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テクノロジーの非連続性に向き合う

2021.4.8

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みなさんお疲れ様です。パートナーの萩谷です。週末に東京大学 FoundX 馬田さんの「未来を実装する」を読みました。「日本の社会実装に足りなかったのは、テクノロジーのイノベーションではなく、社会の変え方のイノベーション」という考えは非常にテクノロジーがリアルに染み込んでいる現在において共感する考えでした。また著書の中にある「イシューからインパクトへ」という考えも、今後大きな課題に取り組みためにも非常に重要な考え方だなと感じました。

この本の中で一例で電気というテクノロジーが浸透する上で、1980年頃に始まり、実際に蒸気機関の工場から電気中心の工場に転換していったのが1920年頃という話があります。人間がテクノロジーの価値を理解し、テクノロジーを実装する規制、支援体制を整え、新たなビジネスモデルと共にテクノロジーが実装されていく。こういった話の中で我々は新たな事業を生み出していく上で、テクノロジーの非線形な成長速度と受け入れる人間の速度のギャップを改めて考えないといけないと感じました。

http://thedoghousediaries.com/5989

テクノロジーは非線形で成長します。新たなテクノロジーが生まれるとこの技術を活かせないかと多くの方がチャレンジし、技術が恐ろしいスピードでアップデートされ、新たなビジネスモデルが生まれます。ブロックチェーンが誕生し、スマートコントラクト、STO、DApps、そしてNFTが生まれたように。このテクノロジー自体は以前の蒸気機関、電気などに比べて圧倒的速度で進化していっています。

対してテクノロジー進化の速度に人の意識がついていけなくなっている側面も感じます。もちろん最新の技術を教授しながら、生活を向上させている方も事業に活かしてる方も沢山います。しかし、ますます教授できていない人、企業も増え、二極化がさらに激しくなっている現状です。人間はあくまでも延長線上に技術を受け入れているように感じます。そういったギャップを埋めるためにも、最近のスタートアップでは副業人材を活用し地方中小企業のDXを進めるシューマツワーカーなどの企業の役割は非常に大きいと思います。またテクノロジーの進化が進んだからこそ、エントリーハードルが下がり、これまでテクノロジーの恩恵を得られにくかった企業へのSaaSの導入も進んでいます。(投資先では不動産仲介向けのオープンルームや学習教室向けのcomiru、受け取り請求書処理サービスsweeep等)

気をつけたいのはこういったギャップが起きてることを意識しないでテクノロジードリブンで事業を開始し、人の需要に追いつかないで、テクノロジーが下火になるケースも多く見られます。例えば2013年に突如バズワードのごとく「3Dプリンター」が登場しました。クリス・アンダーソンが「MAKERS:21世紀の産業革命が始まる」を書き記し、モノづくりブームの象徴として、3Dプリンターやドローン等が大きく注目されました。なぜブームが起きたかというと家庭用3Dプリンターの造形手法の主流でもある熱溶解積層法(FDM方式)の特許が2009年に切れ、それに合わせて、イギリスの研究者等を中心に3dプリンター開発のオープンソースプロジェクトが立ち上がったからです。しかし大量生産に向かない、設備投資が割りに合わないなどの多くの問題で3Dプリンターが社会に浸透することはありませんでした。(現在では徐々に利用が進んでいます)

こういった問題で事業を始める上で意識しなければいけないのが、本質的な足元のニーズを捉えられているのかということです。大きなビジョンを持ち理想を描きながらも、足元の強い課題に対して、ソリューションを提供する。テクノロジーの進化を見ながら、どう事業に活かしていけるのか。そういったバランス感覚が重要になります。あくまでテクノロジーは手段になります。

我々投資家は起業家に対して「なぜ今なのか」という質問をします。事業において、人間の思考の変化、外部環境の変化、市況の変化、規制の変化、デバイスの変化、テクノロジーの変化など多くの変化を捉えながら、なぜ今この事業をすべきかを考える必要があります。テクノロジーの進化速度と人間の受け入れる速度の差を意識すると一つ参考になるかもしれません。一方で最新のテクノロジーを活用して、トライアンドエラーをしながら、ユースケースを探りにいく姿勢も大きなイノベーションを起こす上で必要です。ユーザーの本質的なニーズに照らし合わせながらディスカッションし進められればと思います。

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