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No Product Financeープロダクト無しで資金調達に成功したスタートアップに迫る!

2021.9.13

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この記事は、7月15日に行われた『No Product Financeープロダクト無しで資金調達に成功したスタートアップに迫る!』のイベントレポートとなっております。

登壇者は、株式会社DIRIGIO 本多 祐樹氏、株式会社AGE technologies 塩原 優太氏、株式会社ウィファブリック 福屋 剛氏、ANOBAKA 萩谷聡です。プロダクト無しで資金調達に成功したスタートアップ3社の代表をお迎えし、初めての資金調達を検討している起業家の皆様に向けて、”本当に知りたかった”成功事例を語って頂きました。

登壇者紹介

(1)3500店舗が利用するRestaurant DX platform「PICKS」DIRIGIO代表 本多氏

(2)相続手続DXプラットフォーム「そうぞくドットコム」AGE technologies代表 塩原氏

(3)お得に買って、地球を守る。サスティナブル アウトレットモール「スマセル」ウィファブリック代表 福屋氏

1.サービスリリースまでの道のり

萩谷:シードの検証段階から調達まで、みなさん色々あったと思います。サービスリリースまでのエピソードを教えてください。

福屋さん:結論から言うと、僕らは検証を見誤ったんです。BtoBの在庫を処分したい企業と特価商品のバイヤーをマッチングする事業で、それがオフラインで成立するかを検証しました。結果、オフラインでは数千万円規模のやりとりが成立したのですが、オンラインは全くでした。僕らのようなプラットフォームビジネスは、双方のユーザーにITリテラシーを求めることになるので、まずは使いこなせるかどうかを検証すべきでした。オフラインで出来るからと言って、完全オンライン化できるかというとそうではない。ここは見極めなきゃいけないところでした。

萩谷:1番予想と違ったところは?

福屋さん:大手リサイクル業者がバイヤーに発注する場合、未だにFAXが主流で、その習慣がなかなか変わらなかったこと。1年間検証しても変わらなかったので、一旦ストップして、ユーザーインターフェースを変えました。その後、オンラインで購入してくれたのが、「メルカリ」や「ラクマ」等に出展しているスモールビジネスのバイヤーさんだったんですよ!その人たち向けに、ロット等を変更していったら、わーっと一気に伸びていきました。

萩谷:オンラインで出してみたら、最初は意図していなかった買い手がいたんですね。

福屋さん:元々スマホで購入する体験をしている人じゃないと、そこに至らない。検証して分かったことでした。

萩谷:いま振り返って、こうしておけばよかった、という点はありますか?

福屋さん:知見ってなかなか最初に手に入らない。新しい領域であるからこそ投資家も面白いし、僕らも挑戦しがいがあると思っていました。やっているときはすごくアドレナリンが出ていて、新しい領域に行くんだって気持ちになるんですけど、早すぎる領域より半歩先の方が世の中は受け入れやすいし、ユーザーにもFitしやすい。 斬新すぎるアイデアだとユーザに受け入れられない場合があるので、地に足着けてプロダクトをローンチした方がよかったなと思いますね。

萩谷:当初ユーザーにヒアリングをした時のオンライン化の反応はどうでした?

福屋さん:「使います」と言ってくれるのですが、それは意思表示でしかなくて、実際に使うかは分からない。実際には買わなかったですね。

萩谷:お金を払うまでのニーズではなかったんですね。でも出してみたら、別の需要が見えてきて、Fitさせていったということですね。

本多さん:PICKSは、もともと実体験に基づいて始めたサービスなんです。学生時代にレストランでアルバイトをしていて、テイクアウトの注文のやりとりがめちゃくちゃオフラインだなと思っていました。店長が夜遅くまで作業する姿を毎日見ていたんです。飲食業界のデジタル化が遅れていることの”負”を目の当たりにして、テイクアウトから改善しようと思って始めました。肌で身をもって実感したっていうのが検証の最初なのかなと思います。その後、まずはバイト先の社長や副社長にお願いして、ご飯に連れて行ってもらって、色々ヒアリングして…いわゆる経営陣のニーズの確認をしてからプロトタイプを出しました。頑張って営業して、どうにか1社採用してくれるところを探しました。最初はそのお店のお客さんがちらほらと使ってくれたのですが、その継続率がよかったので、プロダクト自体のニーズはあるなと実感できました。あとは時間がかかってもいいので機能を追加して、ブラッシュアップしていくという流れで進めてきました。

萩谷:今は当たり前の「テイクアウト、デリバリー」も、本多さんが始めた4年前はまだ浸透していなくて、飲食店にちゃんと刺さるか確認しながら進めていったんですね。実際に出してみて仮説と違ったところはありましたか?

