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【かっとばせ】スポーツ業界に旋風を巻き起こす売れるデジタルコンテンツ作りの極意とは?【ventusインタビュー】

2022.1.13

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皆様こんにちは!ANOBAKAの広報・森です。

とっても久しぶりに投資先へのインタビューを行いました。

今回お話を伺ったのは、デジタルトレカのORICALを運営する株式会社ventusの代表・梅澤さんです!ventusは、先日、総額2.75億円の資金調達を実施したばかりです。(おめでとうございます)

インタビュアーは、毎回頼もしい中くんです。今までヴェールに包まれていたventusについて根掘り葉掘り聞いてくれました!どうぞご覧ください。

共同創業者のようだがインタビュアーの中と梅澤さん

中:まずは、ventusの事業内容を教えてください。

梅澤:メインの事業としては、スポーツチームやアーティストのデジタルトレーディングカードをファンが集めてコレクションしていく、ORICALというサービスをやっています。ご一緒しているコンテンツとしては主に3つ、プロ野球の球団が2つと日本相撲協会です。ありがたいことに本当にたくさんのファンの方にカードコレクションをしていただいていて、各コンテンツの中で少しずつ根付いているなという実感があります。もちろんこのORICALという仕組みをたくさんのスポーツチームやコンテンツの皆様に広げていきたいのですが、デジタルコンテンツの制作だけではなくファンシステムの開発にまで拡張して、広くファンビジネス全体に取り組みたいと思っています。

中:梅澤さんがこの分野で起業しようと思ったきっかけはなんですか?

梅澤:実は、元々は起業するつもりは全然なかったんです。

小学生の頃からスポーツ業界で働くのが夢で、大学に入った後もスポーツ業界に入り込める機会はないかなとずっと思っていました。でも、新卒ではほぼ採用をしない業界で、スポーツチームなども中途採用ばかりで。それでもなんとか業界に触れる機会が欲しくて、大学一年生の時に求人サイトでスポーツベンチャーを調べて、一社出てきたスポーツベンチャーでインターンをしていました。そこで業界の課題がなんとなく分かってきて、同時にちょうど仲間とタイミングをうまく見つけることができて、色々な人に背中を押されながら今に至るという感じです。

小学生の頃から家のケーブルテレビでサッカーやWWE(プロレス)を観るのが好きでしたね。自分もずっとサッカーをやっていたし、スポーツ・エンタメって最高だなって気持ちは幼い頃から自然と持っていたと思います。例えばスタジアム全体が熱狂的な空気に包まれる、あの瞬間以上に心動く瞬間は無くて、自然といつかはスポーツとかエンタメの業界でビジネスをやりたいと思っていました。

自分たちが最初に会社を立ち上げた時は、いわゆる「ICO」ブームのさなかで、スポーツチームがICO的なことをしたら面白いな、というのが漠然とアイディアとして浮かびました。ただ、当時の主流では発行されるものが「トークン」で、それはファン目線で嬉しいか疑問だったんです。確かに値上がりはするんだろうけど、「トークン」って持っていてうれしいか?と。もしやるなら、「持っているだけ」「コレクションするだけ」でも嬉しいものを作らなきゃいけないなと思って、結果として今の事業に近い「トレカ」になりました。

その後も試行錯誤があったのですが、今では多くのファンの方にサービスを楽しんでいただけているので、それは本当に嬉しいですね。

中:今までステルスでやってきてこのタイミングで広報を出したというのは、どういう意図があったんでしょうか?

梅澤:しばらくの間事業に全てのリソースを集中していて、コーポレートサイトも全く更新せず手付かずだったのですが、流石に3億円くらい調達して何にもないのはやばいよ、とある方に言われたからです(笑)。

というのは冗談で、ここからスポーツ・エンタメの領域で広く事業を拡大していくにあたって、採用の強化が急務になり、会社のことを対外的に発信していく必要を強く感じたというのが主な理由です。

加えて、この業界が思った以上に盛り上がってきてしまったことも理由のひとつ。2つの方向で盛り上がっていて、1つはコロナ禍で新しい収益源や施策を生まなきゃということでDXの話などが出てきたこと。もう1つは、NFTやメタバースの流れです。特にスポーツはIT企業が多く参画するようになってきていて、大手の企業がJリーグクラブを傘下におさめたりしている。その中で、ventusもスポーツの最前線でしっかり事業をやってるよ!という存在感を出す必要があると思いました。

中:ventusさんについて僕が印象的だったのは、スポーツ業界はコロナ禍で試合ができなくて落ち込んでいるからビジネスをするのは難しいと多くの人に思われているけれど、実際には逆に参入機会になっているという点でしたね。

