社数は200社をゆうに越える規模になってきました。シリアルでもない限り、経営経験もない中で、億単位の資金調達をし、人を採用して組織を作り、プロダクトを作り、圧倒的な数字を出しながらひたすらに事業を大きくするスタートアップ生活は、ハードシングスの連続でしかないです。加えて、プライベートの生活もある訳で。
上手くバランスを取りながら、いかに10年規模の長距離マラソンを走り続けるのか。
これは起業家にとって切実なテーマです。実は、私自身も2020年にスタートアップを創業した身なので、起業家が直面するアレやこれは痛いほどわかります。ANOBAKAとしても、起業家のメンタルケアは無視できないなと思っていました。
これまでも、体調を崩して事業が停滞するケースも数件はあったのですが、改めて「シード期から起業家を支援するANOBAKAとして何ができるか考えよう」と発足したというのが事の経緯です。
起業家のリアル
発足し、まず行ったのは海外事例のリサーチと投資先企業へのアンケート実施。アンケート回答者の約80%が精神的・メンタル的に厳しい時期があったと回答し、特に資金調達期と事業進捗が芳しくない時に、その傾向が強いことがわかりました。このあたりは想像しやすいところですね。
同時に、メンタルの懸念を感じた時に、外部のサポートを利用した人は20%程度で、80%は外部のサポートを受けずに過ごしていたこともわかりました。

ただ、外部のサポートを受けた起業家の7割は楽になったと回答していました。

こだわりポイント
こうして外部専門家と起業家を接続する仕組みを作っていく方向性になったのですが、個人的に最も重視したのは、「起業家のプライバシーを徹底して守る、安心安全な環境を作る」という点です。
「自分がメンタル弱っていると担当キャピタリストに伝わったら、応援してくれなくなるのではないか」
「精神的にきていると知られると、追加投資の検討で落ちるのでは・・・」
このような懸念が出るとプログラムが形骸化するのは目に見えていたし、VC側としても、
「xxさんから追加出資依頼されているけど、メンタル状況が気になるから検討難しいな・・」
というパターンになると起業家支援に繋がらないとも思っていました。
ANOBAKAは、
・起業家自身が自分で良い専門家を探す手間を省く
・金銭的援助をする
・長い起業家生活でのセルフケアとして、メンタルケアの重要性をメッセージングしていく
・きっかけを提供する
というサポートはしっかりするが、誰が、いつ、どのような内容の相談をしたか、その後どうなったか、というカウンセリングの内容には一切関与しない、をANOケアの重要なポリシーとしました。

起業家がしんどくなった時に、ANOケアを利用して、安心安全な環境で専門家のプロフェッショナルサポートを受ける。そして、元気を取り戻して、事業をグロースしていく。このサイクルが定着すれば、起業家支援になりますし、結果ファンドのパフォーマンスも上がっていくはずです。

起業家へのアンケートの中では、「精神的なつらさも含めて分かって起業しているんだから甘えだ」というような意見もありましたし、「(メンタルの大変さ)含めてコントロールできる人じゃないとダメだよね」という点もあり、これは本当にその通り。
でも同時に、メンタルケアは科学できる部分もあり、合理的なもの。あるなら使わない手はない!とも思っています。
今年始めたこの「ANOケア」。実際のところ、利用者さんもあり、運営側としてはサポートになっているのであれば嬉しい限りです。これからも起業家の声を聞きながら、ANOケアをより良い形に育てていけたらと思います。
最後に
私はプライベートで大変だった時期を信頼できる先生とのカウンセリングで乗り越えた経験があり、自分の脳内の混乱は科学である程度は解消できるんだ、とある種のライフハックを得たんですね。起業して、事業停止・従業員解雇・清算というプロセスを踏みながら、妊娠・出産・育児のプライベート生活をなんとか成り立たせられたのも、2ヶ月に一度の定期的な専門家のカウンセリングを受けていたお陰は大きいと思っています。
つらいな、しんどいな、この感じはちょっとまずいなと思っている起業家さんがいたら、ぜひANOケアを使ってみてください。
代わりのいない自分のセルフケアとして、ANOケアがいざという時のサポートになれば嬉しいです!