本多さん:お店側に販促してもらうには、工夫が必要でした。当初は売上が上がるのだからバシバシ宣伝すればいいじゃんって思っていたのですが、意外とそうじゃなかった。現場は忙しいからそんなものはいいと。店長と経営者で、考えの方の違いがあったのかなと思っています。だから現場で販促をしてもらえない。価値を感じる人がいても、それがうまく広がらないのは予想外でした。

萩谷:クライアントの一部分だけ見ても仕方ないというか、経営者と現場の対比や、それをサービスに落とし込むならどうなのか、というところまで考えた方がよかったんですね。

塩原さん:僕は3年間会社をやっているんですが、最初の1年半で2回ピボットしました。1回目は「相続カルテ」という、いわゆる生前市場に向けたサービスで、いずれ訪れる自分や親の相続に備えて、Web上で診断しましょうというサービスでした。筋は悪くなかったと今でも思っていて、またいつかやりたいなって思っているんですが、当時はマーケティング手法が間違っていたなと思っています。自分が広告代理店出身ということもあり、広告を使ったマーケティングで単独で進めていたのですが、今「相続カルテ」をやるなら、確実に保険会社などと連携しながら進めると思います。最終的には、診断の結果を踏まえ相続対策としての保険商品などを販売する予定のサービスだったためです。資本提携を組みながらがっつり進めていくパワープレーができたらなと、今なら思います。

萩谷:ニーズがあっても、当時は売り方が分からなかったんですね。

塩原さん:2回目のピボットは、すべてをオンラインに置き換えようとし過ぎたためです。当時、e-Tax(国税電子申告・納税システム)にインスパイアを受けてe-相続というサービスをやっていたのですが、申込から利用開始、また申請書の作成まで全ての手続きがオンライン上で完結するというUI・UXで提供していました。当時から有料サービスで、一定のユーザーはいたのですが、あまり伸びなかった。そこで申込や資料請求など一部のフローをあえてアナログ化し、またコールセンターなども設置し、地道なUI・UXの検証を重ねた結果、サービスが徐々に伸びるようになりました。。事前検証というより、サービスを出してからユーザヒアリングと検証を続けて3年間やってきました。

萩谷:実際にリリースして、顧客と対話しながら、最適なオペレーションを作り上げていったということですね。

塩原さん:2年前アクセラレータープログラムに入っていたので、そこでリリース前のユーザーヒアリングなどもやりました。ただ目の前でデモを利用してもらうよりも、「出してから、実際にお金を出してくれるユーザーさんの動きを見る」方が、僕らのサービスの場合は合っていたなと思います。

萩谷:振り返ってみると、とりあえず出すというのがいいんですかね。

塩原さん:そうですね。ただ出したからには、マーケティングをきちんとやらないと分からないところもあります。びびって広告を少額だけ回すなど、中途半端な検証だと意味がないと思います。

萩谷:何人くらいのお客さんと対話したらいいと思いますか?

塩原さん:10人くらいに聞いたら分かるんじゃないですか。僕もアクセラレータープログラムの時に、シリアルアントレプレナーの人に同じ質問を聞いたことがあります。100人やる時間はないから10人くらいに聞いてやってみるといいと思います。

萩谷:ネットで広告を打って、ちゃんとお客さんを集めて検証することの大事さって本当にありますよね。最初はお金がないから、「広告費はまだでしょ」、「自分たちで集めるべきでしょ」ってなりがちですが、実際のお客さんを集めて対応しないと検証できないというところがありますね。

塩原さん:ものにもよるところはありますね。コミュニティ系のサービスなら、広告で集めてもっていう側面があると思いますし、サービスによって立ち上げ方は異なると思います。僕らの場合は、とにかく相続が発生した後のジャストのタイミングで知って貰わないとサービス利用に結びつかないので、検索広告を中心に検証をしました。