梅澤:2020年、ライブエンタメ全体で6,900億円の損失があった、とチケットぴあさんが発表しているんですけど、基本的には一時的な損失なんですよ。少しずつ入場制限なども解けて、いつかは観客も戻ってくる。実は本当の課題はそこではなくて、今までのファンシステムは入場や来場が前提みたいになっていて、例えば球場に足を運ばない「在宅」ファンなどをファンクラブの中でちゃんと評価できていなかった。コロナのおかげでそれに気がつくことができたんですよね。これまで見えなかった本質的な課題が可視化されたと。

また、コロナ禍がはじまった頃にブームのようにいろんなデジタル施策が報道されましたけど、一年以上経って見たらほとんど定着しなかった。もっと本質的にデジタル上の展開をどうにかしないと、と業界全体が思ったんじゃないかなと。例えば新しくファンクラブを作るにしてもちゃんと作り込まなきゃいけなくなって、そういう点は面白くなってきていると思います。

ユーザー側のニーズとしても、「自分がどんなコンテンツを応援しているか」をアピールするひとが増えていると感じます。例えば、インスタストーリーで友達が自分のSpotifyアカウントのスクショを載せたりしているのをよく見かけると思うんですけど、それは「この曲を聞いている」以上の主張がありますよね。「自分はこのアーティスト知ってるぜ、サポートしてるぜ」みたいな。スポーツも同じで、例えば巨人ファンとか阪神ファンとか、「ファンであること」が一つのアイデンティティになっている。サッカーも、各地域にJクラブができて、「地域性」みたいなものと紐づいて応援が生まれている。コンテンツへの応援の仕方が、ただの「エンタメ」を超えて、その人自身を反映するものとなってきていると感じるんですよね。そのアイデンティティみたいなものを、デジタル上でちゃんと証明できて、発信できるものを作りたいなと。

移転したての美しいオフィス

中:追い風になった部分もあったんですね。スポーツチームの収益構造もそれに際して変わってきているんですか?

梅澤:そこは実は大きく変わっていなくて、主なものはチケット/グッズ、ファンクラブ、スポンサーです。例外もあるのですが、多くの場合日本のスポーツはスポンサーが大きくて、半分〜3分の1以上スポンサーが占めているんですね。コロナ禍でも構造自体は変わらず、多くのチームはチケットの売上が減った分収益が減った感じになっていると思います。だからこそventusが新しい収益源を生み出すために、今の事業をやっています。

中:実際クライアントの温度感はどうなのでしょうか。NFTが最近かなり話題になっていると思いますけど、熱量はかなりあるんでしょうか?

梅澤:このコロナ禍を通して、デジタルコンテンツへの向き合い方や熱量は確実に変わったなという印象があります。一方で、新しい取り組みに対してはそのユースケースやリスクも含めて、慎重に考えられているなという印象です。

中:ventusさんのすごいところは、かなり初期から大きなコンテンツと提携していることですよね。

梅澤:それに関しては、ventusが作るプロダクトを評価していただけていることを純粋に嬉しく思います。僕たちはコンテンツを作り込むスタンスなので、結果が出るまで実は少し時間がかかったり、試行錯誤が必要な場面が多々あったりします。リソースを多く持つコンテンツホルダーの皆様と、そこも含めてトライできていることは本当にありがたいことです。いろいろ試しながら、うまくいったものをどんどん横に広げていく、という風に考えています。

ventusの3つのバリュー

中:梅澤さんと話していて印象的だったのが、「日本のスポーツ系スタートアップでまだ成功しているところはない、だからこそ自分たちがやっていく」と話していたことなんですが、実際ventusが頭ひとつ抜けていると思っています。これは、有名なスポーツコンテンツホルダーさんから組んで行く戦略がはまっているんでしょうか。

梅澤:前提として、僕らは有名なコンテンツとだけ組んでいくのではなく、あらゆるスポーツ・エンタメコンテンツとご一緒したいと思っています。

ただ一方で、ベンチャーだから有名コンテンツとは組めない、という思い込み・マインドセットは違うと思っています。僕らは全く特別なことはしていなくて…全力でプロダクトを作って、自分たちのプロダクトはこういうものです、こういうメリットを提供できます、将来的にはこうです、ということをご説明して、結果として多くのコンテンツとそのファンの方にサービスを楽しんでいただいている。本当に特別なことはしていないと思っています。

中:なるほど、飽くまで正攻法で進め続けた結果なんですね。つまりventusの強みは営業力の強さと業界への理解で、採用の基準もそこを満たしているかどうかになるのでしょうか?

