アソシエイトの葛西です。
昨今、経営に必要な考え方がアップデートされているように感じます。
その中の1つに「デザイン経営」というものがあります。
今回は「デザイン経営」について、時代背景や「デザイン経営」について考えて見たいと思います。
まず、「デザイン経営」とはなんなのか?でいうと、特許庁のHPでは下記のように記されています。
デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。 その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。
特許庁の特許庁デザイン経営プロジェクトより
これまでの経営では「デザイン」が経営に組み込まれていることは少なく、サービスの表面的なUIなどで用いられることが多かったのですが、「デザイン経営」とは経営の意思決定のプロセスに「デザイン」を組み込むことだと考えています。
具体的にはベイジさんの資料が非常に分かりやすかったので参照させていただくと、下記の図の表層はサービスのUIのことを指しますが、戦略や要件のところの根元まで「デザイン」が関わることで、「デザイン」に一貫性が出てきて、ユーザーにとって「使いやすい」「分かりやすい」「愛される」サービスを提供できるというものです。
ではなぜ近年、「デザイン経営」が重要視されてきているのかについて考えていきます。
これまで企業の経営における競合の優位性は技術力で語れることが多く、技術力が高ければ高いほど、企業の力が強いとされてきました。
しかし、高い技術力があったとしても、その内容が分かりやすく伝わらないとユーザーに価値を最大限届けることが難しく、そこで「デザイン経営」によって、経営の意思決定から関わることで、ユーザーのことを経営の視点から「デザイン」の観点で考えることで、思想をしっかりと伝えることができ愛されるプロダクトや会社を作り上げれるからです。
また政府が発表した「デザイン経営」宣言でもデザインに投資をしている会社が4倍の利益をあげているとされています。
では、これからWebの歴史と、デザイン経営の各構造の具体例を見ていきましょう
1990年代のデザインの潮流
1991年に世界初のウェブサイトされましたが、URLを見るとテキストによって構成されています。
1993年に画像が表示できるグラフィカルユーザインタフェース (GUI) を備えたMosaicブラウザが登場し、爆発的な人気を得たため、HTMLに装飾的な要素が求められるようになりました。
そこで「W3C」と非営利団体が1996年に「CSS1」というCSS(Cascading StyleSheets)を開発しました。
しかし、ブラウザの主流であった、InternetExplorerやNetscapeはCSSへのサポートが備わっていなかったので、完全な普及とまではいきませんでした。
一方で同年の1996年にFLASHが登場し、2000年代にメインストリームとなります。HTMLやCSSでは表現できなかった表現をすることができ、デザインの表現の幅が大きく広がりました。
また1990年代のwebサイトにおけるデザインの立ち位置はまさに表層的なUIのみで用いられていることが分かります。
Web Design Museumというサイトに各企業の年毎のwebデザインを見ることができ、appleの1996年と2000年のwebデザインを見ると大きなデザインの変化があることが分かります。
2000年代のデザインの潮流
2000年代に入ると、ようやくCSSをサポートしたMozillaやOperaが登場し、CSSを取り入れたWebページが本格的に作成され始めます。
一方で1990年代から圧倒的なシェアなシェアがあったInternet ExplorerがCSSをサポートするようになったものの、サポートが不十分であったため、2000年代初頭は完全なCSSの普及には至りませんでした。
2006年に登場したInternet Explorerバージョン7からはCSSを十分にサポートされたため、CSSが一般的に使われるようになりました。
翌年の2007年にAppleが「iPhone」をアメリカで発売したことをキッカケにスマートフォンにおけるデザインの最適化が求められるようになっていき、よりデザインが重要な立ち位置を占めるようになります。
日本では、2004年に3G端末パケット定額制の登場し、通信量によるデザインの制限も緩和されていきました。
同年の2004年にミクシイがソーシャル・ネットワーキングサービスサイト「mixi」の運営を開始し、日本にソーシャルゲームブームが到来します。
2008年に日本でも「iPhone」が発売され、AppleがネイティブアプリのSDKを公開したタイミングで各社が続々とモバイルゲームに参入してきます。