2.調達してから次回のファイナンスまでに大事なこと

塩原さん:僕は2つ意識しました。1つは、将来的な市場の大きさです。シリーズAは東証1部上場までの道のりを考えるとまだまだ序盤なので、そこまでの解像度を上げて、何をやっていくかの絵が描けているかが大事だと思います。2つ目は、実績です。特に僕らのマーケットは初見の人にその魅力が伝わりにくいことがあるので、数字で見せることが重要だと考えてこだわりました。

萩谷:シードでリリースして、小さな検証を重ねて、顧客が使ってくれることが分かるとシリーズAに進める、と思われがちですが、そうじゃないんですね。投資家には、マーケットがどれだけあって、この先どのくらいデカくなるかっていうのを実績で示す必要がありますね。

塩原さん:創業時期は、正直緻密な数値計画までは作っていなかったのですが、今回は力を入れて作りましたし、本当に解像度高く、これはいけるなと思わせることを意識しました。

本多さん:最近、ちょうどシリーズAの資金調達をしました。今は自分たちも、投資家に対しても、「戦略への納得感」があると思っています。これまでは「マーケットが大きくなるから気合いでシェアを取ります」と言って資金調達をしていたのですが、億単位になると、「マーケットが大きいのはわかるけれどなぜあなた達なんですか」という話になります。マーケットや文脈だけでなく、自分たちが納得する形で「自分たちはこういうプロダクトを持っていて、こういうマーケットに張っていて、こういうストーリーを信じています」ということを明確にすることが大事で、同じように投資家の人にも納得感を持ってもらえることが重要だと思います。

本多さん:あと、僕らはプロダクト数がめちゃくちゃ多いです。やろうとしていることは変わっていないけれど、プロダクトを作った後と、その前では、自分たちの解像度が違います。シードの時は、このサービスがどれだけ身近なものなのか、投資家の方にいまいち理解いただけていなかったなと思います。戦略に沿ったプロダクトを用意する、というのは大事だと思います。

萩谷:思い描いていた絵はシードでもシリーズAでも近しいけれど、シリーズAの時は顧客と相当向き合った後だから解像度が違うし、実際にプロダクトを使ってくれているお客さんもいるから、納得感が出てくるということですね。ただ、そこの信頼性だけでなく、大きくなっていくストーリーも大事になるんですね。

本多さん:自分たちでプレゼン資料を見てても、なぜそれをやるのかが腹落ちできるようになって、投資家の方ものめり込んで聞いてくれる設計になったので、そこは大事だと思います。自分たちでも腹落ちしているかどうかは重要だと思います。

萩谷:Picksはプロダクトの質がとても高くて、そこが相当良いですよね。BとCのエンドユーザーがどちらも使いやすいプロダクトに作り込まれています。ウィファブリックさんはどうですか?

福屋さん:一番重要だと感じたのは、「5秒以内にそのサービスを相手に伝えられるか」どうか。相手が投資家であれユーザーであれ、同じだと思っています。

福屋さん:5秒以内に説明できない物は広告でも刺さらないし、投資家にもユーザにも刺さらない。一言でなるほどねってすぐわかるサービスが広まっていくんですよ。僕らは、最初は「在庫の卸売仕入れサイト」と言っていたんですが、今は「オンラインのアウトレットモール」と言っています。広告でも1行で伝わるし、プレゼンでも1行で言えるようになってくるとプレゼン自体の精度が上がってきて、投資家向けとユーザ向けの資料がほぼイコールになってきました。最初は別々でやっていたけれど、だんだん無駄な資料がなくなってきてほぼイコールになってきています。

萩谷:最初は目の前のユーザに向き合って必死にやっていきますが、マーケットが見えてないですよね。自分たちが大きなマーケットのどこにいるか、気付く余裕もない感じです。実際に回していくと、自分たちの価値と、マーケットでの立ち位置が分かり出しますよね。

福屋さん:説明している時に、「もう一回ここ説明して」って言われたら負けなんですよね。分かりにくいサービスなんです。

萩谷:シードから意識した方がいいですか?