梅澤:もちろん優秀な方は採用していきたいですが、「営業力」だけかというとそうではないと思っています。

クライアントの皆様からいただくお言葉として、「ventusはすごく細かく丁寧にやるよね」と言っていただくことが多くあります。やっていることは裏方のコンテンツ作りで、日頃の業務は本当に地味で、1日でユーザー数が何百倍になりました!みたいなことも一切ないのですが、うちの強みはプロダクトを徹底して作り込んでいける力だと思っています。コンテンツ作りや細かいやりとりも手を抜かずにやっています。

最初にプロダクトに興味を持ってもらうのは営業力の賜物だと思いますが、そこから継続してご一緒できている、いろいろなご相談をいただいているのはデザイン力や技術力によるものだと思います。売上の観点でも、少しずつですがコンテンツホルダーの皆様に貢献できつつあるなと感じています。

中:一個の収益源として立派に認められてきているんですね。

梅澤:そうだと嬉しいですね。

中:ventusは力強く成長していると思う一方、デジタルコンテンツが売れる理由が実はいまいち腹落ちしていなくて……どうして売れるんでしょうか?

梅澤:僕たちのケースに関して言えば、「プラットフォーム」ではなく、各コンテンツに合わせて販売・提供するラインナップを尖らせているのが大きいと思っています。例えば、「ファンにしかわからない選手同士の組み合わせ」とかに、どれだけ気付けるか。練習中の笑顔を捉えたオフショットカードとか、ファンからしたらたまらないんですよ!

中:この組み合わせかー!みたいな感じですか?

梅澤:そうです。他にも、販売のタイミングも大きいと思います。僕たちはできる限りファンの熱量が高いタイミング、本当に数時間以内に記念カードを売るようにしています。

最初は、デジタルカードなんて売れるの?と言われていて、僕たちも「欲しいものって何かな」って考えるところからのスタートで。例えば、スタジアムアナウンサーの方のボイスを新規に録り下ろしてカードに収録するとか、ここでは言い切れないのですが、本当にファンの方が欲しくてたまらないものになるように、いろいろな工夫をしています。

中:声まで入ってるんですね!ちなみに、よく聞かれると思うんですが、NFTについてはどのように考えていますか?

梅澤: NFTが今以上に浸透しても、僕らがやることは変わらないです。今はある種のブームもあってたくさんのNFTが買われていると思うんですけど、近い将来、例えばNFTが標準になった世界を考えたら、同じNFTの中でも結局質の良いコンテンツが売れる。僕らはそのコンテンツづくりを先にやっています。

僕らは今1コンテンツ(チーム)あたり年間2,000種類のカードを作っていて、現在3コンテンツあるので年間6,000種類のカードを作っているんですけど、そうしていると大体ファンの方々がどういうものが欲しいのかわかってくるんですよね。どういうカードが売れるのかはもちろんのこと、スピード感が大事なことや、どういう時間に売れるのか、どういう色やデザインが売れやすいのか、単価が高くて売上が上がっているのか、単価は低いけど買ってくださる方が多いのか……そういう細かなところがわかってくるから、溜まったデータをもとに、常に質をアップデートすることにこだわっています。

中:NFTが一般化したら、クォリティの高いコンテンツが売れるポジションにいるというのはいいですね。

梅澤:はい、僕らはそう考えています。もちろんNFT自体を軽視しているわけではなくて、どんなフォーマットであれ、ファンの皆様が欲しがるコンテンツ、本質は何も変わらないよねという。

中:ventusはしっかり地に足をつけて力強い成長を続けていて、それが評価されて今回の大型調達に繋がったと思いますが、今後はどういう方向性につなげていこうと思っていますか?

梅澤:大きく二つありまして、まず一つは今作っている電子トレカ事業を横展開する、つまり他のスポーツチームやスポーツ以外のコンテンツにも広げていくことです。

もう一つは、事業をより上流のファンシステム開発まで展開していくことです。ファンクラブシステムやファンポータルの部分、土台となる新しいシステムを作っていきたいですね。先ほども話した通り、新しい時代・ニーズにあったファンシステムがきっとあるはずなんです。僕らは、そこにチャレンジしていきたいです。コンテンツも作れるし、ファンポータル・システムも提供できる、ファンビジネスを一気通貫で提供できる会社になりたいと思っています。

結果として、一つでも多くのスポーツ・エンタメコンテンツのお役に立てて、一人でも多くのファンの方に楽しみを提供できる会社になれたら、とても嬉しいです。

弾ける笑顔の2人

以上、代表・梅澤さんへのインタビューでした!梅澤さん、ひいてはventusが誠実にコンテンツやファンの皆様に向き合っているスタンスが伝わりましたでしょうか?

さて、そんなventusですが、現在大採用中!一緒にスポーツ・エンタメ界で新しい体験を作り出す仲間を募集しています!!


https://ventus-inc.com/recruit

このインタビューを読んでご興味を持ってくださった方は詳細をご確認の上、ぜひぜひお話に行ってみてくださいね〜!

それではまた

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