ソーシャルゲームにおけるデザインの重要性が高まり、このあたりからベイジさんの図で言う骨格段階のインターフェースデザインや情報デザインとしてのデザインをどうするべきか?みたいな話が盛り上がってきたと思います。
2010年代(前半)のデザインの潮流
Appleの「iPhone」の登場によるスマホのアプリケーションが人気を博し、2010年代はソーシャルゲームが最盛期を迎えます。
2010年にコナミデジタルエンタテインメントの「ドラゴンコレクション」をスマートフォンでリリースし、爆発的なヒットとなりました。
また2011年にはCygamesの「進撃のバハムート」やバンダイナムコエンターテインメントの「アイドルマスター シンデレラガールズ」などのヒット作が続々と生まれました。
2012年にはガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」、2013年にはミクシィの「モンスターストライク」が大ヒットし、ソーシャルゲームが成長期を迎えると共に、デザインに関しては構造段階のインタラクションデザインや、情報アーキテクチャーの重要性が叫ばれるようになりました。
2010年代(後半)のデザインの潮流
2010年代の象徴はメインストリームはSNSだと思っていて、Instagramは2014年2月に日本語アカウントが開設され、日本の月間アクティブユーザー数は、2016年3月に1200万人を突破し、2019年末時点では3000万人を超える大ヒットサービスとなっています。
また2017年9月13日、ByteDanceは、米国の10代をターゲットにした人気のソーシャルメディアプラットフォームを所有するmusical.lyを買収と合併し、2018年にTikTokの本格的な世界展開を進めます。
InstagramやTiokTokは模倣アプリが各国で立ち上がる中、サービスを伸ばし続けています。
facebookはTiokTokと同じような動画のショート動画アプリ「Lasso」を米国でリリースしますが、思うような事業成長が見込めませんでした。
これはSNSの強みであるネットワーク効果がはたらいているとは思うものの、デザインが経営の設計のところから関与していることも大きな要因だと考えています。
ベイジさんの資料で言うところの戦略段階のユーザーの需要やサイトの目的からデザインを落とし込み、的確に表現することで、後発の競合企業が構造段階のインタラクションデザインや骨格段階のインターフェースのところを模倣しても芯がブレず、ユーザーのコア体験に置いて優位性を保ているのではないかと考えます。
つまりデザイン経営を取り入れ、戦略段階からデザインを取り組まなければ、後発の競合に構造段階のインタラクションデザインや骨格段階のインターフェースのところを模倣されて負けてしまうとも言えます。
TikTokを事例に考えるとTikTokはトレンドを作るために要件や構造段階を決め、その内容がブレないような開発・改善を行なっています。
競合企業が構造段階の若者にあったフリック操作の機能や動画が見やすいインターフェースをマネしても、戦略までをトレースすることができなければ埋もれていくのです。
個人的には日本は営業の力が強く、極端に言うとモノが良くなくても売れる状況を作ることができていましたが、このバランスを変えるべきだと思っています。
営業力の強さで売るのではなく、サービスの体験が良いから売れるみたいな【営業力=サービス体験】みたいなイコールの力関係でサービスが浸透していくことがベストだと考えます。
1990年代からのデザインの流れを考えると、今後は経営の設計からデザインが関わることが競合優位性になると思います。表面的なビジュアルデザインやインターフェースデザインだけでは勝てず、企業の思想をデザインに反映する必要があります。
デザインを経営に取り組むには?
政府が発表した「デザイン経営」宣言では以下の2つが必要条件だと説明しています。
① 経営チームにデザイン責任者がいること
② 事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
上段で説明したように設計からしっかりとデザインを反映させるには、経営メンバーにデザイナーがいることがマストです。
また具体的な取り組みに関しても明示していて、特に①~③を実現できるかが大きなポイントだと思います。
ANOBAKAではデザインの機会や知見に出会えるプラットフォーム「Cocoda」を運営するalmaに投資をしています。
今後、経営におけるデザインの重要性が高まってくる中、デザイナーを3万人以上抱え、デザイン事例の知見が溜まっている「Cocoda」は日本に必要不可欠なサービスです。
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