福屋さん:世の中にないサービスを作りたいから、最初は新しいサービスをすぐローンチしたいじゃないですか。ただ、一言で言い表せないものって誰にも理解してもらえないし、一回冷静に見てみるっていうのはやっておけばよかったと思いますね。

萩谷:確かに最初は新しいことをやっているから、わからないかもしれないけれど、実際顧客と向き合って実績が伸びてきたら、こういうことか、となりますよね。少し視点を変えて、

3.シードの時の自分に「これやっておけ」って言いたいこと、もしくはこうした方がよかったな、ということはありますか?

福屋さん:僕は、一時期、メンバーが仲違いになった時がありました。事業がうまく成長しない時は社内の雰囲気が悪くなるんです。そういう時に何が一番重要なのかというと、気の合う仲間と一緒に仕事する、ということ。採用時は、自分にないものがある人間がすごく魅力的に写る。でもそういう人って自分にない資質の人間なので、元々自分と友達になれるタイプの人間ではないんですよね。イコール、仕事しててもあまり合わないタイプなんですよ。そういう人を美化して採用すると、失敗するケースが多いと思います。ナチュラルにその人と気が合うか、というのは、採用する時に重要視してます。当時その考えが出来ていたら、問題が起きなかっただろうなと思います。

萩谷:ちなみに会社に合う人、といういうのはどこを見ているんですか。

福屋さん:話してて違和感がない人。どんどん会話が進む人で、気がついたら5分10分経っている、みたいな人が気が合う人だなと。話している時にちょっと引っかかるなとか、この人のこういう所ちょっと気になるなとか、30分の面接でひっかかる部分は、一緒に働いたらものすごい積み重なるので、そういうところは徹底的に潰しておいた方がいいと思います。

萩谷:カルチャーがしっかり合う、というのは大事ですよね。シードで伸びない時かなり辛いですもんね。そういう時に組織で揉め事があったらまた大変ですもんね。

福屋さん:合わない人とは、さらにすごい争いになりますね。

本多さん:もうちょっと広い目線で事業やろうよ、とは伝えてあげたいです。どうしても自分たちで信じているプロダクトだし、こういうやり方でやるんだって決めると、集中してしまうんですよね。本当はマーケットに向かっていて、課題を解決するためにプロダクトがあるのに、どうしてもプロダクトだけに目線がいってしまうんですよね。この視野を持つことができていたら、今のビジネスモデルに近づくまでの時間は1年短縮できたんじゃないかと思います。僕の特性上、プロダクト1つを磨き上げていくことに集中しがちなんですよね。

萩谷:一発目から相当磨き込んで作っていましたもんね。

本多さん:事業としてみた時に、ユーザ集めるためにどうするんだ、お店集めるためにどうするんだ、というところをもっと広い視野で見ることができたら、もっと早く行けたと思ってます。あとは、「人を雇うことにビビるな」って言いたいです。学生起業あるあるだと思うのですが、給料にビビっちゃうんですよ。バイトだと10万円もらえたら嬉しい、みたいな世界なので、人に出す給料が20万円でもびっくりしちゃうんです。会社が成長するためには人にレバレッジをかけないといけないので、「バーンレートを多少上げることをビビるな」ってすごく言いたいです。

萩谷:それはシードでお金がない時でもですか。

本多さん:それでも優秀なメンバーは絶対に雇うべきだと思います。それぞれに必要なポジションがありますし、お金はかかるけれど事業成長スピード自体が上がるので、結果的にもっと早いスピードでいいものが作れたかなと思います。本来それがスタートアップとしてあるべき姿だと思いますね。

萩谷:いい人が入ってくると、検証スピードも上がるし、全然見えていないところも見えてくるからね。AGE technologiesさんはどうですか?

