先日発表しましたが、ANOBAKAはGenerative AIの特化ファンドを組成しました。
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実はこの動きは2月上旬から進めていました。コンセプト作り、戦略策定、資料作成、既存のファンドの投資家へのご説明、実際の組成準備、ファンド組成に必要な適格機関投資家探しetc この2ヶ月は相当バタバタ大変でしたが、今回はスピード感が大事でもあったのでなんとかこのタイミングでリリースにまでいけたのはよかったです。
Generative AIはインターネットビジネスの転換期となりえるビッグウェイブです。ビジネスチャンスとしてはインターネットの誕生、スマホのデビューと比類するビジネスチャンスの到来だと捉えています。
よくChatGPTが業務に使えるかも、使えないかもみたいな話題がニュースが出てますが、これは極めて表層的なトピックスです。いままさにAI版ムーアの法則が起こっている時代認識を持つべきだと思います。
ChatGPTを核として、GoogleのBard、AmazonのTitan、MetaAIのLLaMA等々のテックジャイアン系からAnthoropicやイーロン・マスクのTruthGPTなど独立系、百度やアリババなど中国系など様々なプレイヤーが参入し、LLMの競争激化が起こってます。実際に昨年末にでたChatGPT3.5のバージョンでは当初1800億程度のパラメータ数であったものが、ChatGPT4になると500倍の100兆と言われてます。たった半年でその進化が進行しています。
この加速度的な競争は昔の検索エンジン戦争やブラウザ戦争を彷彿とさせるもので、各プレイヤーがAIプラットフォームの勝者となることの莫大なメリットに気づき先行投資している状況と言えます。ただ、過去の戦争と違うのは検索エンジンやブラウザ、SNSと違いこのAIプラットフォーム戦争はそこまでWinner Takes Allの構造ではない気がします。3-5年後のAIプラットフォームが今のChatGPTが核のままなのかは誰にもわかりません。ただ少なくとも予見できることは3-5年後の世界で利用されているLLMは今のChatGPTがおもちゃに感じられるほど進化をしていて、そのプレイヤーが複数いるということです。
我々はその数年後のLLMの進化を前提に今の、そして将来のビジネスを考えなければならないです。
このAI戦争の本質はまさにまさに宗教革命と同じだと思っています。
中世ヨーロッパで富の独占をしていたカトリック教会。そのカトリックのビジネスモデルの核が免罪符というものでした。しかし、免罪符を購入すれば救われるなんていうことは聖書のどこにも書かれていませんでした。当時ラテン語で書かれた難解な聖書は一般市民にとって理解不能なものであり、カトリック教会はある意味で知の独占をしていたのです。この情報の非対称性が免罪符ビジネスの本質でした。
そこででてきたのがルターによる宗教革命です。グーテンベルク活版印刷術という当時最新テクノロジーを活用し、簡易なドイツ語で聖書を民主化しました。これにより免罪符ビジネスが破綻。まさにテクノロジーによって情報の非対称性が失われ、既存ビジネスが崩壊するという歴史です。
AI戦争も同じことが言えると思います。米国のとあるリサーチでは年収の高い職種の方がLLMで仕事が失われる可能性が高いという論文発表がありました。これは非常にロジカルな話です。現在年収の高いホワイトカラーの仕事は知の独占による情報の非対称性に依存したビジネスもでるのものが多いので、AIがこの高度専門知識を民主化することによって、カトリック教会と同じようなことが起こってしまうのです。
前置きが長くなってしまいましたが、今回のファンドを組成するまでして動いた理由は個人的には主に下記3つくらいあります。
産業インパクト
上記で解説したようなAIプラットフォームを核として生まれる波及効果のインパクトの大きさが桁違いであるということ。全方位的にB2BでもB2Cでもあらゆるビジネスがこの影響を受けるというこのインパクトのデカさが最も大きな理由。
Generative AI領域の既存投資先の成長
ANOBAKAの既存投資先である音楽のGenerative AIサービスを展開していたSOUNDRAWの成長が著しかった。昨年のBdash Campでも優勝した同社は、その後も順調に成長し日本のスタートアップであるにもかかわず売上の大半は海外からになっていて、グローバルで認められ始めていました。このSOUNDRAWの力強い成長でそもそもGenerative AI領域に対してのポテンシャルをさらに確信した。
日本独自の課題感
Generative AIは日本が抱える構造的課題に対するソリューションです。日本の構造的課題である、”人口減少”と”生産性の低さ”は解決がなかなか難しいものでありますが、Generative AIはこの2つの課題に対するよいソリューションになると感じた。
上記のような材料を核として今年に入ってから色々思案してきた結果、一刻も早く動く必要があると感じ、2月から具体的に動いてきました。その時点ではまったくの五里霧中なチャレンジなのでリスクもあることは承知ですが、個人的なこの新たな取組にワクワクしています。
このファンドではGenerative AIネイティブな起業家にのみ創業投資していき、その投資先の皆さんと最新モデルセットやLLMの研究のコミュニティを創っていきたいと思います。
少しでもこの領域での起業を目指す方がいればお気軽にご連絡ください。
我々の世代はビットバレーを中心としたインターネット第一世代を少し羨ましく思っています。インターネットの誕生でいろんなビジネスモデルが思いついたあの世代の起業家は起業のアイデアがありふれていて羨ましいと同世代の友人とよく話しました。その次にスマホビジネスの黎明期の起業家も同じようなことが言えると思います。既存のインターネットビジネスをスマホに置き換えることで様々なチャンスがありました。
後世の起業家はいま2023年に起業するチャンスがある人は羨ましいと思うはずです。
AIプラットフォームにより既存のホワイトカラーのビジネスがAIに置き換わるという大きなパラダイムシフトが起きるこの瞬間に起業できることはチャンスしかないです。
今後の世界はAIに置き換わる仕事とそのAIを創る仕事とデジタルに関係ないアナログな仕事の3つに大別されていくでしょう。2023年の今この瞬間にAIでビジネスを創っていくチャンスがあるならぜひ動いてほしいです。
最後に、3号のファンドがまだ動いている中で唐突にこの話をしたにも関わらず、同意、応援頂いたファンド投資家の皆様。ほんとにありがとうございました。うちのファンドは投資家が30社ほどいるのですが、1社づつご説明する中でほんとに目を輝かせてこのGenerative AIのビジネスの可能性について熱いディスカッションになったことが何度かありました。そういった皆様との前向きなディスカッションはほんと楽しかったです。その中でも特にCARTAさんはすぐに可能性を感じファンド立ち上げ時のアンカーLPとして動いて頂きました。感謝しかありません。CARTA Generative AI Labと今後ファンドで連携してくのとても楽しみです。
最後まで読んでくれてありがとうございます。Generative AIという新領域でチャレンジする起業家の皆様お待ちしてます!