塩原さん:とにかく採用です。創業メンバーは、エンジニア2名と司法書士の計4名でした。プロダクト作りも含めて、自分でできない範囲以外は、全部やると決めてやっていたのですが、やりすぎでした。バックオフィスもマーケも全部やりすぎだった。経営者としてはダメでした。少なくとも1年半前の時点で、いまの売上規模は想定できていたので、そこで採用を本格的に開始すべきでした。

萩谷:シードの時から、何でも社長がやる話は結構ありますよね。

塩原さん:立ち上がりも早められるし、少ない資金でも回せるので、最初はマルチプレイヤーでもいいと思ってます。マーケとデザインとプロダクトのディレクションを全部やっていたのですが、普通に人を採用していたら出来なかったので。ただシリーズAの1年前くらいになると、その先の売上などとかが見えるようになると思うので、見えるようになったら採用をやる。

萩谷:最初はどんどん自分でやって、バリエーションをあげていきながら採用していく、ということですね。

4.今起業しようとしているひとに本当に伝えたいこと

本多さん:あまり考えすぎないで頑張る、というのが大事だと思います。エンジェルの株主が何人かいるので、気をつけるべきことを聞いてたんですよね。ただ当時聞いていたことって当たった時に初めて気づくもので、阻止できるものではないと思います。実際に行動してみて壁に当たってみるのが大事だと思います。僕自身もそうですが、失敗を早くしていく。

萩谷:投資家や、いろんな方からのアドバイスの聞き方について、意識していることはありますか?

本多さん:その人が得意な領域はその人に聞く、ということをやってます。どれだけ有名な方・力のある方でも、僕らに関しては僕らが一番知っている、という自信を持ってやっています。参考にさせていただいた上で、意思決定は絶対に自分でやっていく。初期は、どうしてもエンジェル投資家に聞きすぎて、惑わされてしまう…若手起業家あるあるかなと思います。

萩谷:さらっと言われたことを、気にしすぎたらしょうがないですよね。本質はなんなのかっていうのをしっかりと自分で考える必要がありますね。

福屋さん:起業するか迷っている人、失敗したらどうしようとか、黒歴史として残るかもってイメージを持っている人がいたら、失敗しても死にはしないのでまずやってみてほしいですね。自分自身のやりたいことをやらないで死んでいくことの方がリスクだと思うので、とにかくやってみて失敗する。僕も商社で働いていて、約1000万円ためて起業したのですが、1000万円なんて1年できれいに無くなりました。枯渇して1日300円生活みたいになっていたのですが、死にはしないです。まずやってみて、とにかくチャレンジして、失敗したら軌道修正してやり直す、というだけなので、考えている方はすぐにやった方がいいと思います。

5.質問

シリーズAのファイナンスの時に、投資家に響く実績と、そうでもなかったものは?

本多さん:去年の今頃、事業がめっちゃ伸びていたのでとても自信を持って進めたのですが、その時ファイナンスできず1年くらい経って今に至ります。トラクションは意外と関係ないのかな。必要な要素ではあると思うのですが、その時投資家に言われたのは「マーケットが伸びてるから事業は伸びるでしょ、ただマーケットが伸びていく中であなたたちはどういうストーリーで勝っていくんですか」という話でした。その時自分の中で感じたのは、勝つためのより明確な戦略がないと何も出来ないんだな、ということですね。事業がよくても、これがないと会社潰れるなと実感しました。実績は一定数必要ですが、明確で解像度の高い戦略の仮説がより重要だと今年1年で感じています。

萩谷:マーケットがあるというのはコロナもあって示されていたから、その中で逆にどこが勝つのっていう戦いになっていますもんね。

本多さん:投資家としては、チームメンバーや今できているプロダクト、方向性などに目線がいくんですよね。意外と実績だけじゃないなと思いました。

萩谷:その時どうしておけばよかったと思いますか?

本多さん:マーケットが伸びるから大丈夫、という浅はかな考えではなく、このマーケットは伸びるけれどその分参入が増えるから競争になりますよね、ということを理解した上でやらないといけない。『Uber eats』が入ってきても正面から戦ってやるって、何百億でも調達してやるって気持ちだったのですが、冷静に考えたら何百億は無理。そこを理解した上で、じゃあどう戦うか考えて示していく、冷静に状況を見てコンセプトを考える。視野を広く持とうねってことです。

福屋さん:シリーズAの資金調達時は、意外とトラクションが伸びていなかった。サプライヤー側は大企業の商社など約100~200社が集まったのですが、ユーザー側のトラクションがそこまで伸びていなかったんですよね。そこが評価されなくて苦労しました。ただ検証フェーズで『メルカリ』のバイヤーが集まり出す兆しがあったので、「ここに広告を出せば伸びます」という話をしたら理解してくれました。少しの兆しをどれだけ拡張して、サービスを走らせながら、ここのマーケットはこれだけあってこれをやればどれだけ伸びてそれがどうなるか、を事実材料から出して、やりながら作っていくっていう感じですね。

萩谷:サプライヤー側はニーズがあって、バイヤー側は苦労したけれど兆しがあったんですよね。他のお客さんとは違う、数字の変化があったということですね。マッチングプラットフォームは、両サイドの獲得の仕方や両サイドのエコノミクスなど、しっかり説明していくことが重要ですよね。

塩原さん:基本的に全スライドで刺しにいってるので、刺さらなかった事はないですね。ただ今回事業会社から出資を受けたので、大企業で働いている方にとっては、僕らが30億と言っても「小さい」ってなるんですよね。結果的には、最初に示した数字より大幅に上げたのですが、でも今では実際それくらいいけると思っているし、目指しています。ただ最初は「そういえばこの人たち四半期で100億円とか稼いでる人たちなんだよな」っていうギャップはありましたね。

どの投資家から調達すべきか

塩原さん:難しいテーマですね(笑)ただフェーズによりますよね。シードとシリーズA、その後でも、結構変わると思います。投資担当者さんが何をやってきた人なのか、その人の好き嫌いなどもありますね。僕は以前スタートアップで働いていたので、前の会社のCEOに一通り聞きました。生々しい話は事前に聞いた上で、後は自分との相性ですね。

萩谷:詳しい人に聞いて、リファレンスなどで話した印象で決めていくってことですね

本多さん:色々な視点があると思うのですが、特にシードに関しては2つ軸があると思っています。1つは、その投資家に投資してもらったことが自分たちの自信になるのかどうか。あの人に投資してもらったから「俺、行けるっしょ」みたい気持ちがあるかどうかが大事だと思います。例えば、自分が尊敬してるエンジェルや、この人すごく優秀だなって思った人など。「こんな人に入ってもらえる」というモチベーションは重要ですね。2つ目は、会社が辛い時に投資してくれた人たちのために潰したらいけない、と思えるか。辛い方向でも頑張れるかどうか、というのはすごく大事だと思っています。

萩谷:それは、面談を積み重ねていきながら見極めていきますか?

本多さん:そうですね。僕は基本的に2回面談しています。1回目は投資の話というよりは相談会をするようにしていて、そこから成長を感じて欲しいし、ディスカッションができるかが大事だと思います。手伝ってもらいたいと思えるかどうか。

萩谷:確かに1回目の面談の時の話は何にも覚えてないですね(笑)事業の話をしていない気がする。カフェで軽く話した感じでしたね。

福屋さん:シードラウンドでどこの投資家を選ぶかというと、強いていうならANOBAKAです(笑)

萩谷:ありがとうございます!!じゃあこれで締めますか(笑)

福屋さん:実際色々な投資家さんと会って、最終的にANOBAKAさん、投資家でいうと長野さんにしてもらいました。ファーストインプレッションでここじゃないなと思ったら、基本やめているんですよ。実はファーストインプレッションで長野さんは出資の可能性ないかなって思っていたのですが、そのあとのフォローがすごかった。事業の進捗を本当にこまめに聞いてきて、「少し打ち合わせできませんか」って気遣いもとても伝わってきました。他の投資担当者と比べても、僕らへの理解がすごかった。僕の思いにもすごく共感してくれて、心底僕らのビジョンに惚れてくれてるなと感じとれる瞬間が何回もあって。こういう風に感じられる関係性をいかに作れるかどうかがすごく大事だなと思います。

萩谷:一方的な営業ではなく、一緒に価値を作っていけるか、という視点なんですかね。シードの後は長く続くので、そういう関係の方がお互いにいいですよね。

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(3)株式会社ウィファブリック

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最後までお読みいただきありがとうございました。NoProductFinanceでは、プロダクトなしで資金調達に成功した3社をご紹介いたしました。ANOBAKAではシードに特化し、プロダクトの無い状態からでも積極的に投資検討をしております。毎月第2水曜日に壁打ちイベントも行っておりますので、ご興味のある方は公式サイト[https://anobaka.jp/meetup/]からお申し込みいただければと思います。
これから起業しようとしている皆様の事業アイディアの壁打ちを是非お待ちしております。

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